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学習会記録(第186回)その1


*今回は記録が長文なので、2つに分けています。


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日時:2011年9月18日(日)
出席者:11名
内容:「秋の見学会in阪堺」(施設見学)
見学場所:堺市立中央図書館、アサヒ ラボ・ガーデン

■ 堺市立中央図書館
1 館内案内と電子書籍(案内:図書館サービス係 伊豫田直美氏)
(1)館内見学
○地下2階書庫 
書架の空きは殆どなく、増床も難しい状況。
固定式の書架の他、集密書架(手動)もある。手動の方が使い勝手が良いと案内者も含め認識を共有。
貴重書庫は施錠された桐箱にて保管。内容は大阪という土地柄、引札などがある。
 ※引札の中には、堺所縁の与謝野晶子生家の駿河屋のものもある。
 ※引札は昔、商店が開店や大売出の案内のために作成したチラシのようなもの。
○地下1階書庫
空襲で焼け残った戦前の資料などを収納。分類はNDC以前の旧分類。
和装本は蓋が桐製の箱で保管。
BM「くすのき号」の駐車場と車両を見学(建物の構造上、地下1階と屋外駐車場がつながっている。)

○中2階
作業スペース、見計らいスペースなどがある。
発注は中央館だけでなく、14館分全ての業務をここで行っている。また、各館で収蔵分野の分担もしている。
書庫出納などはTRCに委託。

○2階閲覧室
新聞は五大紙の他にジャパンタイムスやデイリースポーツなどを収集、配架。
現在、NDC8版からNDC9版へ切替え作業中のため、2種類のラベルが混在。
展示コーナーも充実。この日は「博物館・美術館へ行こう」、「子育て支援コーナー」であった。
郷土資料コーナーに堺ゆかりの人々のコーナーがある。
特に、千利休と与謝野晶子は二枚看板である。他に安西冬衛等があげられる。
大仙古墳(伝仁徳天皇陵)も郷土のシンボル。百舌鳥・古市古墳群を世界遺産への動きを応援したい。
但し、大仙古墳関係の資料の出版が少ない。
別置の大型本は利用者が探しにくいという、どこの館でも共通の悩みである。
カウンターは「調査相談」と「貸出」の2つが隣り合わせで構成。

○1階ロビー
堺市子ども文庫連絡会主催で絵本作家松岡達英の「松岡達英の仕事展」が開催されていた。絵本などを展示紹介。

(2)電子書籍
○利用者登録
利用者カードを使って利用するため、利用者カードが作れる堺市在住・在勤、相互利用協定のある大阪市在住の人に限定。

○ログイン
まず、堺市立図書館のトップページから「電子図書館」をクリックする。
次にID、パスワードを入力すると、コンテンツを選択する画面に移動できる。

○貸出
読みたいコンテンツをクリックして、詳細画面から「借りる」ボタンを押すだけで貸出完了。借りる場合はもう一度クリックする。
借りた書籍はマイライブラリの資料一覧から確認・閲覧できる。また、同じ画面から貸出延長と返却も可能。貸出期限は2週間で、期限が過ぎると自動的に返却されるので延滞は起こらない。貸出冊数は3冊まで。

○コンテンツの紹介
「New Speed TOEIC」を例に紹介。
英語のテキスト本のため、英語の音声を聞く事も可能であるなど、マルチメディアな利用ができる。
練習問題用のマークシート画面もあり書込みも可能、採点もしてくれる。書込みは返却後、自動消去。
ページを捲る効果音も搭載。複写は出来ない。拡大も自由に出来る。

2 堺市立図書館の概況(説明:サービス担当主幹 岩本高幸氏)
(1)歴史
大正5(1916)年、大阪府内では現大阪府立中之島図書館に次いで2番目に開館。その後、宿院(堺市の地名)に移転。
昭和20(1945)年、空襲により焼失。蔵書は疎開や書庫棟が延焼を免れたことにより残る。
昭和46(1971)年、現在の大仙中町に新館開館。
昭和62(1987)年、全館をコンピュター化。
「大仙陵絵図」のように18世紀の資料も所蔵。

(2)図書館サービス
堺市は平成17(2005)年2月美原町と合併、平成18(2006)年政令指定都市に移行し7区制となる。
中央図書館、6区域館、5分館、2図書施設の14館とBMの駐車場所26ヶ所がサービスの拠点。
登録者数:320,773人、年間貸出冊数:4,612,499点、調査相談:86,705件、また22年度の予約件数の約2/3はweb上からのものであった。
パスファインダーの作成、子どもの読書推進活動、ボランティアの養成、郷土資料の充実などに取組んでいる。

(3)新サービスの展開
○ホームページ上での蔵書検索、予約システムの充実。
○新着図書情報の配信。
○レファレンスの充実。
○オンラインデータベースの構築。
○電子書籍の提供サービス。

(4)電子書籍提供サービスについて
○導入
導入当初の1月には、利用とともに、各地からの視察、問い合わせが相次いだが最近は件数も落ち着いてきている。
詳しい導入経過は「図書館雑誌 6月号」を参照されたい。
他にも、いろいろな紙面で取り上げられているが、正確に伝えられていないこともある。
千代田区立図書館に次いで2番目に導入。千代田区立のようにコンテンツを自館サーバーに置いていない。
システム設計を受注した業者が提案したシステムを導入したのであって、電子書籍に限定してシステムを調達したものではない。
調達したシステム全体のコストはわかるが、電子書籍の部分に限ってのコスト計算は出来ない。

○利用
OPACで紙媒体の図書と同じ様に検索が可能。
データはDNPのサーバーにある。システム的には、図書館は利用者がサーバーへ入るための承認を行う機関となっている。
コンテンツの数は1147タイトル。
利用件数は、1月:2829件・555人、2月:901件・112人、3月:820件・119人と2月以降件数が減っている。コンテンツが増えていないのが原因と思われる。
利用者の層は、10代:7.0%、20代:5.0%、30代:19.6%、40代:22.4%、50代:19.0%、60代:21.7%となっている。高齢層からの利用の問合せも多い。
今後はコンテンツの購入・充実と地域資料のアーカイブズの二本立てで事業を推進したい。

(5)質疑応答
問:紙媒体の図書に延滞がある場合は電子書籍の貸出は出来ないのか?
答:紙媒体の図書の場合は長期の延滞に限り貸出を止めている。また、延滞情報は電子書籍とは連携していない。

問:紙媒体と電子の図書の貸出冊数制限は別々なのか?
答:別々である。

問:米国では公貸権の関係で電子書籍を26回、貸出をすればデータを消去するという事例もある。堺市が使われているシステムの場合、同様の懸念などはあるのか?
答:こういった議論が出来る土俵に出版者がまだのっていないのが現状である。
  個人向けコンテンツの開発は進んでいるが、公共用のものは進んでいない。
  何回以上、貸出が出ればライセンスを追加購入するという考え方もある。
  携帯端末では利用出来ない上に、利用者登録も必要であり、図書館で電子書籍を提供することが、それほど出版者等の権益を損なうとは思えない。
  備品購入費で電子書籍を購入するという方法だけではなく、賃借費で年間契約する方法もあるかと思う。
  複本まで購入すると、コストはかなり割高になるので、コスト低減への話し合いの必要もある。


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