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学習会記録(第214回)


日時:平成26年3月13日(木)
参加者:6名
内容:「ソーシャルメディアと図書館 : 双方向のコミュニケーションへ」
発表者:長坂 和茂(京都大学工学研究科 化学系図書室)

ソーシャルメディアを活用する際に図書館が気を付けることについて発表していただいた。

自己紹介
・勤務:京都大学工学研究科桂化学系図書室
・興味:三国志、ソーシャルメディア、図書館史、目録(RDA)、納本制度(国会図書館の漫画の納本状況を調査)
・個人では2009年よりTwitterを利用している。勉強会の公式Twitterを担当したこともある
・但し、業務でソーシャルメディアは(ほぼ)使っていない

今日のテーマ
・ソーシャルメディアのPR(パブリックリレーションズ)について
・ソーシャルメディアは双方向のコミュニケーションが特徴
・ただし、双方向にはリスクがあり、失敗すると炎上してしまい、組織全体の信用低下などを引き起こす

・なお、この発表は以前大学図書館研究会の全国大会で発表したものをもとにしている

事例1
・NHK広報局(@NHK_PR) の炎上例
発端となったつぶやき
・公的機関はもともと批判にさらされやすい組織
・この事例では「ユルさ」が元で炎上した

対策
・炎上を防ぐ方法の一つは双方向を捨てること(返信しない運用とする)
・もう一つは炎上に対する準備をしておく(ルール、運用ポリシー、ガイドラインの制定)

事例2
・警視庁犯罪抑止対策本部(@MPD_yokushi)
批判→休止→ポリシー策定→復活
・個人の責任とせずに組織として対応していく

国の指針について
・内閣官房他から「国・地方公共団体等公共機関における民間ソーシャルメディアを活用した情報発信についての指針(PDF)」が出ている
内容(対策・注意点)
・成りすまし等を防止する。Twitterでは認証アカウントを取得することがあげられる
・実際に認証アカウントを取っている図書館は少ない
・また、公式HPとアカウントを相互に掲載しておくのも推奨されている
・その他として、短縮URLを使用しないこと(元のアドレスがわからず、信用性が下がる)
・第三者の投稿の引用やページをリンクするのは賛成したと見られるので、なるべく避ける
・アカウント運用ポリシーを策定し、明示する
・特に情報発信用途に用いて、コミュニケ―ションをしない場合は、その旨を運用ポリシーに明示する

ここまでのまとめ
・炎上すると、自分だけでなく組織全体にも迷惑がかかる
・双方向のコミュニケーションを取りたいのなら、ポリシーが必要

ティーブレイク(過去の炎上事例)
立命館のゲーム資料炎上事件
・この背景には「炎上させると金銭的に得をする人の存在がある(例:2chまとめブログ)
明治大学明和図書館のブックツリー事件
・利用者がTwitterで発言した内容から炎上した事例
・Twitterをやっていなくても炎上する場合がある
他のアプリとの連携による被害
(参考URL:http://getnews.jp/archives/436958http://togetter.com/li/624272
・plays now というスパムアプリ。これは閲覧した動画を勝手にTweetする
・公式アカウントでこのような連携アプリを認証してしまうと拡散媒体になってしまう
・アプリとの連携で「Tweetする」、「プロフィールを更新する」と出てきたら特に注意する


ポリシーの例(大学図書館研究会の全国大会で発表していだいた@karatelibrarian さんの発表から引用しています)
・ポリシーに定められている事柄
・目的、掲載内容、フォロー方針、問い合わせ先、権利の帰属など
・残念な事例は「返事はしません」、「正確性、完全性、有用性を保証するものではありません」、ツイートごとに、上司の決裁が必要など
・良い事例:富山大学附属図書館ソーシャルメディア運用ポリシー
・「ソーシャルメディア利用にあたっての自覚と責任」として、傾聴の姿勢を明示している

まとめ
・まとめるつもりはないが、組織としてソーシャルメディアに対応するなら、ポリシーは必要になる
・炎上回避の手段として、返信しないというポリシーを掲げることはありだと思っている
・しかし、出来れば、ソーシャルメディアの特徴である、双方向性を活用した"PR"を行って欲しい

QA、意見交換

Q:公的機関が嫌われてしまうのはなぜか
A:一般の人からは、働かないでお金を儲けていると思われている。
 他人が儲けることが嫌いな人がネット上には大勢いて公的機関は批判されやすい。
参加者からの意見
・そのため、公共機関が何か利益を得ようとする行動・発言をすると、あっという間に炎上することになる。
・また、それを助長するまとめブログの存在がある。
・まとめブログの目的はみんなの興味を煽って閲覧数を増やし、収入を増やすこと。
・ただし収入源のアフィリエイトはそのリンク元(Amazon等)が自社のコンプライアンスに基づいて警告することができる。
・警告されると、収入がなくなるのでブログのサービス会社もこれらの行為を取り締まらないといけなくなる。

Q:発表者の所属している図書館のTwitterアカウントは作成するのか?
A:やってみたいが、ニュース系の発信だけになりそう。マーケティングをしっかりやってどの層に訴えるかを考えたほうが良い。
参加者からの意見
・結局事前にマーケティングをしっかり行ってどの人達に情報を伝えるのかを考えて使用して欲しい。

Q:LINEについて、活用してもいいのではないか。
A:LINEはもっと閉じた関係の間で使用している感じなので、図書館からの発信には使用しにくいと思う。

Q:図書館のアカウントは図書館員しかフォローしないことが多い。本来アプローチしたい人たちへのフォローを獲得できていない。どうやって突破するか?
A:いろいろあると思うが、そのうちの一つはゆるくつぶやく事だと思う。

Q:議員のTwitterについて
A:地方議員は予算がないため積極的に使っているが、国会議員はニュースなどの情報提供として使用している程度だと思う。
アメリカではロビイング2.0という動きもある。これはTwitter等を使用して議員と直接会話して、要望を伝える。
また、アメリカでは議員等の発言の裏付けを検証する風潮があり、ネットの発達によって検証しやすくなっている。
日本では日本報道検証機構(@Watchdog_Japan)という一般社団法人があり、常に誤報かどうか確認している。



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