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学習会記録(第183回)


日時:2011年4月21日(木)
出席者:13名
内容:「京都府立図書館・総合資料館での1年目のしごと」
発表者:神山 貴子(京都府立図書館)、大瀧 徹也(京都府立総合資料館)

発表は、神山→大瀧の順にパワーポイントを使い、レジュメ内容をスクリーンに投影しながら進んだ。

☆神山 京都府立図書館での一年目の仕事 〜苦節うん年にしてようやく成れた正規司書とは!〜
■さいしょに
□新規採用職研修(前期)
 一週間ほど行政職に混ざって、京都府のことを勉強。
 半年は仮職員で、給与は半月分前払い制であることを伝えられた。京都府の政策(環境)にも触れる。職員としての心構え(コンプライアンス・裏金問題)、マナー研修(電話対応、名刺交換)などもあった。
 10〜40代とバラエティ豊かな同期。2010年は125名、高卒&社会人(樹木医とか)経験者採用。

■司書始動
□資料課閲覧担当に配属
 1Fカウンター(主)にて、貸出、返却、図書館カードの登録。京都に関するレファレンス(1Fの資料が京都と日本文学に関するものなので)。回答できない場合はB1Fへ行ってもらう。パスポート申請用紙の配布。
 B1Fカウンター(主)にて書庫出納、レファレンス(全般)、電話対応(レファレンス、貸出延長など)。
 1F、B1Fであれこれしたいという場合、閲覧担当が決定するため(主)とする。
 知事選があったため配属が決まるのは6月からだったので、分掌業務は仮配置のため担当なし。
 4、5月にやったことは、利用者への予約資料確保の連絡、4〜6類の選書(TRCが並べてくれる中から見計らい)。
 閲覧の仕事は他に、相互貸借の窓口、自動書庫の管理、遠隔地からの複写依頼受付、蔵書点検(主)、パスファインダー等のチラシ作成・管理。

■司書は見た
□京都府立図書館の組織
 資料課…閲覧担当→上述
     図書整理担当→1Fカウンター(従)、目録作成(TRCMARCのないとき)、装備、発注(Tooli)、寄贈図書の整理。
     振興担当→B1Fカウンター(従)、相互貸借(府内)、選書(振興用)、市町村図書館支援全般(学校へのセット貸出、研修の企画)。
     特定資料→後述
     (従)というのは決定権がない意味。
 総務課…企画調整係→2Fカウンター(従)、図書館イベント関係全般、システム関係全般(業者の窓口)、外部からの電話窓口(従、資料課は直接出ない)。
     庶務係→会計、人事関係。備品、建物管理。外部からの電話窓口(主)。

■司書?
□今年度から特定資料担当に配属
 2Fカウンター…インターネット、視聴覚資料等の利用受付。
        視聴覚資料、新聞に関するレファレンス。電話は受けるが、メールは閲覧担当。
 分掌業務…逐次刊行物購入(金銭に関わる事なので年度末は繁忙)、特定資料担当の窓口としてシステム更新に関すること。開架雑誌の管理(欠号の有無だけでなく何を配架するか)。
 その他の仕事…マイクロ、電子資料(DB・ROMの管理)、音声資料(カセット・CD)、映像資料(VHS・DVD・BD)の管理。
        ROMはシステム(PC)のVer.Upにともない使用不可に。今後は買わない方向で。
 不安…係内で司書採用は自分だけなので、いわゆる司書話が出来ない。司書力がなかなか上がらない。

■中休み
□新規採用職員研修(後期) システム更新時期と被る
 実習研修…滋賀県職員と合同。知事を招いて自分達の考えた事を発表。
 政策立案(の模擬)…行政職一環を見た
 介護福祉施設での研修…介護職に若い人多目。離職率高い。意外と濃い味付の食事。
            介護認定基準は、頻繁に変更になるため結構いい加減。高齢者のお世話の大変さ(我慢をしない)を実感。

■司書展望
□理想の図書館像
 図書館職員の「個にして全」…縦社会の感じだが、担当を超えても相談しあえる体制。窓口に立つ以上、利用者への対応は担当でなくても出来るように。
 同じ目線で話し合える同僚…同じ目標に向かい協力し合うことで仕事への意欲が沸く。
              職員一丸となることで、利用者及び職員の満足度向上につながる。

■終わりに
□2年目を迎えて
 新任者の登場…古参職員として教えるのが難しく、自分の勉強不足を実感。
        新人のやる気を受けて心機一転。
 抱負…自分に出来ることを頑張る(システム更新中に行われた蔵点による逐刊のデータの後始末)。
    少しずつでも自分の司書力が上がるように努力する(閲覧担当がファイリングしているレファレンス事例の再考)。


☆大瀧 京都府立図書館での一年目の仕事
■自己紹介 〜Self-introduction〜
□経歴
2005.03 京都市北区の大学を卒業。専門は教育人間学、心理学。劇団に所属。
2005.10 司書資格を取得
2006.04〜大学図書館のカウンター(閲覧担当)など。レファレンスカウンター。一時期他の大学で電子ジャーナルの契約(内容が濃い)。
2010.04〜京都府立総合資料館文献課京都資料担当

■総合資料館って? 〜What is Sogo-Shiryokan?〜
□名前を聞いたときの最初の印象として、(世界史は分かるが、日本史は苦手ゆえ)「埴輪と土偶…」というのが正直なところ。
 ホームページ(http://www.pref.kyoto.jp/shiryokan/aramasi.html)によると京都府立総合資料館は、
 「京都に関する資料等を総合的に収集し、保存し、展示して調査研究等一般の利用に供する」施設。
 初見としては美術系の資料が多いと感じた。大型図版が目に入ったが、京都の資料がどこかすぐには分からなかった。
 前の職場と人の出入の桁が2個違う(前職場>資料館)。一日で1万とか、大型ショッピングセンター並。書庫出納件数も少ない(100件なら多い方)。
□要するにどういうこと?
 名刺の裏に英語表記として Kyoto Prefectual Library and Archives
                   京都        図書館 と 公文書館
 総合資料館というニュアンスはないが、英語の方がしっくり来る。
 知り合いに説明するのがなかなか難しい(図書館なんだけど〜、といった感じ)。

■京都資料って何だ? 〜What is Kyoto materials?〜
□府立図書館と違って主題で担当が分かれる(京都、人文、官庁、行政文書、庶務)。
□担当は京都資料の中で「逐次刊行物(新聞・雑誌)」…略して「逐刊」という表現に戸惑った。
 逐次刊行物とは@同一タイトルで継続して刊行、A終期をさだめない、B巻号・通巻など刊行順序を示す表示がある。
□具体的には?
 受け入れ資料例…Leaf、月刊京都(白川書院)、京図ものがたり、動物園だより、おふたいむ、京都美術NewsLatter、京都医報、リビング京都、ASTEMNEWS、螺旋階段、KYOTO SANGA、文化財通信、総合資料館だよりなど。
 その他にも、京都で主に活動している俳句・短歌・詩歌の団体会報(20〜30)、郷土史会などが発行する会報、大学紀要、社報(大小関係なく)、宗報、フリーペーパー、ミニコミ誌などを見つけたら積極的に寄贈依頼し、受入れています。例え、利用がなくとも「資料館行けばある」というのを目指している。
 選書は現地調査で、遊びに行ったついでに。98%は寄贈に頼っている。購入は1年でまだ3冊、京都資料で受入れている逐刊は約3000タイトル(継続中止含む)、その中で購入は6タイトルぐらい。

■レファレンスをする 〜Reference Service〜
□資料館ではカウンターなら職員・嘱託全員で対応。窓口以外(電話なら)では、受付た人が担当。主題ごとに受けるのが望ましいが、現状ではほぼ全て私が受けている。
□どんなレファレンスがあるの?
 @東寺(教王護国寺)にある五重塔の図面を見たい。
   http://crd.ndl.go.jp/GENERAL/servlet/detail.reference?id=1000070143
   五重塔関係は毎月ある。現存、消失関係なく大人気。最近では、同志社の裏にある相国寺に秀吉登場以前にあったとされる、百数十メートルあった七重の大塔の図面の閲覧希望など。
   五重塔関係の調査マニュアルを作りたい。日本建築史基礎資料集成に立面図、断面図は大概載ってる。
 A京都の鴨川で友禅流しが行われていた時期を知りたい。
   http://crd.ndl.go.jp/GENERAL/servlet/detail.reference?id=1000074226
   伝統工芸関係も多い。
 B万里小路白河道という地名が大正15年にあったが、現在ではどの辺りになるのか知りたい。
   http://crd.ndl.go.jp/GENERAL/servlet/detail.reference?id=1000072351
   地名に関するレファレンスも多い。地名辞典で解決しないものも多い。
 C小林古径の作品の中で、墨で描かれたフランス人形の絵を掲載している資料をみたい。
   http://crd.ndl.go.jp/GENERAL/servlet/detail.reference?id=1000074227
   かなりアバウトに「誰々の○○?□□?△△?といった作品が見たい」というレファレンスは多い。
 資料館で受けたレファレンスは、国立国会図書館のレファレンス共同DBにできるだけUP。
 大学図書館でもレファレンスはやっていたが、日本の古い歴史を調査するというのは資料館に来てから。
 主任さんをはじめ、沢山の方に振られたことにより、1年でかなり成長したと思う。しかし、京都の歴史は奥が深いので大変。
■その他のおしごと 〜My other job〜
□相互貸借
 図書館資料取寄せサービス…府内の公共図書館&国立国会図書館だけ。
 図書館間資料貸出サービス…府内の公共図書館
 京都府図書館総合目録ネットワーク「K-Libnet(ケーリブネット)」
□展示委員 資料の選出から飾りつけ(キャプション作成)まで
 企画展「語り継がれる幕末・維新の京都」2010年7月24〜8月22日
 展示会「古典籍へようこそ 〜京都新聞連載の古典籍と細川幽斎の文芸〜」2010年10月30日〜11月28日
 総合資料館収蔵品展 2011年2月26日〜3月27日
□展示の関連でこんなこともしました
 第26回国民文化祭・京都2011のマスコットキャラクター「まゆまろ」の中の人に(2011年3月13日)。

■1年間の感想など(気が付けば1年経過)
レファレンスをする、した。
美術書充実→その分レファレンスも多い。
1年しか居ないのに「もう何年も前から居る様」だと言われる。上手く馴染めていると思う。

■最後に・・・
第26回国民文化祭・京都2011のPR隊長「まゆまろ」をよろしく!
キックやパンチをすると心が折れるのでヤメてネ。
最近ケーキにもなりました。

質疑応答
Q01:最後の写真はケーキ?
A01:大瀧 東急ホテルレストラン「kazahana」で580円/個で販売されているケーキ。紫芋で巻いてある。
   http://kokubunsai-kyoto2011.jp/character/product/pro_01.html 画像は正直(C)に引っかかる。
Q02:1年経って「したらいいこと」は?
A02:大瀧 相互貸借をドンドンやる。ただし、主任&課長の返事はよくない。相互協力委員会での風当たりが…。貸せないときは「レファレンスで対応します!」とお茶を濁す状態。
   神山 チラシにもあるが2F担当で導入したDBの利用促進を!広報不足もあるが、使用が限定的。
Q03:DBの種類は?
A03:神山 チラシの方を参照(以下、チラシより一部抜粋)。大学図書館ならもっと利用がありそうだけど…。一般の方は存在自体を知らないので、レファレンスと絡めて現在周知努力中。
   新聞記事を探す→聞蔵Uビジュアル(朝日新聞)、ヨミダス歴史観(読売新聞)、日経テレコン21(日本経済新聞)、毎日Newsパック(毎日新聞)、The Sankei Archives(産経新聞)。
   雑誌記事を探す→MAGAZINEPLUS、日経BP記事検索サービス。
   科学技術関係の文献情報→JDreamU(科学技術振興機構)
   法令・判例関係→Lexis Nexis JP、官報情報検索サービス。
   音楽配信サービス→ナクソス・ミュージックライブラリー。
Q04:採用試験時点で「図書館司書」として採用だと思って…、ギャップは?
A04:大瀧 正直府立図書館勤務かなと。ただ、レファレンス経験があったので、面接でレファレンス希望といったところ資料館お勧めと言われたので、資料館もありと。
Q05:ナクソス・ミュージックライブラリーはリモートアクセスは可能?
A05:将来的にも難しい。契約内容的にツライ。
Q06:レファレンスにおいて、回答への当たりの付け方は?
A06:大瀧 ジャンルごとにある王道レファレンスブック(京都叢書、日外アソシエートなど)から攻める。前の職場ではDBが豊富だったのでPC上で出来るだけ済ませていた。資料館に来てレファレンスブックを多様。基本、20〜30分で回答しなければならないので、常時把握するよう努めている。
Q07:図書館はカウンターが分かれていることを今日の発表で再認識したが、タライ回しで困ったことは?
A07:2FからB1Fへ移動。使い勝手は悪い(カラーコピーがB1Fにしかないなど)。引継ぎをしないので、同じ事を聞く、言わされる。
Q08:資料館から図書館への紹介するが、「図書館のどこにあるか」までは伝えていない。辿り着けているのか不安。
A08:利用者が、1Fカウンターで聞いてくれれば案内可能。
Q09:資料館で「府立図書館にある」と紹介はするが、利用者が府立図書館に訪れるまで貸出されてしまわないか不安。
A09:神山 電話連絡してくれれば、即取置きします。
Q10:相互貸借で断った資料は?
A10:大瀧 最近だとの過去北(舞鶴など)で起きた地震関係、津波関係。北の方が資料館に来るのは難しいだろうから、北と南で利用制限を変えてもいいと思う。
Q11:そういった資料は複写可能?対個人でも?対図書館では?
A11:可能。資料館は対個人の場合、前払いと決まっているのでやりやすい。対図書館は独自の支払い方法があるのでやや難しい。
Q12:長期的なプランでの将来像は?
A12:大瀧 資料館に居るとして、若年層の来館増を。蔵書構成的にも若者向け資料を。司書としては、京都の歴史を勉強したい(例えば京都検定2級合格)。
   神山 レファレンス&司書力UPを目指したい。
Q13:分野で担当と言っていたが、窓口での受付は担当に振るのか?
A13:大瀧 基本主題担当だが、来館者に対しては受けた人が。電話、メール、FAXは基本私に来る。
Q14:ということは、実質オールマイティ?
A14:大瀧 どうしても主題担当じゃないと分からないものを除けば、軽易なものは私が処理。
Q15:府立図書館ではレファレンス内容をファイリングしているが、資料館では?
A15:同様に記録を採って、一ヶ月ごとにまとめて供覧に回している。
Q16:基本回ってくる年間レファレンス受付件数は?
A16:大瀧 多分、二桁後半。多いときは一日3〜4件受けることもある。ひょっとしたら100件超えてるかも。
Q17:資料館で受けるレファレンスの内、全体の何割を処理しているか?
A17:殆ど。ただ、レファレンスの定義にもよるが、内線が目の前にあるため、電話受付は約8割回ってくる。正直電話は苦手だが、目の前にある以上対応せざるを得ない。
Q18:資料館が受けるような内容の場合、1件1件の時間がかかるのではないか?何日もかけて回答するのか?
A18:大瀧 回答は基本その日の内に。
   参考…関西館では回答に二週間の猶予を貰う。形式が決まっており、決済を貰うのに時間がかかる。
Q19:一番の失敗は?
A19:神山 起案文章を全員に回し切っていないのに決済されてしまい、後で判子を貰いにまわったこと。
   大瀧 正直自分では分からない、覚えてない、気付いていない?大きな谷は無かったと思う。対利用者ではないはず。対身内はわからない。
Q20:一番のカルチャーショックは?
A20:大瀧 電話、口頭だと要らないのに、メールで来た質問をメールで回答するのに判子を集めないといけない。質問メール、回答メールを打ち出さなければいけないので、時間、紙が無駄。なので、電話で質問が来た場合は、返事は電話でよいかと聞いてしまうようになった。
   参考…「公務員的な対応」ではあるが、過程を記録し残すことに意義がある。電話=口頭のみで処理した場合、録音されていたら困る。一応、レファレンス処理票という形では残す。
   神山 同じく逐刊担当だが、未だにビジブル=紙媒体で管理していること。システム更新の際、思い切って改善したかった。
Q21:決済を得る過程中にダメ出しは?
A21:大瀧 即座に出る。ただし、直属の上司に通れば、課長はOK。形式的にダメとか(見つからないとしても、「見つからなかった」とは書けない。ぼかした表現に)。
      チェック機能としては良いが、判子の必要性は疑問。目を通してもらうぐらいで良いのではなかろうか。
   参考…判子を押すことで、押した時点でアーカイブになるという考え方もある。資料館は文書館機能もあるので判子を集めるのは必要なことではなかろうか。
Q22:自分が上司なら、キッチリみる?上記希望のように軽く見るに留める?
A22:大瀧 部下次第。最初の何回かで判断し、部下のために良い方法を採る。
Q23:文書の保存期間は?
A23:大瀧 2〜5年。レファレンス処理票などは無期限だが不要なものは処分。ただし、統計に関係のあるものは残している(開館時間≒開館日数についての問合わせ)。判子のあるものは捨てられない。
      研修で折角習った電子決済システムを使っていない=紙で回す。簿冊には綴じるがシステムは通さない。第二のカルチャーショックでもある。
Q24:資料館、行政職はどのくらい?
A24:大瀧 司書職の方が多い。一般の図書館よりは資格保有者は多いと思う。
Q25:逆に行政だけだと不安というのは?
A25:神山 目録・書誌に関する説明がスムーズに出来ない。
Q26:行政職から来た人のモチーベーションは?
A26:若林 時代が違った。そもそも司書枠が無かった。行政職採用後、司書資格を取るというタイプは少数派。
      取り方にも拠るが、保有者なら資格を生かせるという点でモチベーションは高いのではなかろうか。
      また、教育関係者が回ってくる事も多いらしいが、その人たちのモチベーションに興味がある。
Q27:行政職が多いなら、行政職向けの研修はないのか?
A27:神山 幹事役的な人がいないのでない。
   参考…ぶっつけ本番系(習うより慣れろ)。全国規模の研修には参加。
   大瀧 サービス内容の紹介というレベルでの館内巡回ぐらい。学習会的なものはない。出張・研修には行かされた。






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