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学習会記録(第193回)


日時:2012年4月19日(木)
出席者:7名
内容:「井手町図書館の現在」
発表者:鈴木 浩史(井手町図書館)

1.井手町(人口・面積は『井手町統計書(平成22年)』より)
 ・位置 京都南部、木津川右岸。
 ・隣接自治体 北…城陽市 南…木津川市 東…宇治田原町・和束町 西…京田辺市。
 ・鉄道 JR奈良線 玉水駅・山城多賀駅。
 ・人口 8,205人(3,308世帯)/ここ数年100人単位で人口が減少している。
 ・面積 18.02 キロ平方メートル(東西7キロ・南北4.5キロ 1/5が居住地)
 ・名所 玉川の桜・山吹、橘諸兄の旧跡、万灯呂山展望台、カジカガエルなど。
     万灯呂山は疑似大文字で探偵ナイトスクープでも取り上げられた。
     カジカガエルは一旦絶滅したと思われていたが生存が確認され、現在は繁殖している。

2.井手町図書館
 ・開設 平成6年7月開館。
 ・所在地 京都府綴喜郡井手町大字井手小字二本松3−1 山吹ふれあいセンター(3階建ての1階部分)/駅から早歩きで徒歩30分
 ・面積 621.66u(内 開架332.79u)
 ・蔵書 86,682点(図書 77,005冊/雑誌2,234冊/視聴覚資料7,443点)/視聴覚資料の割合が高い。
 ・貸出 68,197点(平成22年度 個人貸出総計)。
 ・職員 館長1名(社会教育課長兼務) 正規2名(内1名司書=鈴木、1名行政職) 嘱託1名(退職教員・副館長) 臨時4名(カウンター勤務)。

3.井手町図書館の特徴
(1) 視聴覚資料が豊富 下記数字は22年度のもの。23年度に大量購入したため数字は増えている。
 ・CD…2,858点 DVD…1,849点 VTR…2,336点 →全て館外貸出可能。
 ・他にカセットテープやレーザーディスクがある。

(2) 見晴らしの良い立地
 ・長所:高台に位置しているため、見晴らしがよい。(天文台併設)
 ・短所:メインターゲット層である高齢者や子供が来館しづらい。

4.井手町図書館の取り組み
(1) 学校図書室との連携
 ・町内の2小学校・1中学校の学校図書館へ司書を派遣。(3名・臨時職員)
 ・司書は所属を図書館としているので、図書館へ出勤してから学校へ行き、学校から図書館へ戻ってから退勤している。
 ・朝夕顔合わせができるのが有難い。学校から戻ってきたタイミングでミーティングなどもできる。
 ・月1回 学校図書館と町図書館とで連絡会議を行う。
 ・選書や蔵書点検など様々な業務を町図書館がバックアップする。
 ・図書館システムをネットワークで結び、資料の検索や相互貸借を容易にしている。
 ・NPO「図書館の学校」主催の「調べる学習コンクール」に学校と連携して参加している。

(2) 出張貸出事業
 ・自動車が無い人にとっては立地が悪く、送迎バスの運行は難しいので移動図書館事業を今年度から始めた。
 ・図書館の立地のために足が遠のいている利用者を開拓する。
 ・町内の公営福祉施設の一室を借りて、新規受入本の案内や貸出・予約の受付などを行う。
 ・2回実施したが、各1名の利用にとどまっているので、広報の必要を感じている。
 ・毎週水曜日 10:00〜11:30 まで。
 ・返却ポストも設置し、いつでも返却可能。

(3) 「調べる学習コンクール」
 (概要)
 ・NPO「図書館の学校」主催の「調べる学習コンクール」(全国規模)への参加。
 ・町内で「井手町調べる学習コンクール」を行い、優秀作を全国大会へ推薦する。

 (内容)
 ・小学校2部門(1〜3年・4〜6年)/中学校1部門を募集/一般部門は応募が0のため24年度は小中だけで実施予定。 
 ・主催は学校教育課、図書館は資料の提供を行うとともな作品提出場所となっている。
 ・小学校、中学校部門は一般募集という形をとっているが事実上、夏休みの自由研究となっている。
 ・各部門3賞を設定し、10月の町文化祭で表彰式を行う。
 ・様式、テーマは自由だが、以下の条件を設定する。(調べる学習コンクールの全国フォーマットに準拠。)
  *図書館の資料を用いた調査であること。
  *参考資料・引用はきちんと明記すること。
  *小学生はB4・中学生はA4まで、それぞれ50ページまでを上限とする。
 ・実質、学校での「夏休みの自由研究」を充てる。
 (審査)
 ・学校へ提出 → 学年単位で校内選考(各4〜5点程度へ絞る)→ 最終選考
  最終選考は
  *実行委員長(校長)…1名
  *外部有識者(大学教授)…1名 昨年度は滋賀文教短期大学の平井むつみ教授
  *教員(図書館担当)…3名
  *学校図書館司書…3名
  *町図書館(副館長と司書)…2名
  で行う。

 (今年度実績)
 ・平成23年度 第1回は応募総数372点。
 ・内 各部門1作品(最優秀賞)を全国コンクールへ推薦。
 ・全国では3作とも佳作入賞(選外は全て佳作)。

(4) ぬいぐるみのお泊まり会 
 (概要)
 ・定例のおはなし会にオプションとして追加した取り組み。
 ・おはなし会の後、参加者からぬいぐるみなどを預かる。
 ・閉館後「図書館で遊ぶぬいぐるみたち」という体で写真撮影を行う。
 ・翌日以降、ぬいぐるみを参加者に迎えに来てもらい、写真と「ぬいぐるみが図書館で気に入った本」を1冊手渡す。
 ・低迷していたおはなし会をテコ入れすべく、兵庫県の宝塚西図書館(全国的なさきがけ)の取組を参考にした。

 (実際の運用)
 ・当日までに申し込みをしてもらう(先着20名)。
 ・申込書には参加者の氏名・電話番号のほか、ぬいぐるみの名前を記入。
 ・当日までに「としょかん利用かーど」(ぬいぐるみ用)を作り、ぬいぐるみの名前を入れておく。(返す時の識別にも役立つ)
 ・また「気に入った絵本」を参加者の年齢・性別・ぬいぐるみの種類などから選書する。
 ・おはなし会当日、受付でぬいぐるみに「かーど」を渡し、ひもでぬいぐるみの首にかけて、おはなし会に参加してもらう。
 ・おはなし会終了後、スタッフが館内で使用しているベビーカーを用意し、参加者にぬいぐるみを寝かせてもらう。→ベビーカーは退場。
 ・閉館後、「気に入った絵本」を読むぬいぐるみの写真を撮影。
  *例 「くま」なら「くまのプーさん」などくまの出てくる絵本。「ポケモン」には「龍」の絵本。「ゴーカイジャー」には宝探しの絵本。
 ・会を重ねると保護者の方も力が入ってくる。
  *例 「ぽぽちゃん」のぬいぐるみがマリオのコスプレで参加したこともある。
 ・ぬいぐるみが「おはなし会」をひらく写真や館内を探検する写真も作った。みんなで寝ている写真も撮影。
 ・写真はカラー印刷し、あらかじめ用意した台紙(ポップアップカード)にはめ込み、ひとことメッセージを添えておく。
 ・回を重ねるこどにメッセージが共通になるなど簡略化している。
 ・翌日以降、半券を持った参加者にぬいぐるみを返し、
  「○○くん(ぬいぐるみの名前)は図書館でこんな本を読んでいたよ、君も読んでみない?」
  と選書しておいた本と写真を手渡す。

 (課題)
 ・去年三回実施。
 ・絵本とぬいぐるみをリスト化し、リピータに同じ絵本を渡さないようにする。
 ・写真撮影は閉館後としているが、閉館後はあまり時間が無く(17時閉館/17時30分退庁)撮影作業はいつも超過勤務となっている。
 ・カードの作成を担当者1名で行っていたため、参加者が増えて手に負えなくなった。現在は簡略化し、すぐに作れるようなものを模索している。
 ・読み聞かせよりも「お泊まり会」に参加者が集まっているのが現状で、おはなし会自体の内容を見直すことも課題。

 (MBSの取材)
 ・4/21(土)のお泊まり会にはMBSの番組「ちちんぷいぷい」の報道コーナーで取り上げられることになった。
 ・当日に向けて準備万端にしたい。
 ※5/2(水)オンエアされました。

5.質疑応答
Q1:小学生は2校で何名くらいか?
A1:1校は各学年2学級、もう1校は各学年1学級。
Q1補:人口比で考えると児童数は多いと思う。(400/8500)
A1補:学級文庫に団体貸出をしている。1校はPTAに図書室担当の人がいる。小学校は1クラス180冊、中学校は1クラス30冊程度で貸出をしている。

Q2:ぬいぐるみのお泊り会に係る超過勤務の時間は?
A2:30分程度、60分になることはない。予め、ぬいぐるみが読む本は決めてあるが、自然な感じで読んでいるようなアングルを決めるのに時間がかかる。
  日が高い時期は夜の演出をするために書庫で撮影している。
  ぬいぐるみに愛着を持っている子どもは、ぬいぐるみと別れて帰る時に泣き出すこともある。

Q3:ボランティアの方がする業務は?
A3:視覚障害者用公報の録音。
  紙芝居。(定例、月1回・2名)
  ボランティアの方の紙芝居のほか、業務委託で自転車の荷台で行う紙芝居を図書館前ロビーで開催している。
  お菓子を配り食べながら紙芝居を鑑賞ということもあり大盛況。
Q3補:お泊り会でぬいぐるみに授けるカードの作成などをボランティアの方にお願いするというのも方法では。

Q4:ぬいぐるみのお泊り会は定員の20名に届いているか?
A4:第1回は定員を決めずに募集したところ25名の参加があった(飛び入りの方も)。この時は多忙を極めたので、以後の2回は上限20名の事前申込制とした。18〜19で推移。
  子育て支援センターを利用している保護者の中で話題になったことも盛況の理由である。
  二週間前にチラシを配布している。子育て支援センターを利用している保護者の中で話題になったことも盛況の理由である。
  お泊り会だけの希望者もいるが、お話し会のオプションとしてのお泊り会なので、お話し会には参加してもらうよう説明している。

Q5:お泊り会をして参加者数などで変わったことはあるか?
A5:特に変化はない。また、ぬいぐるみのお泊り会ということもあって、小2以下の参加が多い。もう少し上の年齢も呼び込みたい。

Q6:子ども向けサービスが多いが大人向けサービスで何か特色のあるものは?
A6:8月上旬に水害展(昭和28年に井手町は大水害にみまわれた。)、8月下旬に戦争展を行っている。
  水害展は壁に写真を掲げ、ハザードマップを分割拡大複写し、ラミネート加工したモノをロビー床に敷きつめ、その上を実際に歩きながら今昔が対照できる展示を行った。
  戦争展は戦争関連の物品を借用してきている。(西陣に落ちた爆弾の破片や金属供出の送り出しの時の写真など。)
  1日だけだが、朗読ボランティア向けの講座を行ったところ反響があった。

Q7:町内の施設はほかにどんな施設があるか?
A7:図書館に隣接して体育館、離れては老人福祉施設などがある。
  府の施設であるが山城勤労者福祉会館も隣接している。

Q8:駅から30〜40分くらいと聞いたが、子どもはやはり保護者と自動車で来館するのか?
A8:土日は子どもの来館があるが、平日は少ない。ただし、夏休みなどは汗だくになって来館する子どももいる。

Q9:利用者登録の実数は?
A9:平成22年度の統計で約41%。小学校入学時に利用者カードを作成している。とりに来ない場合は、小2になる時に進級祝いとして送付している。
  平成6年の開館時に全住民に利用者カードを配布したらしい。
  その他の指標も日本の図書館の統計では人口規模の同じ町村と比べて上位にある。
  平日来館者は平均30名、貸出は120〜160冊程度。土日は平均60名程度。
  貸出期間は図書資料が2週間、視聴覚資料が1週間。

Q10:司書教諭が3校3名というのは、教育委員会の力の入れようが良く分かるがそのことについて詳しく聞きたい。
A10:町長、教育委員会が政策として熱心に取り組んでいることが大きい。

Q11:名称が「井手町立図書館」ではなく「井手町図書館」となっているのは何か開館にあたって哲学があったのか?
A11:まだ究明していない。ただ、旧館の頃から「井手町図書館」という名前だったようである。

Q12:人形にかける名札は人形の名前のみか?
A12:子供と人形の対象リストを作成している。同じ人形が集まる(例:ぽぽちゃん三体)こともあり、十分配慮している。

6.補足
(1) 司書教諭の取り組み
 ・本のポップをつくるコンクールを企画し、図書館、学校図書室どちらでも受け付けている。
 ・配架見直しや選書の助言が効果的に出来る。

(2) 前職との比較
 ・前職の新潟市立図書館と良く似ている。
 ・新潟市立図書館の分館(16館)も正規職員が1名、臨時職員が3〜4名
 ・採用が決まってから、新潟から2回、休暇をとって引継に来た。  






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