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学習会記録(第187回)


日時:2011年10月28日(金)
出席者:17名
内容:「『いま』の一歩先へ カレントアウェアネス-Rという仕事」
発表者:林豊(国立国会図書館関西館)

自己紹介
2007年、京都大学に採用、附属図書館に勤務、2011年4月より国立国会図書館関西館に出向

1.はじめに:カレント-Rの仕事とは
・カレント-Rとは国立国会図書館のサイト「カレントアウェアネス・ポータル」における国内外の図書館界、図書館情報学に関する最新の情報を知らせるコンテンツ。毎日更新。
・カレント-Rの仕事=「ブログを書くこと」
・カレントアウェアネス・ポータルが誕生した経緯など初期の事情については、『図書館の「いま」をどのように伝えるか―国立国会図書館の「Current Awareness Portal」の試み』という論文があるのでそちらを見てほしい。(情報管理 Vol.49 (2006), No. 5, p.236-244. http://www.jstage.jst.go.jp/article/johokanri/49/5/236/_pdf/-char/ja/)
・また、前々任者である上山氏がku-librarians勉強会で発表した際の記録もあるのでこちらも参照してもらいたい。
http://kulibrarians.g.hatena.ne.jp/kulibrarians/20090731/1290516228

2.国立国会図書館での生活

異動決定〜研修まで
・異動の内々示が2月中旬にあり、3月末頃に内示。4月1日から東京本館で新採用職員とともに研修を受け、7日に関西館初出勤(カレント-R初投稿)。
・研修のカリキュラムは多岐にわたったが、特に国会へのサービスと書庫内資料の使い方の研修が興味深かった。
・震災の影響で館内がとにかく暗かったのが印象的。

国立国会図書館の紹介
・1872年に書籍館設立、1948年国立国会図書館として開館。2000年に国際子ども図書館、2002年に関西館が開館。
・最近では長尾ビジョン(2008)が打ち出されて、このビジョンに沿って運営されている。
・2011年度は「変化の年」で、2010年10月に組織再編(利用者サービス部、電子情報部の誕生)があり、2012年1月には基盤システムのリプレイス、国立国会図書館サーチの稼働が予定されている。

関西館図書館協力課調査情報係
・カレントアウェアネスを担当しているのは、関西館の図書館協力課(通称:ときょう)にある調査情報係という部署。
・調査情報係の仕事は図書館情報学に関する調査研究・情報収集であり、その成果をカレントアウェアネス・ポータルを通じて提供している。
・ポータルのコンテンツは以下の通り。
 カレントアウェアネス-R(ブログ・毎日):2006.3〜
 カレントアウェアネス-E(メールマガジン・隔週):2002.10〜
 カレントアウェアネス(季刊誌):1979〜
 調査研究(年1回)
・係の体制は、係長と係員2名の3名。非常勤研究員1名も。
・仕事の雰囲気はひたすら読んで書いてのデスクワークで、図書館員というよりは編集者・研究者に近い。
・情報共有の手段はメールが多い。メールの件名に「■FYI■」(For Your Information、参考情報)を付けて送られてくる文化がある。ほかにはイントラサイト、課内報告(毎週、主に会議の情報を通達)、地域連携アクション連絡票(各種イベントに参加したときの報告)がある。
・発表者は出勤してから午前中にカレント-Rの原稿を書き、午後にその他の仕事をすることが多い。また、カレント-Eが隔週発行のため、2週間単位でスケジュールを組み立てている。

3.カレントアウェアネス-Rのワークフロー

探す(目安:30分)
・探すものは「ニュース」、つまり変化のこと。過去のことを知らないと変化と認識できないので、幅広い前提知識として必要だと感じている。
・使用しているツールはGoogleリーダー、Googleニュース検索、はてなブックマーク、はてなアンテナ、など。
・RSSでは各種ブログを確認。例えば、
 国内有名ブログ:実業史研究情報センター「情報の扉のそのまた向こう」、情報管理Web STI update、ほぼ日刊資料保存
 海外有名ブログ:INFOdocket、Peter Scott's Library Blog、iLibrarian
 各機関のサイト:官公庁や公共・大学図書館、出版社、国際的な機関・図書館など
・Googleニュースでは、カスタムセクションという機能を使って、図書館関係のニュースのみを抽出している。
・はてなブックマークでは、図書館関係者のユーザをお気に入りに登録している。
・はてなアンテナでは、RSSがないサイトを登録し、更新状況をチェックしている。
・そのほかには、Twitter、館内外からの情報提供・掲載希望メール、メーリングリストなどを活用している。

(記事紹介者から見た)嬉しいニュースの書き方
・コンテンツは1エントリ1ページ、ページにタイトルを付け、PDFではなくHTML形式の文章とし、作成日と最終更新日が明記されていて明快なタイトルがあること=つまり、ブログ形式がいいのではないか。
・分館のニュースも中央館でまとめて提供されていると嬉しい。
・利用者向けニュースと対外的なプレスリリースとを分けてもいいのでは。
・RSSを出力し、Twitterなどでも広報されているとキャッチしやすい。

選ぶ・読む(目安:60分)
ネタ選びのポイント
・テーマは「図書館」とゆるく関係するものを広く扱う。最近では東日本大震災関係のニュースを積極的に集めている。
・各人の得意分野やセンスなどによるところも大きい。
・館種は不問だが、大学図書館のネタが多くなりがち。
・国も不問だが、日本、アメリカ、イギリスの話が多くなりがち。
・中立性。特定の企業の宣伝にならないように注意するなど。
・その他:読者のニーズ。マイルストーンとしての記事。応援記事。

書く(目安:記事1本につき30分)
記事を書くときの注意
・最小限の情報(「いつ」「誰が」「何を」、どんな状況からどんな状況へと変化したか)を一段落でコンパクトにまとめる。
・自分の意見を書くのではなく、公開された情報源に書いてあることを紹介する。
・自信のないことは書かない。
・ウェブサイトのリンクポリシー(リンクに事前許可が必要など)によっては紹介しづらいことも。

広める方法
・基本はRSSとTwitter(@ca_tweet)での広報。
・2010年1月にTwitterを始めてから、記事へのアクセス数が急増し、RSSへのアクセス数は減少傾向にある。
・Twitterのフォロワーは6,000弱(2011年11月現在)で、図書館関係の公式アカウントとしてはトップクラスの数。
・カレント-Rの記事数は累計11,739本(2011年9月末現在)で、係3名で1日10本を目標にしている。

反応
・Twitter上の反応は「current.ndl.go.jp」での検索結果や、ふぁぼったーなどで確認。
・はてなブックマークも見ている。
・長尾館長も見てくださってて、講演会などで記事を紹介していただけることも。

カレント-Rの質とは
・正確性、速報性、コンスタントな更新(これまで毎営業日更新を続けている)の順で重要だと思っている。
・他には面白さ(図書館のファンを増やせているのか)や網羅性(非英語圏のニュースが特に難しい)。
・評価指標としては、記事のページビュー、論文等での被引用数、Twitter上でのRTやコメント、フォロワー数の増減があるが、これだけでは「記事のインパクト」を捉えきれていないと感じている。

4.まとめ:カレント-Rの仕事とは
・一言でまとめると「長尾ビジョンのもと、図書館と広く関連する国内外のニュースから重要なものを取捨選択してタイムリーに日本語で発信すること」。
・あるフォロワーの言葉に「膨大な図書館関係の多言語資料を集め、選定、整理、加工、出力する」とあって、カレント-Rの仕事は「一連の図書館サービス」(テクニカルからパブリックサービスまで、サブジェクトは何でもあり)と言えるのかもと気づいた。

カレント-Rについて常に考えるべきこと
・国立国会図書館が税金を使って提供する意義は十分か?
・何のための情報発信なのか?(現場の図書館員の行動につながっているか。NDL/図書館のファンを増やせているか)
・大学図書館から出向してきた自分が携わる意味はあるのか?(大学図書館での実務経験やこれまでの人的ネットワークや情報収集のノウハウが生かせていると感じる。今後、ここでの経験をどう生かしていくか)

質疑応答
Q:情報収集のための方法やノウハウはどのようにしているのか? たとえばRSSリーダーの登録サイトはすべて自分で登録したのか?
A:基本となるサイトのリストをもらい、その後どんどん追加していった。




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