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学習会記録(第189回)


日時:2011年12月15日(木)
出席者:9名
内容:「小学校図書館でボランティアができること〜取り組みと挑戦〜」
発表者:森 悦子(京都市立伏見板橋小学校図書室ボランティア)

1 小学校紹介
 ・創立明治5年、旧尾張藩邸跡に開校。
 ・旧伏見町で最初に設立された小学校である。
 ・伏見板橋小学校が藩邸の頃からある校庭の柿の木は「区民の誇りの木」にもなっている。
  →2年に1回、収穫した柿の実は、児童が持って帰れる。
 ・二つ目の象徴は「白菊の井戸」。
  →枯れていた井戸を平成2年に保護者の寄付により再生した。伏見の名水にも選ばれている。
  →井戸水の利用は会費制、児童の利用は制限。
 ・教育目標は「夢を抱き心豊かにたくましく生きる板橋の子」。
 ・地域の方々と交流の深い学校。

2 図書室について
 ・かつては本館の2階に位置していたが、児童の訪れやすいように、教室がある校舎に移転した。
 ・教室を図書室に改造したために二つに分かれている。
 ・「第一図書室」は「本のいずみ」、「第二図書室」は「お話しの森」と命名している。
 ・「第一図書室」は調べ学習用に、「第二図書室」は読書活動に使用。蔵書数はおよそ7000冊。
 ・「第一図書室」は0〜8の分類方法を、「第二図書室」は絵本や物語を低学年向きと高学年向きに分けて配架している。
 ・「第二図書室」は卒業生からの寄付により絨毯引きになっている。
 ・「第二図書室」の壁面はボランティアが季節ごとの飾りを工夫している。

3 図書ボランティアについて
 ・先生と地域住民で構成されている学校運営協議会の中に4つの委員会があり、図書室の活動はそのなかの「心の委員会」が運営している。
 ・現在、登録している図書ボランティアは、卒業生保護者11名、地域の方3名、在校生保護者13名の計27名。
 ・しかし、実際に活動しているボランティアは5人程度のため、ほとんどの作業が滞り気味の状態。

4 図書ボランティアに入ったきっかけ
 ・次男の入学がきっかけ。
 ・長男の入学時以降お世話になっているPTA先輩方から図書ボランティアのことを聞いた。
 ・読み聞かせや工作など興味のあることが多く、手伝うことになった。
 ・子どもが幼稚園時代に、小学校の図書ボランティアの話をよく耳にして興味があった。 
  →ちなみに、幼稚園では修理にセロテープを使っていたが、小学校は専用の修理道具が揃っているなど。

5 図書室の第一印象
 ・とてもたくさんの本がある。
 ・人気の新刊本が伏見中央図書館では予約しても、なかなか借りることができないのに、図書室ではすぐに読むことができる。
 ・「第一図書室」、「第二図書室」と二つの教室を使用しているために、0〜8類と9類の本を同じ部屋で読むことができない。
 ・開室頻度の高い「第二図書室」に読み物しか無いのはもったいない。
  →特に、好奇心おう盛な児童が4類などの本を気軽に見ることができないのはもったいない。
 ・1年生の教室の前に図書室があるので、図書室で作業しながら自分たちの子どもの授業の様子をうかがえるという利点に気がついた。

6 はじめに取り組んだこと
 ・利用マナーの向上
  入室時の上靴の脱ぎ方が乱雑なことが多い。
  →「うわぐつはそろえてぬぎましょう」というサインを制作。サインは「写真家・切り絵作家の今森光彦さん」の切り絵を手本に、家でラミネートを使用して作成。  ・教務主任の先生からの依頼。
  昔話の切り絵や季節ものの掲示を行う。
  →クリスマスの飾りで使った木は 飾りを換えて正月用に転用したこともある。 
 ・貸し借りのルールをわかりやすくした。
  →貸し出しのルールを書いたPOPを作ってカウンターに掲示。
 ・図書室前の掲示
  →いくつかを制作。先生や児童に好評。掲示物などに関しては、楽しく制作を継続している。 
  例:課題図書の紹介ポップ、○○冊読破おめでとうカード、牛乳パックで作った本立て、木の実ノート、企画展示、先生依頼の切り絵クイズなど。

7 やっていくうちに感じた疑問
 ・分類が一桁なのでわかりにくい。様々な本が混ざってしまう。
  →劇、スポーツ、折り紙が混配される。4類もいろいろな分野が混配。9類も日本、英米、ドイツ文学が作者別五十音順に並んでいる。
   参加者からの意見:4門は「キーワード」にすると二桁でなくても良い
               9門は日本文学をひらがな、洋書はカタカナでオーサーマークを表記すると良い。
 ・先生との定期的な会議が必要と感じる。(学校からの指示や意図をボランティア全員に伝える場が必要。)
 ・ブッカーや本の補修、新刊の受入・配架、廃棄本の除籍をボランティアが行なっているので、役割分担の整理が必要な時期と感じている。
 ・児童へは1回きりでなく様々な機会をとらえて何回もオリエンテーションをした方が良いと感じる。

8 教育委員会からこられた支援員さんとの連携
 ・支援員さんの配置は昨年度限り、今年度はなし。
 ・反省
  →請求記号を2桁にするという話もあったが実現できなかった。
  →支援員さんとの連携をもっとできたのではと感じている。
  →支援員さんの任期中にもっといろいろとノウハウを聞くべきだった。(在任期間が半年だと知らなかった。)
  →仕事の引き継ぎに一部漏れがあり、図書の移動箇所や移動理由がわからなくなってしまった。

9 子どもたちと図書館
 ・基本的な使い方(カードで借りること、貸し出し期限など)の指導は受けているが、本の返し方、本の取り扱い方、貸し出し期限などがわからない児童もいる。
 ・児童に図書館内の分類のルールが知られていない。
 ・児童の図書委員の仕事(日課当番制)である「本の貸出し当番」の手順が委員に伝わっていないと、返ってきた本が元の場所に戻らない。
 ・図書室の掃除当番は、5年生の1クラスが担当する。掃除機担当以外の児童が何をしたら良いか戸惑っていることもある。
 ・図書室の利用状況を報告し、教務主任や図書担当の先生と対応を協議する場も必要と感じる。先生の役割とボランティアの役割は自ずと異なる。
 ・図書委員の児童でこなしきれない仕事が多く、児童の残した仕事をボランティアがフォローすることもある。

10 ボランティアをしてプラスになること
 ・たくさんの本、新しい本と出会える。
 ・自分が子どもの頃の読んだ本と再会できる。
 ・読み聞かせの授業を参観する機会がある。
 ・見聞や知識が広がる。(生活に役立つというよりは心が豊かになる。)
 ・ボランティアや図書を通じて交友関係が広がるなど。
  →ツィッターで読み聞かせについてつぶやいたことで、石巻に友達が出来た(震災前)、震災後いろいろと心配をしていたが最近ツイッターでのつぶやきが復活していた

11 「そんななかで、ボランティアができること」
 ・掃除の時間を挟んで図書ボランティアに来て、児童とともに掃除をしたり、返却された本を一緒に戻すなどを行う。
 ・本の修理を児童と一緒にすることにより、本を大切にする心をを育みたい。
 ・低学年にもわかりやすい「図書室の使い方」のPOPを作って、目につくところに掲示した。
 ・本にはそれぞれ「住所」があって、分類があることを知ってもらうためのPOPを作って掲示した。
 ・お勧めの本には必ず「本のラベル」もつけておく。
 ・本を書架へ戻すときの注意書きをつくる。(児童の図書委員のマニュアルになってくれれば、なお良い。)
 ・修理する本を入れる修理本ボックスを設置した。

12 今後の課題
 ・学校、先生が望む「図書館教育のあり方」を明確にし、あわせて、ボランティアの役割も明確にしたい。
  →「図書ボランティアは子どもたちへの読み聞かせを主にしてほしい」という声もあるが、現状は図書室の本の整理、配架、修理などで手一杯となっている。
  → ボランティアの仕事がスムーズに進むように学校と連携することが必要。

質疑応答

Q1:支援員にボランティアと教師の間を取り持つ仕事は入っていないのか?
A1:支援員とボランティアの日程が合うことが少なかった。連絡ノートが十分に交換できなかった。

Q2:小学校には図書担当の先生が配置されていたと思うが、今はいないのか?
A2:司書教諭の先生が学級担任と兼務で配置されている。
参加者からの意見
 →京都市立の小学校では司書専任は難しい。

Q3:図書担当の先生から学級担任へのサポートの状況は?
A3:貸出や検索を行う図書館システムの活用には余地がある。
参加者からの意見
 →効果的な利用のためには配架履歴はつくった方がよい。

Q4:図書館システムはどこのシステムか?
A4:京都市内共通の書店組合が作ったシステム。
  学校によっては書店が書誌を入力して納入することもあるが、間違いもあるらしい。

Q5:ボランティアは選書にも関わるのか?
A5:選書は図書担当の先生や教務主任の先生が担当し、ブックフェアに行く。
  図書ボランティアは検品から携わり受入、装備、配架などを行う。

Q6:ボランティアが使える予算はあるのか?
A6:備品類は学校のものを使うが、ボランティアが使える予算は無い。
  ポップなどは自前で作る時もある。

Q7:図書委員の児童数は?
A7:4〜6年生で9クラスあり、各3人ずつで27人。

Q8:返却時等にパソコンを使って処理するようだが、児童にやらせているのか?
A8:最初の委員会で先生が教える。

Q9:今年の取り組みで成果があったことは?
A9:オープン図書室を開催した結果、ボランティアに興味を持ってくれた方がいた。




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