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学習会記録(第166回)

日時:2009年7月16日(木)
出席者:7名
内容:「MLA年次大会でのポスター発表報告」
発表者:山下ユミ(京都府立医科大学附属図書館)

5/15〜20にホノルルで開催されたMLA年次総会に参加し、ポスター発表を行った報告がされた。

MLA年次総会とは
・MLA(Medical Library Association:米国医学図書館協会)は1898年設立された。参考までにJMLA(日本医学図書館協会)は1927年、JLA(日本図書館協会)は1892年設立
・年間予算は300万ドル(約3億円)
・1898年以来100年以上にわたりほぼ毎年行われている。
・現在では2,000人が参加する大規模な大会になっている。
・今年はハワイコンベンションセンターが会場で、第2会場はヒルトンホテルであった。
・今年は新型インフルエンザが流行っていて、参加を見合わせた人もいた。

外から見た年次総会
・地元の新聞、Pacific Business Newsの記事から(http://www.bizjournals.com/pacific/stories/2009/05/11/daily27.html
・この総会には2,300人が参加し、18,000室のホテルの部屋が予約された。
・1,100万ドルの経済効果と110万ドルの税収(州税)があった。

登録方法
・WebフォームまたはFAXで申し込み
・登録料は200〜700ドル

総会の様子
・今回のテーマは「ifusion」。「i」は「information」(情報)、「innovative」(革新的)、「individual」(個々の)の頭文字をとっている。

全体講演(Plenary Session)
・McGovern Lecture
  Adam Boswoth:Google healthというシステムを作った技術者、ヘルスケアシステムの未来を語る
・Janet Doe Lecture(国立医学図書館の有名な館長の名を冠した賞を受賞した人の講演)
  Michael Homan:1969 年から現在までの医学図書館を語る

分科会(Section Programs)
・Cancer Librarians、Educational Media and Technologies、Federal Libraries History of the Health Sciences、Hospital Librariesなど7〜9グループに分かれる分科会が期間中4回開催
・一番人気があった分科会は「Top Technical TrendsV」で300人以上参加していた。
・今回の総会では無線LAN(有料)が設置され、施設の中でネットに接続できた。

日本セッションでの発表内容
・医学中央雑誌について:医学中央雑誌刊行会 生崎実氏
・日本の病院図書館での患者情報サービスについて:東邦大学 牛沢典子氏
・日本の医学図書館での認定資格について:杏林大学 諏訪部直子氏
・日本の医学情報スペシャリストの教育について:国立保健医療科学院 緒方裕光氏
・日本セッションでの質問(一部)
JMLAの機構や図書館と医師との連携、保健制度についての質問があった。

MLAでの継続教育コース
・年次総会はスキルアップの場所でもあり、今回は24のコースが用意されていた。
・交渉術を教えるコース、図書館でのリーダーとしてスキルアップを目指すコース、患者向けのがん情報の探し方を教えてくれるコース、オンラインチュートリアルの作り方を習得するコース(実際に作成)、調査研究やEBM(Evidence-Based Medicine)についてのコースなど。
・発表者は調査研究やEBMについてのコースに参加した。

参加したコースの内容
・医学文献を理解する:基礎編
 EBMでは有名な人物が講師であり、多くのディスカッションがあった。
・医学文献を理解する:応用編
・効果的な調査デザイン

ポスターセッション(研究内容をポスターにまとめて展示する発表形式)
・海外からのポスターセッション(国際枠)が募集されていたので、それに応募した。
・通常のポスター148、国際ポスターが12、最新(late-breaking)ポスターが33で、全体では198のポスターセッション
・日本からは5つのポスターが発表された
 日本からのポスターセッション
  1. Mami Matsuda: Web-accessible Medical Literature Database Use of Japanese Health Care Professionals: Analysis Based on Log Information of Ichu-Shi Web
  2. Yukiko Sakai: How They “Change”: Health Information Consumers in Japan
  3. Harumi Oikawa: What Do Patients Really Want? A Survey of Users of a Learning Center in a Japanese Hospital
  4. Yumi Yamashita: Exploring the Information Needs in Japanese Medical University Library(発表者のポスターセッション)
  5. Shinichi Abe: Small Group Learning Course of Medical Terminology with Medical Subject Headings
・最近はデジタルポスターになっていて、一部はインターネットで事前に見ることができる。

ルアウ(Luau)
・最後の夜にはパーティーが開催され、ハワイの野外パーティー、ルアウの様式で行なわれた。

新しい技術
・Wiki:MLA'09もWikiを開設していた。
・Flickr:写真を共有するページで、これもMLA用のサイトがあった。
・Twitter:1行ブログのような物で、今回初めて使用された。
・blog:参加したプログラムの感想等を書く。オフィシャルブロガーになると認定資格取得時のポイントとして認められる。

図書館の見学
・ハワイ大学医学図書館:4年前に移転した。最近はe-book化が進んでいる。
・ハワイ州立図書館
・ハワイパシフィック大学図書館
・ハワイ医学センター
・ストラウブ病院図書室

おわりに
英語がわからない人でもぜひ参加して欲しい。最初はわからなくても、少しづつレベルアップしていけばいいと思う。

質疑応答
Q:ポスターセッションとはなにか。また、デジタルポスターとはどういうものか。
A:研究内容をポスターにまとめて展示する発表形式。発表者は特定の時間に自分のポスターの前にいて、質問に答える。口頭発表より参加者と近い感じになる。デジタルポスターはポスターを電子化したものを事務局に提出すると、デジタル化してHPに載せてくれる。実際のセッションでは印刷して貼り付けている。

Q:参加者は日本人以外の外国人はどの程度参加していたのか。また、参加資格はあるのか。
A:わからないが、50〜100人ぐらいか。少なくはないようだ。年次総会に参加するのに、特に資格は必要ない。日本の学会も一般に開放しているが、外国の方の参加はあまりないのではないか?

Q:何か興味を引いたポスターセッションがあれば教えて欲しい。
A:Library2.0やWeb2.0関係の発表や、HPのデザインやWebでの調査が多かったように感じた。紙のアンケートを行なっている人は少ないようである。

Q:日本でもアメリカの認定資格と同じ様な資格(ヘルスサイエンス情報専門員)があるが、どのように認定しているのか。
A:基礎、中級、上級とあり、各級はポイントが一定以上あればその級に認定してもらえる。ポイントは研修等の受講や発表、大学での授業を行なう、論文の発表などである。

Q:MLAの総会への参加は日本医学図書館協会の認定資格制度のポイントの対象となるのか?
A:ポイントに加えられるが、中級以上はこういった大会への参加(継続教育)のポイントに上限がある。



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