Home

学習会記録(第204回)


日時:平成25年5月16日(木)
参加者:13名
内容:「国立国会図書館関西館勤務報告」
発表者:是住 久美子 (京都府立図書館)

<1>自己紹介より
・民間企業での勤務を経て、非常勤で公共図書館や大学図書館で働いた後、京都府に採用され、京都府立図書館に配属された。
・府内の市町村各図書館支援を行う振興担当を5年、その後システムの運用・保守や、京都府内の図書館が加盟する京都府図書館等連絡協議会の事務局などを担当する企画調整係で3年勤務。

<2>出向について
・平成23、24年度の2年間、関西館に割愛採用(出向とは違うが似たようなもの)されることとなった。
・京都府立図書館から関西館への出向は6代目、今年度からは7代目が出向中である。
・また4年前からは関西館から京都府立図書館または総合資料館への出向もあり、人事交流が行われている。

<3>関西館での仕事
・関西館には国会図書館職員(職員全員で約890人。内約130人が関西館)と多くの委託業者の職員が勤務している。
・配属先は文献提供課の参考係、科技(科学技術)藩。藩(=班)という名称は独特。
参考係での担当業務
・総合案内、レファレンス等、来館利用者対応の閲覧サービスとガイダンス。
・関西館所蔵資料に関する図書館からの文書レファレンス回答。 ・納本以外に購入している図書の選書。
カウンターでの集合写真をもとに当時の職員を紹介。
・参考係の3斑、科技藩・人文藩・社会藩それぞれの職員がカウンター業務を行う。
・同じフロアの主任司書を入れると全14名。年に4回程度異動があり、入れ替わりが多い。3年もいれば長いほう。

主に担当業務のなかで印象深かったもの
@科技藩:選書と研修の講師
・科学技術分野のNDCでいうと主に4、5、6類に加え、海外の規格・テクニカルペーパー・欧文会議録などが入ってくる。
・技術動向書など、公共図書館では予算的にも買いにくい高価なものも積極的に選書している。
・見計らいは必要な書籍を選ぶのではなく、不必要なものを抜く作業。
・図書館協力課主催の図書館員向け科学技術情報研修で「欧文会議録・学協会ペーパー」の講師を担当。

A電子藩
・キャップ(班長)を任され、旧システムの保守、運用業務と並行し、システム大規模リプレイスに向けた館内サービスシステムプロジェクトの関西館側の代表窓口に。
・大規模システムのリプレイスに関わることができ、優秀な方々と一緒に仕事ができた事が一番楽しい思い出となっている。 「館内サービスシステム」は、館内にある利用者用端末で、書庫資料の請求や、電子資料の閲覧・プリントアウト指示を行ったりするシステム。
・下記、館内サービスの管理・運用。
◇書庫資料閲覧
・館内の端末に利用カードをかざし→OPAC検索→パソコン上で出納申し込み→資料の到着もパソコンで確認。
・これらの操作を利用者にやってもらうのだが、慣れていない方には操作補助を行う。
・機器操作支援として委託業者の職員が常時2、3人いるが、カウンターの職員が対応する場合も多々ある。
・関西館では書庫資料で一度に請求できるのは10点まで。混みあっていなければ、15分程度で出納される。
・雑誌は1号ずつ申し込む必要がある。
◇デジタル化資料・電子ジャーナルの閲覧複写
・国立国会図書館デジタル化資料に搭載されたものの他、電子ジャーナル、CD-ROMの閲覧と出力指示。
・サーバー室にあるチェンジャーに搭載されているCD-ROMも同じ端末で閲覧できる。
・出力・精算は利用カードを提示し、プリントアウトカウンターで行う。未精算のままでは退館できない仕組み。
・館内サービスシステムで、コンテンツ毎に同時アクセス数の制御や、プリントアウトの可否制限を行っている。
◇紙媒体資料の複写
・関西館はセルフ複写、職員が行う即日複写、後日郵送複写の3種類ある。
・開架・書庫資料共、申込書を端末から出力→頁数等を記入→複写カウンターで申込→即日複写の仕上がり確認もパソコンで。
◇マイクロフィルム・フィッシュの閲覧、複写
・従来の光学式マイクロリーダーから、デジタルマイクロリーダーに更新された。
・電子ズーム機能の拡大/縮小等、パソコンディスプレイ上で操作を行う。古い新聞で写りが暗いものも比較的鮮明に見ることができる。
・複写箇所を一旦PDFに変換し、画面上で確認してから印刷するため従来の光学式マイクロリーダーと比較して失敗が少ないと思う。

B広報斑
・館内掲示、ホームページ(関西館のページ、リサーチナビの関西館ページ)の更新を担当。
・デジタルサイネージ(電子看板)のコンテンツ作成。
・タッチパネル式のサイネージが館内に6台設置されていて、利用案内や行事のお知らせに活用している。小展示期間中はうち1台を専用で使用。
・けいはんなプラザで開催されたビジネスフェアなどのブース出展用ポスター作成や、当日案内スタッフも担当。

Cガイダンス斑
来館ガイダンス
・大学生対象の「関西館利用ガイダンス」や、図書館員対象の「インターネットで使えるレファレンスツール」をテーマにしたガイダンスの講師を担当した。
出張ガイダンス
・大阪府立中央図書館で開催した、聴覚障がい者対象IT講習会が最も印象に残っている。

<4>今後やりたい仕事
・国会図書館で導入されていたレファレンスコミュニティがとても便利だったので、同じような職員向けナレッジコミュニティを構築したい。
・システム更新をひかえているので、例えばSFX(リンクリゾルバ)の導入など、利用者にとって便利になるような機能を盛り込めるようにしたい。
・府立図書館は学校教育関係への協力体制に力を入れているが、行政や議会図書館などとの連携も模索したい。
・図書館未設置町村への働きかけ。
・障がい者サービスの拡充など。

<5>よくある質問など
・国会図書館でも利用者からのクレームなどはあるか→関西館でもある。どの図書館でも同じくらいあるものだと感じた。
・立地条件のこと→交通の便は良いとは言えない。バスは時間通りに移動できないもどかしさがある。
 →閉館時間前に終了するサービスあるため利用者には「なるべく早い時間に来館を」と案内していた。
・もっと国会図書館に居たかったか→職員のみなさん親切で勉強熱心だったため働きやすい環境で、また刺激をたくさん受けた。また機会があれば働きたい。
・国会図書館の方からは、公共図書館で働く人は地域や住民に対しての愛情が大きいとも言われた。
 →自分もそうだと思った。図書館の仕事を通じて京都の地域や人に貢献したいという気持ちがある。現在の職場でがんばろうと改めて思う。

<6>質疑応答
Q1:利用者からのクレームとは具体的にはどんなものがあったか?
A1:システムが変わったばかりの時はPCの操作等、利用方法についてのご意見が多かった。

Q2:電子班での仕事がやりがいがあり楽しかったとのことだが、逆に失敗した経験はあるか?
A2:科学技術分野の担当だったが、その分野の知識をもっと積極的に深めて、調べ方案内の作成等につなげることができればよかったと思う。
マニュアル整備も行き届いていて、周りの人がすぐに助けてくれるので、本当に困ったという事はなかった。
分からないことがあっても同僚や上司に相談し、仕事が進んでいった。

Q3:デジタルマイクロリーダーで、例えば読み取った記事の検索までできるのか?
A3:従来と同じフィルムをパソコンのディスプレイに表示するのだが、テキスト化されるわけではないので検索はできない。

Q4:リンクリソルバについて。
A4:京都府立図書館のOPACの検索結果から、メタデータを引き継いで他館の所蔵や電子ジャーナル等を検索できる仕組みができればと考えている。
京都府立医大の図書館でも導入されているようなので、料金や効果など調査していきたい。

Q5:レファレンス記録はどのように記入、管理しているのか?
Q5:職員向けではREXと呼ばれるブログのようなものにアップし、東京本館や子ども図書館とも共有している。
「午後○○といった内容のレファレンスで来館あり」など、引継ぎ用の連絡簿としても活用されている。 
図書館からの文書レファレンスは、受付から各課への回付、回答作成、回答、レファ協への登録までシステムで管理されている。
回答は各ケースによって様々な文例が用意されていて、質問館への回答までに何段階もチェックが入るため少し時間がかかる。

Q6:業務委託について。どんな仕事が委託されているか?
A6:関西館の自分が関わったことのある分野では、書庫出納、複写業務、カード発行、機器操作支援、図書の装備、配架整頓、発注データの作成等。

Q7:国会図書館で他にしてみたい仕事は?
A7:どの部署も興味があり勉強になると思うのでどの仕事でもやってみたい。

Q8:自分にできる仕事かどうか、不安に思わなかったか。また勉強会のようなものはあったか?
A8:電子班のキャップを任されたが、システムの担当は京都府立図書館でもやっていたのでそれほど不安はなかった。
自分の担当する仕事に関わるような勉強会は特には無かったけれど、よく知ってる人がどこかにいるので、わからないことをすぐに聞ける体制が整っていた。
メールの返信も早くて驚いた。

Q9:国会図書館のシステム更新について。
A9:図書を管理する基本的なシステムは慶應義塾大学図書館でも使っているイスラエルのEx Libris社製の図書館システムAleph(アレフ)になった。 
システムに係る経費を抑えることが大前提であったので、大規模なカスタマイズが出来ず、担当の方々は大変そうだったが、開発コストも運用コストも大幅に削減できたと聞いている。






Copyright © 京都・図書館情報学学習会. All Rights Reserved.

inserted by FC2 system