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学習会記録(第182回)


日時:2011年3月17日(木)
出席者:17名
内容:「SKY Girls’Talk 2nd」
発表者:三本木 彩(京都大学文学研究科)、梶谷 春佳(京都大学数理解析研究所)、八木澤 ちひろ(京都大学人文科学研究所)

京都大学図書館1年目の三人による、過去と現在、未来への抱負を語ってもらった。


最初に
SKYというのは、某先輩が同期3人の頭文字を取って付けてくださった愛称です。

S(=三本木)の過去
・大学を卒業後、書店に就職し、2009年11月に京都大学に採用。
書店員のあれこれ
・人文書(歴史)担当+哲学+宗教+精神世界
・カウンター業務から棚管理まで、コーナー作りやPOP作成など販促活動
*参考:ku-librarians 勉強会第123回(2010.6.21)図書館と書店の間〜書店勤務経験者と語る〜http://kulibrarians.g.hatena.ne.jp/kulibrarians/20100621/1290000062
図書館と書店の違い
・絶版だと何もできない。非売品や直販、市場に出回らないものは置きにくい。
・電話応対が多い。
・面陳、複数ヶ所での展開が可能。付録や帯や表紙もある。
・(大学)図書館には少ない分野が豊富の場合も。:例として学習参考書、精神世界、一般的雑誌、写真集、素材集。逆ももちろんある。

K(=梶谷)の過去
・京都大学文学部哲学基礎文化学系美学美術史学専修で学び、2010年4月より数理解析研究所図書掛に勤務
Kの美術史な日々
・2年間美学美術史学研究室に所属し、2回のプレゼンを経て、卒業論文を提出。
・通常の授業のほか、展覧会や寺社の見学もあった。
・卒業論文のテーマ:ドイツ・ロマン主義の風景画家C.D.フリードリヒ(Caspar David Friedrich,1774-1840)が1822年に描いた対作品の制作背景や解釈に関する考察。
どのような文献をあたるか?
・図書(学術書や参考図書、カタログ・レゾネ)、展覧会カタログ、雑誌論文等。展覧会カタログは重要な研究資料だが、日本の図録は灰色文献に近い 展覧会カタログ等の入手方法
・ミュージアムショップ、美術館の図書室
・ALC美術図書館横断検索:関東の7館の美術館・博物館の横断検索。国内外展覧会カタログ所蔵数は合計約30万冊(http://alc.opac.jp/)
・アートカタログ・ライブラリー:1996年に開館した展覧会カタログ専門図書館。2004年に所蔵資料は国立新美術館のアートライブラリーに引き継がれている。
・『展覧会カタログ総覧』:ALC7館の展覧会カタログ61300点を分類別に配列し、書誌情報のほか、開催年や会期、主催者、所蔵館を掲載している。巻末には人名・事項名索引などもある。
・ミュンヘン中央美術史研究所のドキュメント・デリバリー・サービス:OPACで図書も論文も検索可能。複写物郵送or E-mail/PDFを選べる(http://www.zikg.eu/)
この2年間に思ったこと
・研究者の方々・研究室に蓄積されている、各専門分野の情報収集スキル・ノウハウを集めて、図書館サービスの中で全体に還元できたら…
・研究者/図書館員それぞれの知識・ノウハウをうまく共有できたら…

Y(=八木澤)の過去
・お茶の水女子大学を卒業後、2010年4月から京都大学人文科学研究所図書掛勤務
LiSA(お茶大図書館の学生協働活動:http://ochadailisa.blog32.fc2.com/)
・職員からのアイデアで2007年から開始
・仕事は修理・装備、書架整理、カウンターなど人が足りていないところを手伝う。
・最初は受動的だったが、そのうちに能動的に活動するようになった。インターンをずっと続けていたような感じ。
LiSAに関わるなかで、思ったこと。
・図書館が身近になり、職員さんのバックアップが強力で、自由にやらせてもらえたところがよかった。
・今、職員として働いて思ったことは、学生の声が届きやすく、自分の仕事にフィードバックできる。
・その反面、管理が大変だっただろうとか資金はどこから出てきたのかが疑問に思えている。

現在

京都大学
・10の学部と17の研究科の大学院で構成され、構成人員は学生約22,000人、教員2,800人、職員が2,500人。うち図書系職員は109人(http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/profile/intro/data/index.htm/)
京都大学の図書館
・附属図書館のほかに50余の部局図書館・室がある。
・総合的・合理的な全学協調体制として、平成17年4月に京都大学図書館機構が発足。
・特徴:京都大学学術情報リポジトリKURENAI、学内デリバリーサービス、学習室24
・全学の蔵書数は文学研究科が102万冊と一番多く、次に附属図書館の85万冊となっている。
・『京都大学図書館機構概要2010』(http://www.kulib.kyoto-u.ac.jp/modules/about/index.php?content_id=18)

Sの現在

京都大学文学研究科図書館(http://www.bun.kyoto-u.ac.jp/lib/)
・面積3,326u(地下2階)、閲覧席108席
・蔵書:和書62.3万冊、洋書40.1万冊、雑誌8800タイトル
・特殊文庫:82,000冊(約30ある個人名を冠した文庫)

文学研究科職員のあれこれ
・2009.11文学研究科整理掛配属され、洋書受入担当→2010.4和書受入担当
・整理掛人員は掛長・和書目録4名・洋書目録3名・収書4名

文学部の受入業務
・職員は選書はせず、全て教員が選書。ほとんどが購入後に持ってくる形式。
・専修ごとの受入:34の専修ごとに各予算で購入し、それぞれに独自の分類方法で配架。(元々、文・哲・史の3つの図書室に分かれていた経緯から)
・重複が多い:重複本を受け入れるかどうかは教員が決定している。

購入手続き
・購入手続きの流れも専修毎に異なる:納品書籍を先生が持参したり、先生のリストに従い受入で発注したり。
・図書の窓口も専修毎:個々の先生、図書担当の先生、院生中心の図書担当等
・新しいプロジェクトが始まると新しい予算で購入:予算によって手続きも違う

文学部の特徴
・34の専修毎に独自の分類方法で配架
・多言語(英・仏・独・西・伊・露・ポーランド語・ペルシャ語・チベット語・突厥語・彝語)
・目録の言語にあわせて、CJK以外は全て洋書扱い。
・和綴じも多い。特殊文庫も含め貸出可能。

その他の業務
・全学共通科目『情報探索入門』:1998年開講の学術情報リテラシー科目。教員の行なう講義と図書館員がサポートする演習とで構成。課題作成や採点も行う。
・図書館機構報「静脩」編集小委員会:1964年から年間3〜4冊発行→原稿執筆を依頼できる教員とのつながり

Kの現在

数理解析研究所(http://www.kurims.kyoto-u.ac.jp/ja/)
・Research Institute for Mathematical Sciences、略称RIMS
・数理解析に関する総合的研究を行う全国共同利用研究所
・教員・職員合わせて66人

RIMS Library-利用案内
・開室時間:平日9:00-17:00
・所内・学内者はもちろん、研究集会等に参加の学外の方も来室
・所員にはマニュアル貸出(カード貸出)も行う

RIMS Library-蔵書
・数学・応用数学・計算機科学・理論物理学等の文献を幅広く収集
・レクチャーノート類など、一般に入手の困難な資料も!
・プレプリントはRIMS-DB(http://edb.kulib.kyoto-u.ac.jp/rims/)で検索可能
・図書89,435 冊・雑誌1,538種。雑誌も紙媒体を多数所蔵(洋書の割合が圧倒的に多い)

RIMS Library -職員体制
・職員5名で図書の受け入れ、整理、ILL業務、学術コンテンツ登録システムへのデータ入力、雑誌製本を行う。
※学術コンテンツ登録システムとは…国内大学等発行の研究紀要や学協会発行の学会誌等を、CiNiiで公開するためのシステム(http://www.nii.ac.jp/nels/archive/faq.html#q1)

RIMS Library -雑誌製本
・1年に約1,500冊分(今年度はプレプリント5冊分を含む1,333冊)内訳は、洋雑誌:和雑誌=9:1
・利点:保存性の向上、破損・散逸防止、書架上で探しやすくなる
・欠点:ノドの余白が狭くなる、コピーが取りにくい、製本中は利用できない
・気がかりなこと:綴じ方(一部が無線綴じになっている)、保存状況(書架の都合で背の高いものは横置き)、電子ジャーナルの問題点(文字のかすれ/不鮮明な図表など)
参考:斉藤稚穂.東京薬科大学における購読雑誌の大幅な電子化と製本雑誌の一部廃棄について(薬学図書館, 55(3), p.236-242, 2010)

Yの現在

京都大学人文科学研究所(http://www.zinbun.kyoto-u.ac.jp/)
・1939年に設立された同名の研究所(旧人文)と、東方文化研究所及び西洋文化研究所が合体して、1949年に発足した研究機関。
・3研究所のそれまでの業績を継承しつつ、世界文化に関する人文科学の総合研究を行うことを、その目的としている。
・蔵書数:和書14万冊、洋書8万冊、中国書34万冊
・人文部蔵書…明治維新から第2次世界大戦までの社会や18〜19世紀の仏文などが多い
・東方部蔵書…漢籍主流。叢書が完備され、旧中国関係史料では世界有数の収蔵量
・和洋書の収書を担当。掛内の収書担当は4人(和洋図書、和洋雑誌、中国書、中国雑誌)

図書室の特徴
・研究者向け図書室:内外研究者・院生が多い。外国人研究者も
・先生方:図書検収などで話をする機会は比較的多い。仕事のために、研究室にお邪魔することもある。
・目下の希望:人文部と東方部の蔵書を合体させたい。利用者用コピー機、返却ポストが欲しい。学部生も入庫できるようにしたい。
・専門にちかいところにいる:楽しいが、自分の経験が役立っている自信はない

未来

Sのこれから
・1年後:参加する(各1回は質問・発言できたらな)興味のある分野を持つ→幅広く見るのも大切。
・2年後:勉強する

Kのこれから
・来年度は担当が変わるが、この1年間の経験・反省を次に繋げたい。
・得意分野を持つ:学問分野では、美術史・(できれば)数学、図書館業務では、資料保存、ILL、レファレンス等を重点的に
・1日1日を大切に、頼ってもらえる図書館員を目指して。

Yのこれから
・なんらかの専門スキルを持つ図書館員になりたい:なんのスキルを持ちたいのか?
・LiSAの経験を活かして、学生協働でできることを模索:ただ人文研には学生あんまりこない
・なにかひとつでも業務を改善したい。

質疑応答
Q:購入の処理方法についてはどこから情報を得ているのか?
A:先生方から相談され、その時初めて知ることが多い。実際の処理は会計に確認しているがすべて後手に回っている。係内では情報共有をしている。
Q:感想に近いがいくつか。三本木さんの話を聞いて、書店ではブックコンシェルジェの存在があるが、図書館のフロアワークと似ているのではないか。梶谷さんの話では、カタログについての所蔵について、岡崎にはカタログ専門の古書店がある。八木澤さんの話では、東京女子大でも同じような図書館活動を展開していると聞いている。このような活動は女子大であるからであろうか?
A:それは女子大だからではなく、学生の気質や人数の少ない小規模校ならではではないだろうか。
Q:文学研究科図書館の所で分類が専修ごとに違うとあったが、それを統合しようという動きはなかったのか?
A;図書館が統合した時(94年ごろ)にもそのような動きがあったが、統合できなかった。
学生から見ると、他の専修の図書はあまり見に行かないし、自分の学科の棚だけでおおよそ必要な資料がそろうのでわかりやすいのではないか。
Q:人文研の電子リソースはどのように認識されているのか?
A:電子化もしているし、e-bookを購入したいという先生からの要望もあるが、圧倒的に紙の本での収集の要望が多い。本以外ではかるたを最近受け入れた。






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