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学習会記録(第202回)


日時:平成25年2月21日(水)
参加者:9名
内容:「東京の専門図書館・二館を利用して」
発表者:若林正博(京都府立総合資料館)

2012年11月20日〜21日の若林氏の旅程を元にまとめました。

東京の専門図書館・二館を利用して〜「観光活用(旅の図書館)」と「消滅球団ロビンス(野球体育博物館)」〜

11月20日
1 図書館総合展 サイト:http://2012.libraryfair.jp/
・AM0:30大阪発、のぞみ始発よりも早朝に着き、新幹線よりも安価な寝台特急「サンライズ」を利用して、AM7:08東京着。
・目的は第14回図書館総合展で開催される「L-1グランプリ2012」のボランティアスタッフとして参加するため。
 ・所属先によっては総合展への主張費が出なくなってきため、自費で来る方は熱心な方が多い。
・「L-1グランプリ2012」が中止となり、「関西文脈の会」経由でMULU(みちのく図書館員連合)のお手伝いの話が来たのでこれに応諾した。

@10:30-12:00(スタッフ参加)
『東北発「図書館とは何か」−青柳文庫の検証から見えてくるもの』(MULU(みちのく図書館員連合)主催)
・講演や紙芝居に続き、後半は車座でのワークショップ。
MULU(MichinokU Librarian Union)とは
・MULUは東北6県の図書館員を中心に、顔が見えるコミュニケーションの活性化を図るため活動している。
・MLによる情報交換、勉強会、ミニ講演会、図書館見学、フリートークなど、様々な内容の定例会を月1回主に仙台で開催。

会場内他のフォーラムの様子
・図書館総合展の同時間帯に「図書館100連発−フツーの図書館にできること」(ARG主催)が開催されていたため注目が100連発に集まっていた。

A13:00-15:00(一般参加)
『首長が語る地方行政の現状と図書館への期待−名取市、小布施町、瀬戸内市の取り組みに学ぶ 』(図書館総合展運営委員会主催)
・名取市(宮城県)小布施町(長野県)瀬戸内市(岡山県)各自治体における地方行政の戦略と、その施策における図書館の位置づけ
・小布施町 町おこしに図書館も組み込み、郷土資料を観光活用し、町の店も専門図書館という考え。
・瀬戸内市 新規に計画する図書館。市政の中で図書館を位置づけるため、館長候補を市長部局の参事として配置し後に教育委員会へ異動。

B15:30-17:00(一般参加)
『電子図書館サービスの現在と図書館のこれから』国立国会図書館主催
・青空文庫、慶應義塾大学図書館、国立国会図書館それぞれの館による、サービスの現在の概観とこれからについての講演。

11月21日
午前
番外「神田外語大附属図書館」
 この館については改めて報告する予定。

午後
2「財団法人野球体育博物館 図書室」 サイト:http://www.baseball-museum.or.jp/books/summary/index.html
・月曜休館。野球開催日、祝日、夏・春休みは開館している。
・開館は午前10時からで、3〜9月は午後6時、10〜2月は午後5時閉館
・利用制限は無いが、図書室への入室には博物館の入館料が必要。大人500円 65歳以上300円 小,中200円
・小中学生の夏休みの自由研究にも積極的に対応している。
・閲覧席の電話予約可。
・野球その他のスポーツに関する書籍、雑誌等を約5万冊収蔵している。
・球団史は2000年代以降の例えば30年史、50年史などが開架にある。
・電話でのレファレンスも多い。野球マニアをはじめ、読売ジャイアンツ内部から選手情報の問い合わせなどもあるようだ。
・職員は司書も配置されている。
・複写はセルフではなく職員が対応。昭和20年代の資料は、紙質が悪く劣化が激しいものもあったがコピーは可能だった。
・コンパクトな館内ゆえに出納もスムーズ。調査する主題が決まっている時は専門図書館が使い勝手が良い。

発表者は「京都でのプロ野球公式戦開催略史」を京都府立総合資料館メールマガジンに連載中である。
・事前に予約していた「プロ野球協約」と司書の薦めの「ベースボールニュース」「ベースボールマガジン」「週刊日本野球」を閲覧。
・プロ野球チーム「京都太陽ロビンス」を中心に、京都ゆかりの人物、球団や球場のことについて主に昭和20年代の記事を調査。

インターネット上ではあいまいであった情報が当時の資料により真偽が確認できた(以下に調査内容を抜粋)
・ロビンスのオーナーは繊維商社田村駒の社長、田村駒治郎であった。
・昭和24年に京都新聞との提携により京都の衣笠球場を本拠地としていた。
・衣笠球場は立命館大学が建設した球場、昭和40年代に取り壊され今は同大学の衣笠キャンバスの一部となっている。
・現在の西京極球場は以前は衣笠球場であり、今でも立命館大学近くの電信柱には「衣笠球場」のプレートが残っている。
・昭和25年からは松竹と提携し松竹ロビンスとなり、大阪進出を企図した。
・昭和27年から立命館大学が防火上の理由などにより衣笠球場の学外使用を禁止した。
・西京極球場の改修終了後は京都においては専ら西京極球場が用いられた。
・ネット上に西京極が専ら使用されていた年代に衣笠を使用したというような記事が散見されるがこれは間違い。
・ネット上に現在の本拠地制度に当てはめて京都とロビンスの関係を結びつけようとする記事がみられるが、これも制度が全く異なる時代のものなので当てはめることには難がある。
<参考>京都府立総合資料館メールマガジン144号〜(2012年4月4日〜現在)サイト:http://archive.mag2.com/0000210156/index.html

3「旅の図書館」 サイト:http://www.jtb.or.jp/library/index.php?content_id=1
・日本はもちろん世界中の国の旅行本が配架されている。
・東京都関連本が書架11段分、京都府は4段あり、0.5段という県もあった。
・海外では例えばトルコなどは1.5段分もあった。
・珍しいところでは、バルト三国も揃っており、紛争地であるシリアの旅行本もあった。
・公益財団法人日本交通公社が運営に関わっているためか、JTBのシリーズ本「キャンバスブック」が全巻揃っている。
・東京駅のリニューアルにあわせて、建築家辰野金吾関係の本も多数配架されていた。
・「山口経済学雑誌」「日本観光研究学会」「日本観光学会」等の紀要が開架で目についた。

「マレビトの会」 地域と観光関する情報サービス研究会について
・2011年1月11日発足。初期メンバーは発表者を含む10名。
・図書館雑誌2012.8の記事『マレビト・サービス 21世紀の「観光図書館論」に向けて』も所蔵されている。

≪質疑≫
Q1:蔵書は外部から検索できるのか? 閲覧したい資料は事前に決めていたのか?
A1:OPACは公開されている。図書は可能だが雑誌の内容まで検索できない。
野球体育博物館 図書室は以前一度に訪れたことがある。
閲覧席の予約と、あらかじめ調べたい内容と年代は伝えてあった。
資料の該当箇所への付箋や、新たな雑誌の紹介など、専門図書館ならではのレファレンスサービスを受けることができた。

Q2:(2 野球体育博物館 図書室で話題にあがった)大阪球場の設立から閉鎖までの経緯は?
A2:※当日曖昧だった部分を正確に回答します。
・球場地選定までの経過
戦後間もなくの大阪での野球場建設は田村駒治郎が押す「玉江橋(うつぼ公園は記憶違い)」案と南海球団が押す「難波」案があった。
「難波」案が有利に働いた背景。
南海球団にGHQとの強いパイプがあった。(当時の日本は占領統治下)
梅田に近い玉江橋は梅田を起点として沿線に球団・球場を抱える阪神球団、阪急球団が観客動員に影響があるとして反発していた。
・球場の歴史
昭和25(1950)年9月に完成、昭和26年にナイター設備完成。
昭和63(1988)年本拠地使用していたホークスが福岡へ移転。
平成3(1991)年からは住宅展示場として使用。
平成10(1998)年取り壊し。この間、劇団四季「キャッツ」の劇場にもなる。

Q3:旅の図書館の閲覧席は満席だったとのことだが、客層はどんな感じだったか?
A4:年配が目立ったが学生の利用もあった。カウンターから見通しがいいため自習のために席だけ使うことはできないだろう。
海外からの観光客向けではなく、日本人を意識した蔵書構成で、館内表示も日本語である。

Q4:旅の図書館に経済学雑誌がある理由は?
Q4:内容をみて観光に特化したものを収集しているようだ。

Q5:今回訪れた「旅の図書館」はマレビトの会の活動テーマにぴったりではないか。旅の図書館からもメンバーに入ってもらってはどうか?
A5:こちらから呼びかけはしていないが、希望があれば大歓迎である。
普段の会議もSkypeやFacebook等を活用することで遠隔地との活動が可能。
普段は顔を合わせないメンバー同士の交流の機会があったため、今回は日帰りにせずに関東に宿泊した。

Q6:取材目的で訪れる場合のアポイントメントと利用資料の記事としての掲載許可について。
A6:旅の図書館は30分程度と時間も限られており、アポなしだった。
いろいろメモを取りながら館内を見ていたため不審がられたかもしれない。
館員から声を掛けられたのをきっかけに自己紹介し、マレビトの会についても触れた。
館員は図書館雑誌のマレビトの会の記事も知っており、書庫の見学など便宜を図ってもらえた。
掲載については、野球体育博物館の資料を参考文献として活用した。
参考文献の明示に際して、所蔵館名を入れるか否かの確認をした上で所蔵館名を記載した。
 









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