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学習会記録(第194回)


日時:2012年5月19日(土)
出席者:9名
内容:春の見学会「エル・ライブラリー」施設見学
場所:大阪市中央区北浜東3-14 府立労働センター エル・おおさか4階
   *大阪産業労働資料館 エル・ライブラリー

 館長 谷合(たにあい)さんの説明を受けながら、本館の閲覧室、展示室、書庫の見学を行った。

1 エル・ライブラリー
・以前は南館2Fフロア全体で「大阪府労働情報総合プラザ」を府の受託で管理運営。
・プラザは2008年当時の知事の方針により廃止。補助金も全廃され人員、予算とも失うことになる。
・同年10月、協会資料室のあった本館4Fを「大阪産業労働資料館エル・ライブラリー」として継続運営することに。
・サポート会員制を導入し財団法人大阪社会運動協会が設置。
・移転費用は図書館振興財団の補助金。
・現在は正職員2名、非常勤アルバイト1名、ボランティアにより運営。
・ボランティアは人数に変動あるが、8名程度が週に1、2回作業。元図書館員、元労働組合員のシニア世代を中心に若者も参加している。
・1978年設立の協会本来の目的であった「大阪社会労働運動史」の編纂を続けており2009年に最新刊の第9巻を刊行した。
・図書雑誌資料の利用提供の他、目録作成、文書資料のデジタル化、企画展の開催、メールマガジンの発行と活発に活動範囲を広げている。
・配布されたA3版利用案内は、MLA融合型図書館としての機能が紹介されている。
 全国歴史資料保存利用機関連絡協議会主催の「第36回京都大会及び研修会」ポスターセッションで作成したものに、その後の情報を追加している。

  2 閲覧室について
・図書雑誌約12万冊の蔵書の内8000冊近くを開架。社史約600冊、労働組合史約1800冊。AV資料も所蔵している。
・NDC9版で分類し、多数を占める366(労働経済・労働問題)は独自の分類番号を展開し6桁でラベルに表示している。
・図書管理システムはデータをオンラインで管理できるクラウドで、ソフト「図書羅針盤」を利用している。
・以前使っていた富士通のアイリスからデータを抽出し移行した。
・図書だけでなく文書等の一次資料の目録にも対応できるよう(株)図(ト)羅(ラ)と共同開発中である。
・利用者用にOPAC専用のノートパソコンが1台あり。
・企業の広報誌は人気がありテレビ局、鉄道関係は各地から問い合わせがある。
・中之島図書館にも同じ労務関係資料はあるが、コンパクトにまとまっているこちらの方が閲覧しやすいとの声もある。
・専門誌からミニコミ誌まで収集しているが、社内報は内部資料であるという企業の考えにより公開を取り止めたものもある。
・新着コーナーやミニ展示はブックトラックにまとめ気軽に閲覧できる。
 例えば、企画イベント「映画に見る<労働>」では映画上映に合わせた関係資料の展示を行った。
・来館利用は年間1000人弱、1日5〜10人程度。
・会員・非会員ともに電話やメールでの問い合わせや複写郵送にも対応しており大阪外からの利用も可能。会員には郵送貸出も。
・サポート会員は約500人で社会保険労務士 労働組合員が多い。
・海外からの研究者が長期滞在し研究を進めたという例は、資料の希少性を気づかせてくれる。
・古本市(CD、雑貨等も含む)を閲覧室前で開催。閲覧室内各所に募金箱を設置するなど運営資金の捻出を図っている。

3 書庫について
・戦後、日本労働組合総同盟から派生した労働組合の資料が時系列で配架されている。
・大阪総評と大阪同盟の1989年までの資料が揃っている。1989年結成された連合大阪の資料はほぼ全容をその後継続して受け入れている。
 1989年結成の大阪労連の機関誌なども受贈している。
・明治期までさかのぼる蔵書はボランティアの手を借り目録の電子化を進めている。
・閲覧用にコピーをファイルし提供しているものもあるが、コピー自体が30年経過しており今後の課題となっている。
・未整理資料も多く、封筒ごとに管理しOPACに反映させている。
・手書きの原稿をファイルボックスに入れて整理しているものもある。保存のためにはよくないが予算がない。
・展示するたびに傷んでいくが利用されてこその資料ではないかとの思いがある。
・現物資料が他機関にあるものはコピーをデジタル化し紙媒体は廃棄している。
・寄贈による収集は欠号補充が難しい。雑誌の製本は予算の問題でできない状態。
・府の資料約17,000冊は無償貸与の契約になっているが場所代のこともあり預かっている感覚だ。他機関からの寄贈依頼も断りきれない状態である。
・毎日新聞、朝日新聞の大阪本社版のマイクロフイルムから明治20〜昭和60年の労働社会問題関係の記事を抜粋し目録を作成した。
 大阪毎日新聞の戦前分についてはエクセルに記載している途中であり、近々Webでの公開を予定している。
・寄贈によるコレクションの中江文庫は京都の呉服問屋生まれの中江平次郎氏が蔵で保存し整理していたものらしい。
・JAMオムロン労働組合の40年にわたる労使関係がわかる資料が整理中である。
・万博記念公園鉄鋼館にあった産業技術史学会収蔵品の一部、ろくろ旋盤用の手作り工具を引き取り保管している。
・説明者の父が旋盤工だったこともあり、この場で研究者とともに勉強会を開いたことがある。この模様はYouTubeにUPする予定。
・16mmフィルムの産業映画を100本程所蔵している。神戸大学の研究室が科研費で修復予定。

4 展示室について 
・貴重書庫でもあるが、壁面を一部ガラス張にしエレベーターホールから覗けるようにした。資料の“見える化”。
・展示ケースは他機関で不要となったものを譲り受け利用。
・部屋は会議室、作業室も兼ねている。
・写真絵葉書・嘆願書・要求書・回答書・アルバム・バッジ・発禁本・パスポートなど1920年前後の社会を語る貴重な資料が常設展示されている。
 中之島(剣先)公園での第一回メーデーの写真を前に列品解説に耳を傾けた。
・公園は館のすぐ近所。現代では当たり前の労働者の権利も先人の命をかけた運動により勝ち取ったもの、ということが生々しく伝わってくる。
・三池闘争時のホッパーパイプは当時を知る来館者から喜ばれたとの話など、利用者との距離の近さが伺えた。

5 その他
・“エル・おおさか”は貸し会場等で黒字のようだが、府に支払っている金額を考えると非常に厳しい状態だ。
・ホールやギャラリーもあり見学当日も労働関係だけでなく様々なイベントに参加する来館者で施設は賑わっている様子だった。

 この道30年、谷合さんの前例にとらわれないフットワークの軽さは頼もしく感じられた。






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