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学習会記録(第173回)


日時:2010年5月20日(木)
参加者:14名
内容:「北摂アーカイブスについて」
豊中市と箕面市で運営している、北摂アーカイブスについての設立までの経緯と内容についての発表があった。

1.住民参加によるウィキ型地域情報データベース構築に関する調査研究について
北摂アーカイブスの前にLASDEC(地方自治情報センター)の研究費の補助を得て、2008年に研究した。
・豊中市、吹田市、箕面市、三鷹市、池田市ほか5つの市の共同研究
・住民代表として豊中市、箕面市の住民ネットワークの代表に入ってもらう。
・市民の方が入っているので、会議は白熱し、意見も多かった。協働という意識が低いと指摘をうけた。
研究の動機
・カウンターで地域のことを聞かれると、期待をもってきてくれているのに資料や情報を提供できないことが多かった。
・年配の方の話を聞くと、いろいろ知っている。ただし口頭の伝承だけで、その知識も残らないのでなんとか記録に残していきたい。
地域情報について
・アンケートの結果、住民の求めている地域情報とは安全・安心等が多いが地域の歴史等の意見もあった。
・注目点はインターネットの利用状況についての回答で、1,2位はネットショッピングや見ているだけだが、SNSやブログの書き込みが幅広い年代に満遍なく多い。
・インターネットでの情報発信について、匿名がよいという人は2割程度、ハンドルネームやID制が良いという意見が多かった。
・ウィキは体系的、時系列的のどちらの管理も得意なので、住民参加型の情報データベースに適していると考えた。
構築に対しての課題
・情報の限定、かたりや信憑性、セキュリティや事故発生時の対応、著作権や権利侵害についての対応
・持続性:住民と一緒に運営するので、行政と住民の役割分担をしっかり決めておく。
・住民には計画の段階から入ってもらい、住民の目線で構築していかないとこのようなデータベースは成り立たない。
・Webは基本セルフサービス、みんなが面白いと思わないとうまくいかない。真に要求している情報を出さないといけない。
報告書の結論
・地域情報をリアルタイムに過去未来にわたって蓄積し、伝承していく。
・地域情報をいつでもどこでも自ら検索。発信し、地域とのコミュニケーションの活性化、住民の参加により地元を再発見し、魅力を創造し、地域力を創造していく。
・行政が保有していない情報を収集・発信していくので、無限の可能性がある。

2.システムリプレースについて
・調査研究時、システムリプレースの担当だったため、研究成果をリプレースに反映させてはどうかとの助言があった。
・システムのコンセプト:つなぐ(人と人、人と資料、人と情報、人と地域)
・良いシステムを作るため、プロポーザル方式を採用した。
・自ら仕様書を作成したため、図書館業務を評価することができた。この経験から今のアーカイブスを構築しようと思った。
・ベンダーには自由な提案をしてもらい、そのシステムの可能性の部分を重視して選んだ。

3.北摂アーカイブス
・2008年3月にリプレース後、たまたま文部科学省のHPに「図書館・博物館における地域の知の拠点推進事業」があるのを見つけ、2次募集に応募したら採用された。
・事業は前年調査研究に参加した豊中市、箕面市、住民、学識経験者による実行委員会方式となった。理想は住民が委員長となる運営主体にしたかったが、補助金の手続きや期間の短いことから図書館長を委員長として運営することになった。
・委員会では、写真の収集範囲、写真・ボランティア等の募集方法、利用規約の策定、HPのデザインについて話し合った。
・一番重要視したのは、アーカイブスの利用規約について。これをきちんと制定しないとアーカイブスは著作権侵害や訴えられたときにうまく対応できず、運営しにくい。
・このアーカイブスの規約で一番重要なのは第4条ではないか。ほかに6条、12条は大事と思います。この規約にあるように自分たちの責任の範囲を明確にしないと運営はできない。
地域フォトエディター
・ボランティアという用語ではなく、もう少し違う単語を使ってほしいとの要望があった。
・今回の事業では写真に限定して公開したのでこのような用語になった。
・集まるかどうか不安だったが、豊中市で16人の申し込みがあった。
・応募者にはまずスキルアップ講座として必要な知識(HP作成やデジタル写真の取り扱い、セキュリティ方法)を習得してもらう。
・いろいろなITスキルのレベルの方がいてそれを埋めながらの作業となったが、皆さん思いは強く持っていたのでうまくいくという確信があった。
資料の収集
・市内の学校、民間企業にチラシを配布。図書館でも配布して市民からの募集を行った。
・市内の高校からは協力的に提供してもらった。私立高校の中には倉庫の中に入って写真を探させてもらった高校もある。
・市民からは百枚弱の写真提供があった。最終的に豊中市で1800枚、箕面市で1200枚集まった。箕面市は多くが市の広報からの提供だった。
・2次利用について:スムーズに問い合わせしなくても利用できるようにしたかった。市民には使えるか使えないかがわかればいいのではないかと思い、もっと細かい制限をすべきという考えもあるが、情報が使えるか使えないか、使う場合にもこの条件で使うようにということにした。
HPの製作について
・最初はシンプルなページレイアウトだったが、エディターさんの熱意でずいぶんとよくなった。
・ベンダーにはユーザーマニュアルをオンライン上に出して、このシステムでできることをすべて書いておいてほしいと一点だけ要求した。
・ユーザーの区分は細かく制限をしている。
・将来的には公開した写真にコメントを記入できるようにしていきたいが、庁内からはどういう書き込みがあるのかわからないといわれている。これをどのようにして提供できるのかを考えている。
・この機能が提供されて、本当の地域の辞典になると思う。
・豊中市の移動図書館が60周年を迎えたので特設サイトも作り、古い写真等を公開している。
今後の課題
・写真の収集について、ほとんどの写真が団体からで市民からの提供はほとんどなかった。今後の募集をどうしていくのか。自分たちの足で収集していくしかないとの意見もある。
・写真のメタデータについて:一つの試みとして撮った場所の郵便番号を入れている。自分の住んでいる町の写真を探すときに検索のキーになるのではないか。今後どのようなデータを登録すると良いのかを考えないといけない。
・情報の信憑性について:今回公開した写真について、違う場所の写真だとの指摘が一件あった。
・このような指摘があったのは見てくれている証拠と考え、初期にこのような経験ができよかった。
今後の予定
・今年度は豊中市の単独事業になった。今後は市民の方が中心になって図書館は裏方になって進めて生きたい。
・実際の写真展をやってみたいと思っている。広報の結果実際に展示をしていると思っている人もいるので、実績つくりも兼ねてインパクトのあることをしたい。
・小学校41校の校区の写真は最低1枚は公開したい。
まとめ
・地域の情報センターの具体的なイメージは中々なかったが、この事業を通じて地域に必要とされる図書館になって行くのではと思う。地域に必要となる図書館のために今後もこのアーカイブスを育てて生きたい。

Q&A

Q:豊中市でやっている市史編纂事業について、編纂室でも古い写真を集めていたと思うが、そちらの事業との連携はしたのか?
A:市史編纂室が今年の3月で閉室となった。昨年提供の依頼はしたが閉室作業があるので連携について当該年度は遠慮したいとのことだった。今年度は協力してもらいたいと考えている。ただ庁内では誰が撮ったかわからない写真が多く、公開する際の責任の所在がネックになっている。利用規約で解決していきたいが、公開してから間違いを指摘されたら公開を取り下げたらいいという意見もある。公開して所有者を問い合わせるようにしても良いのではないか。

Q:公文書として管理されているものの中にある写真の収集は考えているのか?
A:相手次第であるが、可能性はあると思う。個人的には収集・公開していきたい。

Q:利用規約4条について実際にこの規約があってよかったという事例はあるのか?
A:一度投稿写真を持参され、どうしても出してほしいとの要望があったが、この4条のことを念押し、納得してもらった。

Q:今後の展開について、写真のほかにどのような資料を公開していこうと考えているのか?
A:まだ決まっていないが、やはり動画になるのではないか。個人的には音声を公開したい。市のサイトは音声対応になっているので、それを利用できないかと考えている。すでに地域のお話ボランティアで民話の語りをしている人から録音したもの資料として上げていきたいという声は聞いている。

Q:写真の募集は今でも募集しているのか。
A:今も継続している。しかし、HPでも募集してみたが、問い合わせはまったくなく、アクセス記録もなかった。プレオープン時にアンケート調査し、協力できる写真を持っているか聞いたところ9割の人が持っていないとの回答だった。持っているところは限られていると実感した。

Q:箕面市の役割はどうだったのか
A:箕面市は、昨年度システムリプレースを控えており、活動開始が遅れた。箕面市のボランティアの募集や写真のデジタル化は箕面市の図書館でしてもらった。今年は豊中市の単独事業なので箕面市のボランティアさんの活動について問題になったが、北摂アーカイブスという名称なので、豊中市のボランティアの方と連携しながら箕面で活動してもらうこととした。




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