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学習会記録(第217回)


日時:2014年6月20日(金) 18:30〜20:00
参加者:41名
内容:「NDL 図書館送信サービス やってみたらこうだった、を語る」 
発表者:江上 敏哲(国際日本文化研究センター図書館)

第179回Ku-librarians勉強会との合同開催。USTREAMで配信。

国際日本文化研究センター図書館(日文研)において導入した国立国会図書館(NDL)「図書館向けデジタル化資料送信サービス」についての発表。

「アイルランドに行ってきた!旅の思い出、を語る」
・NDLデジタルコレクションで公開されているアイルランド関係の資料を織り交ぜ、発表者が訪れた旅行先を紹介。
・50年程前の教材である絵地図、1972年に起きた事件について書かれた雑誌「現代の眼」、1930年代アイルランド民謡の日本で出版された楽譜。
・1930年代翻訳本「アラン島」、「20世紀英米文学ハンドブック」意外と多いアイルランド出身の文学者。 
・1990年代雑誌「海外の食品産業」 旅行で実感した肉中心の食生活の記事。
・ここまでの紹介でも、色んな本が読めるよということが実感できたのではないか。少し前の年代の図書が多いことも、当時を懐かしむことができ楽しめる。存外使える。

図書館送信サービスとは
・今回の参加者はNDLデジタルコレクション担当者を含む、図書館関係者、学生、教員等40名程。その中で導入済と申請中は合わせて2名(=2館)だけであった。

サービスの概要
・NDLがデジタル化し、館内のみで公開していた資料のうち一部が、全国の公共図書館・大学図書館他で閲覧・複写できるようになった。
・見られる資料は、未導入では「インターネット公開」約50万点だが、導入すれば「図書館送信資料」約130万点が加わり約180万点となる。
・図書館送信とは、ユーザーが最寄りの導入図書館に出向き、その館の端末で閲覧・複写のサービスを受ける仕組み。
・NDLデジタルコレクションのサイトではインターネット公開、図書館送信資料、国立国会図書館内限定の別に検索可能である。
・資料は図書、雑誌、博士論文等幅広い。NDLのHPで公開されている利用統計を見れば、利用可能資料が人文歴史系に偏っているわけではないことがわかる。
<参考>図書館向けデジタル化資料送信サービス利用統計
・導入しても利用されないのではという危惧は、このリストで印象が変わるはず。

ルール
・閲覧は職員の監視できる所に設置された決まった端末のみで、職員が毎回IDパスワードを入力して利用。利用者が自由に使えるわけではない。
・複写も職員が管理用端末で行う。複写できるのは著作権法の範囲で一人一部一部分。複写記録の作成も必要。
・データの保存・コピー、メモリ・PCの接続、画面キャプチャ・写真撮影は禁止。

参加館
・232館(2014年6月9日現在)京都府下では右京中央図書館のみ。
・納税者の立場で言うと、他の公共図書館も導入してほしい。

申請
・マニュアルではなく規則の全文の提出が必要。これは館長決裁の公的文書でなくてはならない。
・日文研では、すでにある規則を改定するのではなく規則を新たにつくった。文案をつくる当初から担当者と密に連絡を取り合った。
・10月から準備を始めたが、規則作成に1ヶ月程かかり、サービスを開始できたのは年明け1月末であった。
・NDLのHPでも申請方法について案内しているが、各図書館に沿った文言は書けないだろう。最初からNDLに相談するのが良いと思う。

日文研の利用統計
・平均して1ヶ月に約15人の利用。営業日でいうと2日に1回の利用。来館者数からみれば多い方だと感じている。これからも増えるだろう。
・利用者からデジタルコレクションを指定してくる事はほとんどない。図書館員の所蔵調査によるところが多い。
・複写箇所の特定のための閲覧がほとんどである。画面で読むのは目にもつらい。複写ありきのサービスか。
・閲覧用と複写用の端末は別であるため、利用者が記入した複写申請用紙を見て職員が印刷を行うことになる。
・資料が特定できる番号「永続的識別子」等、一般になじみの薄い単語がどれを指すのかが分かるよう、複写申請用紙に工夫をしている。
<参考>広島大学図書館の申請用紙

課題
・可視性の低さ。このサービスに利用者が自力で気づけるか。
・参加館の少なさ。他館利用者が日文研に来てしまう。→その館にも導入を促す。公共図書館で導入してもらいたい。
・広報の難しさ。デジタル資料なのに、図書館まで行かなければならない理由が分かってもらいにくい。
・「図書館送信サービス」もっとキャラの立った単語はないものか。
・○○はできない、○○は禁止といった禁止ばかりが目立つ。

ではどうすればいいか
・こういう学習会のような会をもっと催す。利用状況を共有する、ユーザー館の会。 
・導入館が未導入館を交えて経験談を話した方が広報になるのでは、とツイートしたところ今日の会に結びついた。


質疑応答(意見交換)

Q、複写利用料は?
A、日文研では、ILL同様に無料である。 複写取り寄せ等ILLにかかる費用は経費でまかない、内部の利用者からは取っていない。
(参加者より)京大では、館内のコピー機と同じモノクロ20円カラー60円。公費の場合は別扱い。

Q、印刷した場合の画質について。
A、印刷は職員が行う。読みづらいものについては、調整機能を使い印刷し直す。読みづらいものは、印刷サイズをA4からA3に拡大することもある。
NDLに複写依頼をしていた頃から画質は悪いものもあった。原因が原本やマイクロフィルムの劣化によることもある。

Q、なぜ厳しい規定になったのか?
A、(NDL担当者より)制度を決めるに当たり、出版者や著作権者等の関係者との協議会を設け意見交換を行っている。
出版者からは、デジタル画像の流出を危惧する意見が出ており、それに配慮している。
(発表者より)著作権が残っているものは複写は全頁できない。読めるだけでもありがたい。
図書館によっては初めから複写不可の規定にしているところもある。日文研では専用の端末を設置し、他のページは開けないようにしている。
(参加者より)法制化のときに、研究者からは公開を求める声が、出版者からは反対意見がパブリックコメントとして出されていた。

Q、閲覧用の端末は専用のものを新たに購入したのか。既存のものの流用もできるか。
A、既存の端末でもOKだが、画面は大きい方が望ましい。通常のデスクトップサイズでいいのではないか。ノート型では厳しい。

Q、閲覧資料の傾向は。
A、博士論文は今のところ利用は無い。戦前の人文系や戦後の雑誌が目立つが、大きな特徴はない。
(参加者より)京大では博士論文の複写申請に時間がかかるため、自館で所蔵していてもNDLで公開しているものを利用することもある。
図書については原本の傷み具合によっては、NDLの電子化された資料を利用する。ILLで取り寄せる代わりにこのサービスを使う。

Q、画質が悪ければ撮り直しもありか。また落丁や乱丁などに気が付いた場合、そういったフィードバックを受付しているか。
A、(NDL担当者より)デジタルコレクションのメールアドレスで受け付ける。よっぽどひどければ撮り直す場合もあると思う。

Q、デジタルコレクションを今後普及させるには。
A、CiNiiと機関リポジトリの連携が普及してきた例もある。
Googleでヒットできればいいのでは。→できる。ヒットした後に出てくる言葉をわかりやすいものにできないか。
府県立で導入すべきだと思う。 普及が途絶えないよう続けるべきだ。
京大ディスカバリーの横断検索では、NDLサーチにも遷移できる。ただし図書の目次情報は出ない。雑誌の目次はNDLサーチで検索し直すことになる。 

名称
・「図書館送信」という言葉が分かりづらい。
・「近くの図書館で見られます。」はどうか。近くの図書館が増えてほしい 
・今から名称変更は難しいが みんなで付けた愛称を広げるという方法もある。

Q、レファレンスでの利用状況は。
A、中を読み込むレファレンスは今のところできていない。
日文研では所蔵調査がほとんど。複写箇所を確認し複写依頼につなげる。このことから資料の中身が確認できるだけでも大きい。
(参加者より)インターネット公開版でもレファレンスに役立っている。導入すれば有効だと思う。

・(NDL担当者より)利用館からのフィードバックとして、5館くらいの図書館員から話を聞く機会を設けた。
・公立図書館からは、特定の利用者が閲覧を続ける例などが挙げられた。バッティングもある。
・(発表者より)日文研では、サービス開始当初は時間制限したほうがいいのではとの声も出たが、結局制限は設けないままで問題は出ていない。台数の確保も必要。

<参考>
egamiday3「NDL図書館送信サービス、やってみたらこうだった、を語る」の再録




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