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学習会記録(第186回)その2


*今回は記録が長文なので、2つに分けています。


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(堺市立図書館見学の続き)

3 堺市立図書館における地域資料(説明:地域資料担当主査 竹田芳則氏)
(1)サービスの概略
昨年規則改正により、正式に「地域資料」を定義した。
中央図書館は専任担当者4名、各区の拠点館は兼務。
新刊、特に行政資料は寄贈での収集に依存。

(2)資料の整理
堺市と大阪府域を収集対象とし、大阪府域はつながりの深い大和川以南の泉州地域を重点的に収集。
寄贈資料の装備は業者に委託している。
パンフレット類も収集し、一枚ずつバインダーに綴じこんで整理している。

(3)特徴的な地域資料とその活用
堺市所縁の人物の資料の活用→(例)「与謝野晶子著書・関係資料目録」
郷土資料展→(例)「与謝野晶子展〜山の動く日きたる〜」(他の行事とのタイアップ)
      (例)源氏物語千年紀とのタイアップなど

(4)歴史資料の保存
大正13(1924)年〜昭和5(1930)年にかけて刊行された堺市史の編纂関係史料が図書館に引き継がれて保存。
その経緯から堺市史刊行80年記念の資料集を刊行。
中には、原史料が戦災で焼失し、編纂時に作成した複製のみが現存という資料もある。

(5)歴史資料の現在の状況
「古文書整理事業」…マイクロフィルムを作成して、紙焼の複製を提供出来るようにしている。
平成18年から4年間は「ふるさと再生雇用基金」を活用して元興寺文化財研究所へ委託している。
最近は研究者との連携強化をしたり、長らく刊行されていなかった「堺研究」を刊行再開している。
マイクロフィルム化は平成3(1991)年から行われデジタル化も視野に入れて事業を行っている。
マイクロフィルム活用の流れ1 撮影→マイクロフィルム化→DUPEファイル作成。
マイクロフィルム活用の流れ2 紙焼、デジタルスキャナー、出版者等への貸出の各々に活用可能。

(6)レファレンスサービスの実際
堺市史(全8巻)は戦前の刊行で土居川に囲まれた中世都市堺の範囲の市史、索引は充実。
堺市史続編(全6巻)は昭和50(1975)年代の刊行で、現堺市域を包括する市史、索引は充実。
美原町史(全5巻)、索引は未刊行。
堺市史については索引が充実しているので地域についてのレファレンスに大変役立つ。
「堺関係新聞記事索引(さかいのひと月)」→庁内LANにアップして、市の組織内で活用してもらっている。

(7)地域資料を使った「戦略的」な図書館サービスの展開へ
「堺歴史文化情報発信事業」
「堺歴史文化市民講座」(23年度新規事業)→第1回:「堺と大和川」、第2回「百舌鳥と世界遺産」。
「デジタル・アーカイブ事業」(23年度新規事業)
「堺のまち・今むかしメモリー事業」(23年度新規事業)→豊中市他の「北摂アーカイブス」に似た事業。

(8)質疑応答
問:地域資料、特に行政資料は入手にあたって納本制度の様な関係機関と一定ルール化されたものがあるのか?
答:以前は市政情報センターが収集を助けてくれていた。しかし、業務委託されてからは各課との直接交渉となっている。
  明文化されたものはなく、もちろん強制力もないので、庁内LANなどを使って各課へ呼びかけるなどの工夫をしている。

問:年報などが、紙媒体からホームページにアップするなど電子化された場合、収集はどうしているのか?
答:許諾を得て、CDやホームページから出力、製本している。手間がかかるのが難点。

問:地域資料のマイクロフィルムの出版利用などは利用料を徴収しているのか?
答:利用料は徴収していないが、成果物は納本してもらっている。

問:市役所各課で所蔵しているコンテンツの収集は難しいと思うが、何か特別な取組みをされているか?
答:文化関係、文化財保護関係の課と個人的なつながりを築くようにしている。
  市役所各課から保管場所等に困り相談が来る事もある。しかし、これも個人的なつながりによることが多い。

問:職員数について
答:正規、任期付、再任用、臨時、嘱託をあわせて133名。
  うち、正規は78名で、更にうち司書は73名。
  中央図書館は全体で46名と外部委託が約20名の体制で運営。なお正規職員の司書は24名。

問:マイクロフィルムで貸出した資料の改変についてはどう対応されているか?
答:改変はしないことを条件としているが、堺市の宣伝になるのであれば、若干は許容している。  


■ アサヒ ラボ・ガーデン(案内:研究開発部門・図書館司書 藤澤聡子氏)
(1)設立の経緯
アサヒビールグループの情報受発信拠点として本年4月に開設。
7月のホールディングス化により、グループ全体の情報受発信の重要性が高まる。
一企業がこういう場所を持つという実験的な試みでもある。
宣伝コーナーとは捉えていない。
生活者と社員が直接意見交換できる場所としての価値を見出している。

(2)イベントの開催
本日(2011年9月18日)は離乳食のイベントを開催している。
商品の感想などを聞く機会としている。
各イベントへの参加希望者はホームページから予約することが出来る。
お酒や環境など幅広いテーマを社員が講師となって開催している。
一社員が顧客の声を直接聞く貴重な機会である。
講師社員にとって、生活者の生の情報を得る場や社員のプレゼン能力向上の場として機能するようにしていきたい。

(3)施設の利用
イベントの無い時はフリースペースとなり、近くのオフィスの人が昼食の弁当を食べる場所にしたり、学生がミーティングスペースとして活用している。(無線LANは完備)。
環境啓発活動の紹介として商品梱包材(ダンボール)と空き缶を活用した犬の模型なども展示されている。
関西ウォーカーのUst中継で施設が紹介されたこともある。

(4)図書の役割
蔵書は食と健康に関するものを中心に約700冊。
本は媒体・デイスプレイとして考えている。
本がある空間は上質な空間となる。一方、本が無い空間は味気ない。
本によって、この場所のコンセプトを来館者に伝えることが出来る。

(5)産学連携
コミュニケーションをテーマにした産学連携活動を検討中。

(6)本を使ったイベント
○アサヒ ラボ・ガーデン リーディングクラブ
ブックコーディネータの幅允孝(はばよしたか)氏の下、毎回ゲストを招いて、参加料無料でお酒にあう本について語り尽くす読書会。
次回10月8日は哲学者の鷲田清一氏とクリエイティブディレクターの伊藤直樹氏をゲストに招く。

○バー読(どく)ナイトinラボ・ガーデン
藤澤氏担当企画。
本とお酒の好きな人が、お勧め本を持ち寄る。
参加者はお勧め本を紹介して手書きのカードを作成する。
(例)夏の企画→読むとスカッとするお勧め本。
カードを作成してもらった本を購入して「ラボ・ガーデン」でディスプレイする。
本とお酒のスタイル提案。カクテルの作り方などでさりげなく自社ブランドをPRしている。

(7)質疑応答
問:イベントに関連して購入した本はどうしているか?
答:数が少ないので、面置きのディスプレイで対応している。視覚的な効果から面置きを重視している。

問:大阪という地に開館された背景は?
答:このビル自体の立地が利便性が良く、グループの情報受発信の場所として集客が期待できるということ。また大阪はアサヒビール発祥の地でもある。
大阪の方は意見を沢山だしていただけるので、情報収集という観点では望ましい場所といえる。

問:社員の講師はどのようにして選ばれているのか?
答:当初は知っている人に頼んだが、社内の告知などで募るようになってきている。

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