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学習会記録(第191回)


日時:2012年2月11日(土)

参加者:
◎京都図書館情報学学習会陣営:8名
◎ku-librarians陣営:10名
◎その他:12名

内容:「ビブリオバトル 嵐電の乱 -京都図書館情報学学習会 VS. ku-librarians-」

■10:00 四条大宮駅にて集合

■10:15 乗車・出発 出発前に貸切の電車を記念撮影する参加者もいた。

■登壇順をクジにて決定
 過去の学習会の開催回数+発表タイトル+発表者の書かれたカードをクジとして使用
 例:第187回 「『いま』の一歩先へ カレントアウェアネス-Rという仕事」 林 豊
   カードには「第18x回」と表示され、配り終えてから末尾を発表。
   上記のカードを引いた人は7番目となった。

■ビブリオバトルの説明
 発表5分後すぐに質疑応答2分。

■10:40 嵐山駅に到着、ビブリオバトル開始

1.藤原さん(学習会):福岡伸一『生物と無生物のあいだ』
・年末から今年の初めにかけて太陽系以外の惑星で地球に良く似た惑星が沢山見つかったと話題に。
・(地球外)生命体といえば何を思い浮かべるか?DNAや自己修復機能の有無が決め手と浮かぶのでは。
・ポイント1.DNAの歴史的読み物(発見、定義付け、遺伝子解析)
・ポイント2.生命の新しい定義→動的平行についての解説
 マウスを使った病的遺伝子のチェックから生命の本質が見受けられる
・ポイント3.エッセイのように織り込まれている作者のポスドク時代の話。暗黒面も書かれている。
・まとめると遺伝子の歴史についての読み物、著者の主張を説明する解説書、科学者に対してのエッセイの三点
Q1:去年この本を読んだ理由は?
A1:平積みされていた。登壇者が理系ということや、ウィルスやDNA遺伝子ネタに興味があったから。
Q2:文系には読みづらいか?読了までの時間は?
A2:専門的な話はあまりなく読みやすい。登壇者はトータル2時間ぐらいで読了。

2.江上さん(ku):江上敏哲『題:未定』(5月頃に出版予定)
・未出版本を紹介。紹介する資料は出版予定の自著。ゲラ刷り状態。封筒を持っていたので予想していた方も数名いた。
・海外で日本のことを研究している人のために、文献入手の方法、サポート内容、そういった施設などを紹介。
・日文研だけでは足りないところを埋める方法を紹介。例:国立国会図書館。
・海外の方が、どのようなサポートを望んでいるかにも言及。
・ジャパンナレッジの海外向けの展開をインタビューした項目も。
・日本出版貿易さんへのインタビューもある。
Q1:海外へのプレゼン予定は?
A1:海外事情を日本の方に紹介するのが趣旨。
Q2:翻訳出版の予定は?
A2:しない(したかった)。ただし、電子書籍にはする、というか、したい。
  中国、韓国と比べると日本はデジタル書籍が少ない。
  日本のことを専門にしていないが、日本のことを知る必要がある人たちにとってデジタル書籍は有益(だが、少ない)。

3.祖父江さん(学習会):津田かつみ[絵], 九州国立博物館『おおきな博物館』(きゅーはくの絵本シリーズ7)
・趣味は図書館博物館や美術館へ行く、働く、かかわること。
・去年行った国立民族学博物館の図書室で見た絵本。作:九博 全10巻
・紹介するのは7巻の建物。収蔵品の「ウンスンカルタ」ポルトガルより伝わったカードゲームをモチーフに館を紹介するお話。見開き12頁で学芸員の解説もある。
・免震構造にも言及。設計者からの言葉もあり、新資料館にも役立つと思う。
Q1:奈良博や京博のバージョンはあるのか?
A1:わからない。たまたま九博のものを見つけた。
Q2:資料館バージョンならどのようなものがよいか?
A2:東寺百合文書で!?本にすれば他の図書館に置いてもらえ、資料館のPRにもなる。
Q3:7巻以外のシリーズについて。
A3:リストを持参したのでご覧下さい(古伊万里、沖縄のお祭、化け物絵巻、朱印船など)。

4.山下さん(学習会):サマセット・モーム『劇場』
・作者は元医者で、小説のほかに戯曲も手がけ、そちらで成功する。
・ストーリーテラーとして凄いと思う。飽きさせない。
・内容は女優が主人公。主人公の旦那もイケメン劇場支配人で、子供も名門校に通う。雑誌にも紹介されるいわゆるセレブ。
・しかし、主人公は不満を持ちながら生活を送っている(旦那はケチ、息子は不細工)。
・そんなおり、若いツバメ=男優と出会う。上手く逢瀬を重ねていたが、男優は若い女へ走る。
・それでも、男優を影から支える健気な主人公。ラストはスカッとさせてくれる。
Q1:多数あるモームの作品の中から、なぜこの作品を選んだのか?
A1:映画化もされ、最近友人と見たところ。短編作品も面白い。
Q2:海外の翻訳ものは訳で内容が多少かわるがその辺について。
A2:古い本なので訳に旧漢字が使われ、確かに難しい感じはある。
Q3:作中の登場人物の誰に共感したか?
A3:それぞれみんなに共感するところはあるが、やはり、一番は主人公。
Q4:主人公は悪女なのか?
A4:違う。しかし、旦那さんへのアプローチなどを鑑みると女子力が高いと思う。

5.水野さん(学習会):フィリップ・コトラー『社会が変わるマーケティング』
・タイトルは原題の方がまさに「名は体を著す」と思う(原題:Marketing in the Public Sector)。
・公共機関におけるマーケティングの手引書。四つのPに言及している。Product(製品)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(プロモーション)。巻末に企画書の雛形が収録されている。
・事例が一般的な手引書より身近な話が多い
・ドラッカーも読んだがエッセンスが強すぎてわかりづらい。
・Promotionの身近な話の例。
 メッセージ→メッセンジャー→チャンネルという流れがある。
 ではチャンネルとは?→広告、グッズイベント、ダイレクトマーケティング
 では広告とは?→放送(包装?)、印刷物、屋外の広告
 では屋外の広告とは?→掲示板、車内広告、停留所の広告、それこそ、トイレ看板までいたるところに色々ある。
 自分のパフォーマンスをどう表現するか→ブランディングの展開方法。
 自分での実践例として、レファ協のキャラが描かれている絵本カバーを紹介。
Q1:多数あるコトラーの作品の中から、なぜこの作品を選んだのか?
A1:アマゾンで安かったから。これは、出回っている=よく読まれていることを意味する。また、具体例が豊富なところも理由である。
Q2:出版はいつされたものなのか?
A2:平成17年となっている(原書は2004年)。
Q3:レファ協にはこの本を読んで得た知識をどう生かすのか?
A3:コトラー曰くブランドは自分以外の人にとって使いやすいものであるべきとのこと。
  レファ協のキャラは線だけの簡単なキャラなのでドンドン使って欲しいが、改変のガイドラインを模索中でもある。

6.八木澤さん(ku):内田樹『先生はえらい』
・先生、学校について批判ありきの本が多い中で、そういったものはなく学ぶ側の視点で書かれている。
・中国の黄石公と張良の話(黄石公は張良に何度も沓を拾わせ、その忠義心を試した)。
・この逸話を聞いても訳が分からない。訳の分からないところにコミュニケーションの妙がある。
・訳の分からないのを解消するには、この本を読んでいただくしかない。
 前置きが長いけれどもそれは振りであり、最後には上手く行きつく。
・中高生向きの本。登壇者は大学生時代の教職課程に初めて読んだ。
Q1:先生といえば教授も当てはまるが、やはり現在も偉いと思って接しているのか?
A1:対象は誰にでも当てはまる。学ぶ側の問題。学びたいという気持ちから、先生に対してこの人は凄いと思い込むことが大事。
Q2:なぜ、2011年に再読したのか?
A2:読むと思考方法がクリアになるので、たまに読み返している。
Q3:学ぶ側の本なのか?
A3:そうだと思う。教育者も学ぶ側の視点で読むと良い。

7.長尾さん(ku):與那覇 潤『中国化する日本』
・関西館勤務だが、図書館史の勉強会の事務局もやっている。
・今まで誰も言及していないが、今日は東日本大震災から11ヶ月目であり、先の見えない不安な気持ちで2011年を過ごしたなか、『中国化する日本』はそのような気持ちを代弁してくれた本。
・図書館員は歴史への愛(思いやり)が足りないのではないか。そういった懸念を払拭してくれる本でもある。
・金と権力を持った人が上に立つのが中国化で、ちょうど逆なのが江戸時代の日本。身分制度により上に立ちたくとも立てない。
・それらの中間と思われる平清盛の時代から戦後までを見返したのが本書。
・作者に言わせると、江戸時代の否定という点で明治維新は中国化。
・戦前戦後冷戦時代を経て、現在強いリーダーの誕生が望まれているのことが実は中国化ではないか。
・著者曰く、これからの時代にこそ歴史(学)は必要。
Q1:中国化というがどの時代の中国?
A1:宋代、華僑が現れた頃を想定している。
Q2:歴史を知らない図書館員はどこから学べばよいか?
A2:この本に文献がたくさん載っているのでこの本から。
Q3:図書館について書かれているか?
A3:書かれていません。図書館史事務局へどうぞ。
Q4:著者の専門は?
A4:実は教育実習(院生時代)で知り合った。日本人のアイデンティティを研究しているが、何でも出来る人。

8.今野さん(ku):『塚本邦雄全集 第3巻 短歌3』
・出版社勤務の後、教員経験をして京大の職員になった。
・みなさん短歌和歌のイメージは?難しいというイメージがあるのでは?
 実際難しいと思う。現在の潮流のひとつに前衛短歌なるモノがある。
・前衛短歌の祖として塚本邦夫がおり、これを紹介したい。
 作品例:医師は安楽死を語れども逆光の自転車屋の宙吊りの自転車
・この作品の意味の分からない、分からないことこそ文学、芸術だと思う。
Q1:一番好きな歌は?
A1:先ほど紹介した歌
Q2:今野さんも詠むのか?
A2:詠まない。理由は塚本さんに勝てないから。
Q3:蔵集がたくさんだと読み辛いのでは?
A3:そんなことはない。登壇者も一から順に読んだわけではなく、パラパラ読みすすめた。
Q4:現在、前衛短歌を詠む人は多いのか?
Q4:とても多いと思う。その人たち(プロ歌人)で塚本邦夫を知らない人は居ないと思う。
Q5:授業に使ったことは?もし使っていたなら、生徒の反応が知りたい。
A5:流石にない。

9.服部さん(学習会):網野 善彦『続・日本の歴史をよみなおす』
・日本史、歴史についてのイメージは?
・暗記物?事実の羅列?歴史学の解釈として、事実の原因から、それがどう繋がっていくか。
・百姓と言う言葉が最初に取り上げられている。百姓といえば農民を連想するが、その違いとは?
・江戸時代、村住み(百姓)は検地を受ける。土地がないと水呑百姓。今の時代にも繋がっている。つまり、土地に税金がかかっているか否か。
・農民化、非農業化。本書は農業をやっていない人の方を取り上げている。
・歴史を学ぶことは問題意識が起点。そこから過去をみつめることが大事。
Q1:服部さんの専門は?
A1:近世の歴史。名古屋出身ということもあり、尾張藩の歴史を書いていた人たちについて研究していた。
Q2:金持ちな百姓とは他にもいたのか?
A2:廻船問屋だけではなく、職人や豪農もいる。

10.三本木さん(ku):角田光代『八日目の蝉』
・ビブリオバトル観戦経験あり。でも発表は初めて。
・学生時代は通学二時間だったので読書量は多かったが、今は減った。
・2011年最後に読んだ本はではあるが、実は借りたが読まずに返却することも多々あった、読まず嫌いな感のある本だった。
・しかし、著者に会ったのがきっかけ。映画化、ドラマ化もされた。
 しかも、年末実家に帰省したら本棚にあった。最早これは運命と思い読んでみた。
・主人公の女性二人に自分の年齢が近づいたということや、地元が登場していることも読むきっかけに。
 母性について考えさせられた。
・教訓として持っていないモノを数えるのは止めようと思った。
・自分の状況が変れば、読んだ感じも変わる。また、読んでみようと思う。
Q1:映画の方は見たのか?
A1:実は見ていない。ドラマも見ていない。
Q2:共感できた部分は?
A2:心に響いたのは、この話が不倫話なので、共感できると逆にマズイのではということ。
  主人公の心境は母親にならないと分からないのだろうということが分かった。

■10名の登壇後、挙手にて投票。チャンプ本は、きゅーはくの絵本シリーズ7『おおきな博物館』に決定。
  京都図書館情報学学習会 vs ku-librarians勉強会の得票数は15対15でナント引き分けに。

■12:10 嵐山駅出発
 ビブリオバトルで紹介された本を手に取りつつ、四条大宮へもどる。

■12:35 四条大宮着 解散。
 解散後、もう一度嵐電に乗車し「菜館Wong」へ

<参考>

ku-librarians勉強会さん側のまとめ
紹介された本がカーリルへリンクされています。

ビブリオバトル 嵐電の乱 ―京都図書館情報学学習会 VS.Ku-librarians― - Togetter
当日のTwitter上でのつぶやきがまとめられています。


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