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学習会記録(第210回)


日時:平成25年11月21日(木)
参加者:11名
内容:「京都府議会図書館について」
発表者:井本 敏子(京都府議会図書館)

(1)運営
・議会図書館とは地方自治法100条に基づいて、議会に必ず附置され、地方自治・行財政の図書、定期刊行物を収集し、議員の調査研究に役立てる機関。
・場所は京都府庁議会棟の中にある。府の職員でも利用したことが無い人は多い。参加者の中で行ったことのある人は少数であった。
・発表者は15年前に議会図書館に異動し、その後司書資格を取得。異動当初の議会図書館は館長、係長、係員の5人であったが、現在は調査課政策法務係の一員として職員1名、臨時職員1名で運営している。
・京都府は議員以外の人も利用可能で、貸出も可能(一般向けに貸出可能な議会図書館は現在17県にあり)。

(2)蔵書・統計等
・議会図書館全体の現状について
 職員数は平均3.5人(兼務者も含む)うち司書資格所持者は0.9人
 蔵書冊数は平均2万8千冊で図書購入費は124万である
・京都府は図書約5万6千冊、予算も平均より多く、15年前から300万円のまま変っていない。
・議会図書館の中で、蔵書数は全国1位、面積は6位とかなり充実している。

(3)整理
・図書・資料は日本十進分類法(NDC)により分類し、行政資料については行政部局別に整理を行っている。
・雑誌は受付と同時に雑誌架に配架して速やかに閲覧できるようにしている。また、地方自治関連等永年保存するものについては製本し書庫に保管している。

(4)利用について
・現在議員は57名(定数60名)いるが、一度でも利用した人は半分ぐらいで、利用は多くない状況である
・よく受ける質問は、視察に行く地域の情報についての質問。最新図書資料は少ないので、調査はNDL-OPACやCiNiiの記事検索から情報を得て、該当する雑誌のコピーを渡したりしている。最近だと、日米地域協定についての資料を求められた。
・府職員の方が議員より多く利用している。京都府公報の利用が多い。
・議会図書館では廃棄することはほとんどなく、送ってもらった発行物は確実に残ることから、自分の所属の古い発行物を見に来る職員もいる。
・府の職員には便利に使ってもらっているようだ。ただし認知度は低いようである。

(5)これまでの調査例
1.明治期の新聞が見たい。
目的は、「京都の盲唖院の開業式に雨が降って開始時刻が遅れた」との話があり、その証拠として探しているとのことであった。大阪日報に掲載されているそうだが、所蔵はしていない。そこで「京都府百年の年表」を調べると、その旨の記述があり証明できた。なお、「京都府百年の年表」の利用は多い。
2.昭和43年に成立した京都府の安全憲章の条文が見たい。
成立年がわかっていたので、該当年の府政だよりを確認し、記事と条文が載っていることが確認できた。

(6)目指す議会図書館とは
・執行部の資料だけではなく、執行部とは異なる見方、客観的な事実、データ。中立的な立場からの情報、調査・分析した資料を提供する。
・資料の収集、職員の調査能力の向上。→情報検索の基本を押さえる。
・本がなくても周りの図書館に応援してもらうことで情報を提供する。→他の図書館へのルートを確保する。

質疑応答、ディスカッション
Q:国会図書館では議員からいろんな調査を依頼されている。中には回答までのスピードを求められるなど、条件の厳しい要求もあると聞くが、京都府ではどうか。
A:元々利用が少ないためか、そのようなことはない。議会事務局の調査課に調査係というのがあり、ここに調査を依頼しているようだ。この係の調査は該当する執行部に聞くことも多いようである。
Q:利用を増やす試みはしているのか。
A:増やすための方策はあまりしていない。ただ、今年の4月から京都府の掲示板に図書館ニュースの掲載を始めた。
Q:利用者の所属によって利用方法に違いはあるのか。
A:議会中は議員以外の利用者は本の貸出しはできない。それ以外は全く同じである。
Q:今もカウンターに座っているのか。
A:昔は壁があって図書館が独立してたが、今は調査課政策法務係員として、図書館以外の仕事もしており、事務室にいて呼ばれるとカウンターに出ていく。
・同じ課の調査係の方が業務が似ていると思うが、なぜ政策法務係なのか。
・理由はわからない。
Q:他の図書館にレファレンスを依頼することはしていないのか。
A:したいと思っているが、なかなかできない。自ら資料を所蔵している図書館に行き、探すこともある。
Q:専門図書館協議会には参加しているのか。
A:もちろん参加している。協議会主催の研修にもできるだけ参加している。
Q:国会図書館では議員の要求に柔軟に対応しているが、議会図書館ではどうか。
A:議会図書館でも同じように柔軟に対応している。公共図書館ではFAX送信などに対応してもらえないが、実施してもらえるととても助かる。
・公共図書館では電話でのレファレンスを受け付けているので、気軽に聞いてほしい。
・(↑の提案に対しての返答)知り合いを頼ろうとすることはあるが、相手のシフトが気になって出来ない。
Q:本の管理について、蔵書管理システムは導入しているのか。
A:資料の管理はまだ、カード目録でしている。検索は内部システム(議会LAN)内では可能。ただし、導入したシステムは図書館向けのではなく、現在もメンテナンスをしているが、使いにくいシステムである。新しいシステムの導入検討はしている。
Q:利用の際には、登録カードを発行しているのか。
A:発行はしていない。閲覧は自由に。貸出は貸出票に記入してもらう。
Q:新聞はどの程度収集しているのか、新聞の利用の傾向はあるのか。
A:所蔵は全国紙6誌と政党新聞数誌。少ないため、利用傾向はわからない。
Q:300万の予算に定期刊行物の購入費用は含んでいるのか。
A:含んでいる。対象は年刊や白書が多い。
Q:学生が自習目的で利用し、困るという事はあるのか。
A:穴場なのか来る人はいる。特に困るということはない。
Q:選書はどのようにしているのか。
A:月一回選書会議があり、そこで決定している。ほとんどは官報販売所からの見計らいで購入している。その他継続で購入している図書も多いので購入は大量というわけではない。
Q:一般書は購入しているのか。
A:今はほとんど買っていない。議員はベストセラーを読むべきという話が挙がった事はあった。
Q:書庫の広さはどうか。
A:図書室の地下1F,2Fに置いているが、かなり満杯になってきている。
Q:議会図書館ニュースを発行しているといったが、他に発行している刊行物はあるのか。
A:月1回の議会図書館ニュースの他は年刊の概要だけである。
Q:議員さんの顔は覚えているのか。
A:もちろん覚えている。本会議での写真を撮るので早く覚えられる。
・写真を撮るのは図書館の仕事なのか。
・議会事務局としての業務である。
Q:調査課内の職員の利用はあるのか。
A:視察候補地の選定に雑誌記事を見る等の利用がある。
Q:知事、副知事の利用はあるかのか。
A:以前、副知事が利用されたことはある。通常は秘書が来館し、直接来られることはない。
Q:有料データベースはなにか契約しているのか。
A:G-Serchを契約している。
Q:専門図書館協会内の参加館同士の連携はあるのか。
A:職員が非正規になって会議、セミナーの参加も少なく、協議会から脱退しているところも多く、連携しにくい。
Q:専門図書館協議会の全国大会がある時、そのあと国会図書館での研修もあるが、有効であったのか。
A:有効だと思う。しかし旅費等費用も発生しているので毎年行くのは心苦しい。
・ほかの係員に参加して欲しいが、忙しくてなかなか難しい。
・内容については図書館員と事務局の職員のどちらをターゲットにしたらいいのか悩むことが多い(国会図書館職員)
・私(発表者)はどちらもやってもらったらいいと思う。
Q:館内に端末はあるのか。
A:利用者用端末はない。データベースなどは事務用PCを使って利用してもらっている。
Q:臨時職員との仕事の割り振りはどうなっているのか。
A:半日は新聞のスクラップをしてもらっている。来館者の対応等が中心。
Q:調査課では政策等の事前調査を行っているのか。
A:リクエストがあれば行う。
Q:書庫の拡張は考えているのか。
A:考えていない。今後は官報や国会議事録などどこでも見られる資料の購入を控えることも検討する予定。
Q:議員への図書館の説明はしているのか。
A:新しく当選した議員向けの説明で議会図書館の紹介がある。しかし、私ではなく上司が説明している。
Q:野党の利用は多いのか。
A:野党は多い。議員も会派職員も比較的よく利用される。
Q:議員向けのセミナー等は行っているのか。
A:そのような企画は会派でやることが多い。
Q:執行部への広報については考えているのか。
A:それはあまり積極的に考えていない。議会図書館はあくまで議員の調査研究のためが主。
・最近、議会事務局の自治体を超えた共同設置ができるようになった。事務局の機能全てというのは難しいと思うが、図書館だけの共同設置等もありうるのではないか。
・今の熱心な人はそれを考える人もいる。
・様々な連携の例がある。:湖南市の県立図書館と議会図書館の兼務の職員の発令。三重県立図書館及び鳥羽市立図書館と鳥羽市議会図書室との連携など。
Q:市町村の議会からのレファレンスは来ることはあるのか。
A:来たことはない。
Q:議会史の作成の現状と図書館で資料の保存等何か準備しているのか。
A:議会史は昭和46年まで(昭和56年刊行)の作成後は刊行していない。関係資料はH11年ごろまで議会図書館で作成・保存している。






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