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学習会記録(第192回)


日時:2012年3月15日(木)
出席者:19名
内容:「手作り製本を楽しもう(文庫本(仮製本)をハードカバー(上製本)にしてみよう)」
発表者:百瀬 周平

1 実技
(1)仮製本(以下、文庫本)の表紙に新たな見返しをつける
 ・糊代を1cmほどにして、見返しは木工用ボンド(以下ボンド)で貼り付ける。

(2)ハードカバーをつくる
 ・厚紙を文庫本の表紙と背の幅にあわせて裁断する。(今回は発表者が準備したものを使用)
  ※厚紙の高さは文庫+8ミリ、背の厚紙の幅は文庫+4ミリ、表紙の厚紙の幅は文庫と同じ
 ・裁断した厚紙を布の上に仮置きをする。
 ・溝の幅をとるため、2枚の表紙の厚紙を背の厚紙からそれぞれ7o離して仮置きする。
 ・7mm幅を確認するために、7mm幅に裁断した厚紙の短冊があると便利である。
 ・仮置きができれば、布に鉛筆やペンでかたどりをする。
 ・厚紙に薄く均等にボンドを塗り、元の位置に貼り付ける。ボンドは布の繊維の隙間からにじみ出やすいので、塗りすぎには注意する。
 ・貼り付けた厚紙の周囲約2cmを残して外側の余分な布を切り取る。良く切れるハサミかカッターを用いる。
 ・布の四隅を厚紙から5mm程度のところで斜めに切り落とす。
 ・上下の布を内側に折り込んでボンドを使って厚紙に貼り付ける。
 ・角にできた布の隙間を、内側へたくし込む様にボンドで接着して埋める。
 ・左右の布を内側に折り込んで厚紙に貼り付ける。
 ・花キレ(糸を布の端につけ、そこから布をクルクルと巻きこんだもの)を背の幅に合わせて上下に貼り付ける。

(3)ハードカバーを文庫本に装着する
 ・文庫本の背にボンドを塗り、(2)の作業で完成した表紙を貼り付ける。
 ・文庫本の見返しにボンドを塗る。
 ・見返しと表紙の厚紙はボンドを薄く均等に塗って貼り付ける。
 ・背に近いところ(溝になる部分)から貼り付け始める。
 ・見返しは厚紙の布のない部分が見えないように貼り付ける。
 ・溝にあたる布は定規・割り箸などの角を使って見返しと密着させるようにする。
 ・以上により製本は完成。

※発表者からの補足
 ・仮製本とは、あらかじめ表紙と本体を綴じた状態で、小口を一気に裁断してできた本。
 ・上製本とは、本体だけを綴じ、小口を裁断してから、表紙を取り付けた本。
 ・文庫本やペーパーバックは仮製本です。
 ・今回は仮製本からの製本だったので使わなかったが、一枚毎の紙から製本する場合は背に寒冷紗を貼りつけ、その上に表紙を貼り付ける。

2 質疑応答

Q1:本体の背の厚紙の幅は?
A1:(文庫本の背の幅)+(厚紙の厚さ)×2 である。これは、表紙、裏表紙にも厚紙を貼り付けるためである。

Q2:表紙になる紙と布の素材はどんなものが良いか?
A2:しっかりとした紙がよい。今回は色紙(しきし)を裁断して使用した。布は今回は簡単なものを用いたが、フェルト生地などを使うのも面白い。

Q3:厚紙をカッターで裁断するにあたっての注意事項は?
A3:金属はカッターが定規を乗り越え、手を切ることを防ぐ効果がある。すべり止めは刃を真っ直ぐに進めるために有効。
  カッターの刃はこまめに折って常に新しい刃を使う。古い刃ほど誤って手を切りやすく、裁断する時に紙に引っ掛かってきれいに裁断できない。

Q4:厚紙は色紙(しきし)が事前に裁断して準備してあったが、自分で作る時の注意事項は?
A4:表紙の高さは元の本の高さに上下4oずつ足した大きさにするのが良い。

Q5:製本に使う道具はどういうところで購入したら良いか?
A5:文房具店やネット通販で購入している。プロの道具を使っている訳ではない。例えば、万力を使わずとも重しで同じ効果を得ることはできる。

Q6:製本道具の購入にあたってお勧めの文房具店はあるか?
A6:千本今出川のアオタニがお勧め。製本とは関係ないが便箋の品揃えも良い。

Q7:ボンドの他に大和糊を使ったこともあるが、保存への適性や粘着力の面から優れている糊又はボンドは?
A7:酢酸が入っているボンドは酸性なので好ましい素材とは言えない。無酢酸のボンドもあるが乾くと割れやすいという性質があり、一長一短がある。

Q8:厚紙を布に貼り付ける際に表紙と背の幅は7mmと聞いたがその根拠は?
A8:経験による、布が表紙と背の間にできた溝にぴったりと付く最適な幅が7mmであった。しかし、現在も7mm以外に最適な幅がないか研究をしている。

Q9:製本を失敗した時は?
A9:糸綴じ製本の失敗の場合は糸を切るだけなので決断は容易だが、糊づけの場合は大がかりになるので、バラバラにする決断は難しい。
   
Q10:花キレの作り方は?
A10:こよりぐらいの幅の糸を布にクルクルと巻きつけていく。なお、今日の素材は布ではなく紙を用いた。






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