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第226回 情報図書館学学習会記録


日時:平成27年7月17日(金)午後6時30分〜8時00分
参加者:8人
内容、発表者:
「国立国会図書館人事交流報告」藤原 直幸(京都府立総合資料館)
「京都府立総合資料館人事交流報告」小篠 景子(国立国会図書館関西館)

2013〜14年度に行われた京都府と国会図書館の人事交流の当事者に、それぞれの仕事内容や思いについて発表してもらった。

■「国立国会図書館人事交流報告」藤原 直幸(京都府立総合資料館)

自己紹介
・2003年京都府職員として採用後、京都府立総合資料館文献課に勤務。
・2013〜14年度に人事交流で国立国会図書館関西館に勤務。
・今年度からは元の文献課で目録を担当。

国会図書館の概要
・立法活動の補佐、資料の収集、図書館サービスの提供という役割がある。
・東京本館、国際子ども図書館、関西館の3館体制
・関西館の特徴的な資料群として洋雑誌、科学技術関係資料、博士論文、アジア関係資料がある。

人事交流について
・京都府は関西館の開館準備から職員を派遣。
・一方通行の派遣から、双方の職員が異動する人事交流になっている。
・今までは府立図書館との人事交流だったが資料館との人事交流は今回が初めてだった。

・人事交流については前年の夏ごろに打診があった。
・国会図書館に新規採用となるため、東京で4日間NDLの任務やサービスの概要などの研修を受けた。

担当業務
・文献提供課参考係でレファレンスと購入資料の選書、閲覧室と電話での相談窓口を担当。
・係内では科技藩として選書は科学技術分野を担当。
・科学分野は科学技術関係資料(国際的な学術会議の発表論文集、研究成果報告書、国内外の規格)の収集業務も担当している。
・自身が理系なので専門分野の知識は役に立ったが、苦手分野の英語資料については苦労した。
・科技藩では毎年開催されている科学技術情報研修の講師も担当した。この研修は今年度からレファレンス研修の一部に組み込まれている。
・看護師やコメディカルを対象としたガイダンスも行った。データベース(医中誌)を紹介することが多く、意外と使われていないことを実感した。
・医療系はテーマ別ミニガイダンスも参加者が多く、いつも満員に近い。

・半年後に科技藩の藩主(リーダー)になり、科技連(科学技術関係資料に関する連絡会議)への出席、統計作業等を行う。
・科技連は東京本館と科学技術資料の資料収集について連携を図るための会議。
・科学技術関係資料はNDLの収集の柱であり、関西館では海外発行資料を担当している。
・購入予算は減少傾向にあり、円安による雑誌の高騰も影響して、収集資料の選択が主要な話題に。
・担当していた期間では、雑誌の電子ジャーナルへの切り替えやテクニカルレポートの打ち切りなどを行った。
・その他には同様の資料を収集・提供しているJST(科学技術振興機構)との連携も話し合った。

・その他の仕事:利用者動向統計の作成、あり方検討委員会の委員
・利用者動向統計は前任者がアクセスで作成したものを再構築した。資料選択の根拠や開架資料の選定に活用した。
・あり方検討委員会は科技関係資料の収集について検討する委員となり、関西館所蔵の科技関係資料の利用動向や大口の遠隔複写依頼者の分析などを行った。

進化し続けるNDL
・現状維持ではなく常に新しいサービスを模索し実践している。
・発表者が勤務している間にあった変化:デジタル化資料の公共図書館への送信、装丁のコンテストで受賞したものを、カバーを取らずに保存する。
・今年度からは複写箇所特定のためのオンラインレファレンスを施行。東京本館では新聞についての問い合わせが増えたと聞いている。

・参考係に関する変化:閲覧室カウンターの一体化、係体制の変更
・閲覧室では総合案内とアジア資料カウンターを一体化。質問を一か所で受けることができるのは利点だが、担当者が1人ずつなので隣の人に相談できない事例も多い。
・係の体制が資料分野ごとの班から、選書関係と利用者サービス関係の2つの班に変更。
・サービス班はガイダンスや広報、閲覧室の蔵書構築などを担当し、選書班は資料の選書全般を担当
・利用者サービスの充実:DBミニ講座、ガイダンスから利用されやすい資料をつかみ、閲覧室の配置に反映させる
・他には隣にできたサントリーの研究所とも連携を話し合っていた。

関西館に勤務してみて
・異動が頻繁なため、マニュアルが整備されている。
・そのため1年でベテラン扱い。若手でも責任ある仕事を任される。
・直接会えない人とのやり取りをするため、メールでのやり取りが多い。
・メールは担当部署の情報共有としても機能しているので、毎日30〜40件届いていた。

・他の公共図書館にないような、商用データベースについて、使い方を習熟できた。
・京都に関する事については、資料館での知識が役立った。

働く環境について
・勤務時間は短期間の変更も可能で、実際私は早出勤務をしていた。
・会議の時間を勤務時間内にしてもらうなど、育児をしている人たちへの配慮を感じた。
・交流で得た事:サービスや業務がダイナミックに変わる実感。利用者対応のブラッシュアップができた。みんなを統率していく経験ができた。


■「京都府立総合資料館人事交流報告」小篠 景子(国立国会図書館関西館)

自己紹介
・2005年国会図書館に採用され、図書館協力課でのレファレンス協同データベース事業、総務課での会計業務、文献提供課で閲覧サービス業務を担当。
・2013〜14年度を京都府立総合資料館で勤務。今年度からは元の図書館協力課で図書館員のための研修事業を担当している。

人事交流について
・人事交流については以前から希望していたこともあり、打診された時点で行くことを表明したが、待遇や業務内容については直前まで知らされなかっ た。
・総合資料館には、「東寺百合文書」や、古典籍を扱う大阪府立中之島図書館と似ているのか、といったイメージがあった。

総合資料館の概要
・京都に関する専門図書館。
・1963年に博物館、文書館、図書館の3つの機能を備えた総合資料館として開館。
・1988年博物館機能の一部を京都文化博物館に移し、2001年図書の半分を京都府立図書館に移管し再開館。
・今回の人事交流中の2013年に開館50周年を迎えた。

担当業務
・庶務課、歴史資料課、文献課があるが、主に図書資料を扱って利用者サービスを行う文献課に配属された。

見たこと感じたこと
・所蔵資料が京都に関するということに特化していること。
・請求記号に付与された地理区分も独特。
・地域性のある資料は主に寄贈依頼によって収集している。灰色文献、刊行されていないオリジナルの資料には国会図書館に無いものもある。
・個人貸出サービスを行っていないため利用者登録も無い。
・和漢書の中でも、貴重書に選定される基準は慶長以前(1600年頃)につくられたもので、一般の図書館からすれば特異である。
・江戸期刊の資料も現代の図書の出納と同じ手続きで、当日閲覧が可能。

・カウンターでの出納業務にシステムが介在していないこと。関西館では端末を通して手続きする。
・同じ時間待つにしても、職員の動きが見える資料館の方が利用者の不安感が少ないように思う。
・カウンターが入口に近く、閲覧室の見渡せる範囲が広いため利用者に直接声をかけやすい。
・国会図書館では使っていないNDC分類は、けっこう使いやすいとブラウジングするときなどに感じた。

・地域に密着したコアな質問、例えば先祖調べでは電話帳等、一般の人であっても載っていることがあり、回答につながる。
・資料の著者が利用者がであることもあり、調べつくした後さらに資料を求めて来館される。
・逐次刊行物の受入では寄贈依頼して届いた資料の封開け、カード記入、配架まで一貫して担当。分業ではできない体験。
・寄贈ゆえ継続して受け入れることが保障されない。また好意で寄贈となると選定基準に外れた資料を断りづらいこともある。

・蔵書点検は実は初めて。全員で蔵書のバーコードをスキャンしていく作業は、肉体労働でもあり新鮮だった。

・見計らいは書店が図書館に持ってきた書籍の中から選書するのが一般的だが、資料館の場合は職員が書店に出向き棚を見て選書することをそう呼ぶ。
・自分はスマホで検索してすでに所蔵していないかを確認していたが、ベテランになると目視と記憶で選書する。

・企画展、府民講座:小学生から大人まで同時に受けられる寺子屋講座の取り組みは珍しいのでは。
・執筆:新聞、資料館だよりのコラム。資料紹介。

地域資料の奥深さ
・身内に向けた同人誌的なものも所蔵。
・自館資料でレファレンスできる喜び。
・利用者との距離の近さ。プライベートとパブリックの境界。
・利用者だけど著者であったり、講座の講師を依頼することもある。
・マスコミからの問い合わせが多いことも特徴。

職場の特徴
・管轄が教育委員会ではなく知事部局であること。
・10年以上選手のベテランが多数。
・暗黙知が多い。個人が蓄積した知識、ネットワークの豊かさ。人のつながりにより、デリケートなところを任せられる。
・直雇いの嘱託。関西館では分業で委託されているため、普段は会話することも少ない。
・歴史資料課の文書資料等も案内することがあるが、自分の課以外の仕事が見えにくい。
・府庁との関係 府庁の職員と交流した際に聞いてみたところ「特殊な部署」との反応もあり。
・京都府職員は約4000人の内、資料館約56人。4000人に対して仕事内容をアピールするのは難しい。
・選書から提供まで(また資料を入れる箱作りまで)の流れに全て関われたことはよかった。

・レファ協への事例登録や貸借、以前自分が担当していた部署のサービスを利用する立場になったことは、目線が変わって良かった。
・実際にレファレンスで利用し、リサーチナビが使えることを実感した。


<質疑応答及び意見交換>

・人事交流の特徴 それぞれの職場に戻っても、後々の繋がりが濃くなる。出向の場合自分だけの経験で終わってしまう可能性もある。
・働き盛りが一人抜けるプレッシャーもあるが、外の知見を活かせる制度。
・大学図書館と資料館の人事交流があってもいいのでは。
・2年という期間について 何が解らないのかわからない時間が1年くらいあった。2年目くらいで仕事をしている実感が持てる。
・最後の1年でやったことの成果を見ることができないという点で2年は短い。






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