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学習会記録(第164回)

日時:2009年5月21日(木)
出席者:8名
内容:「Librarian in Kansaikan 〜国会図書館のWebサービスを交えて〜」
発表者:島村 聡明(京都府立図書館)

○京都府と国立国会図書館との人事交流によって経験した国会図書館関西館での2年間の勤務の様子について報告された。

1-1.自己紹介
・1998年に京都府に司書として採用され、2007年3月まで京都府立図書館に勤務
・2007年4月から2009年3月まで、国会図書館と京都府の人事交流により国立国会図書館関西館勤務
・2009年4月より京都府立図書館に戻り、現在は図書整理担当資料主任

1-2.京都府・国会図書館の人事交流について
・関西館開館時(2002)から開始。1期につき2年間で、現在5人目
・(形式的にではあるが)一度所属を退職するため、「研修」や「出向」ではなく「割愛」

1-3.国会図書館での仕事
・文献提供課参考係の人文藩、のち社会藩を担当(「藩」とは、担当グループのこと)
・閲覧業務、選書、ガイダンス講師等を受け持った。
・係や「藩」をまたいで作られる担当グループとして「班」があり、電子班、広報班、(資料の)流れ班、補修、カレントアウェアネス編集委員、テーマ別調べ方案内、ガイダンス班等を歴任

2-1.関西館の概要
http://www.ndl.go.jp/jp/service/kansai/index.html
・関西館は相楽郡精華町にあり、京都駅から電車(近鉄急行)で30分+バス、もしくは自転車等で10〜20分
・開館時間は10:00〜18:00だが、今年度から職員の勤務は9:00〜17:45で、ローテーションの後番は超勤になっている。
・休館日は毎週日曜日、第3水曜日、祝日
・「東京本館」「子ども図書館」との分担収集をしており、関西館は、洋雑誌、科技資料(規格、テクニカルリポート、会議録……)、博士論文、科研費報告書、また、アジア情報課がアジア資料を受け持つ。
・2つの「閲覧室」と閉架式書庫からなる図書館

2-2.関西館独自サービス
・電子図書館課:近代デジタルライブラリー、WARP、Dnavi、PORTAを担当
他にも、児童書デジタルライブラリの著作権処理業務、電子的記録(FD、CD、ビデオ、DVD等)の長期的保存の研究、デジタルアーカイブシステムの開発等
・図書館協力課:総合目録、レファレンス協同データベース、研修を担当
他にも、図書館情報学分野の調査研究(「カレントアウェアネスポータル」(カレントアウェアネス、-E、-Rの編集を含む)の運営、『図書館研究シリーズ』の刊行等)、点字録音図書総合目録の運営等
・文献提供課:科技資料の提供、レファレンスを担当
・レファレンスの受付は東京本館で、関西館は主に遠隔複写の窓口として依頼された資料の現物確認を行う。ただし、アジア関係のレファレンスは、関西館のアジア情報課が担当
・手紙やFAXで送られてきた個人からのレファレンスは後回しになってしまうことが多いが、電話は、個人でも図書館でも普通に受け付けいる。レファレンス質問を受ける体制は整っているので、図書館からは、もっと電話レファレンスを利用してもよいと思われる。

3-1.職員
・司書系職員の職名は「司書」だが、司書資格所持者はほとんどない。図書館員というよりも、国家公務員や国会関係者を志望して国会図書館に就職した職員が多い印象。
 職名は、他にも、総務系職員=参事、調査および立法考査局職員=調査員等がある(異動あり)。
・国会開催中の国会当番は、国会審議が長引いた場合、東京本館では、管理職や直接関係ある部署の職員は、翌朝まで待機することもある(関西館では、当日20時まで)。
・年度内に4月、7月、10月、1月の4回の異動時期がある。その都度、各単位で歓送迎会も行っている。
・優秀で感じのよい職員が多い。
・若さとやる気がある(発表者は、元の職場では”若手”の部類に入るが、関西館の課員の中では最年長であった)。
・関西館の人員は豊富(職員が100人以上)で、委託も進んでいるため、根幹業務に集中できる。
・カウンタは2名体制の2交代、電話1名の2交代で、一日計6名。
・ICカードによって利用者の出入りや貸出資料を管理。
・元の職場に比べると、課(係)をまたいだ話がしにくく、書庫本の利用等も手続きが必要等、不自由な点もある。

3-2.独自の“文化”
・東京本館との連絡・調整はメールが中心で、各部・プロジェクトごとのHPによる情報発信も。
・ミーティングは、課、係は定期的、藩、班は不定期に行っている。一方で、非常に簡易な決裁もある。
・職員の異動が多いため、マニュアルが整備されている。
・プレゼンテーションや講義前の「リハーサル」を完備
・職場内略語(ジャーゴン)の多用
・ボーリング大会、文化祭、お花見などイベント活動も盛ん
・宿舎が隣接している。

3-3.研修・研鑽
・係内で週に1回(木曜17:00〜)の「ミニ研修」があった。
・XOOPS(ブログ掲示板)に本館・関西館職員がレファレンス事例の蓄積や補足の書き込みをし、情報を共有している。過去の事例で代表的なものは、「テーマ別調べ方案内」にまとめられることも。
・東京本館との合同研修(TV会議)や近隣施設の見学、(東京への)出張研修等、研修も充実

3-4.館長
・長尾真館長は、リーダーシップと、遠くと近くを見る目がある(例:「長尾ビジョン」)
・館報(月報)や館外での積極的な情報発信

4.国会図書館勤務で得られたもの
・関西館の職員は、利用者、他の館種への関心、配慮があり、外に向けてアピールする意志もある。
・科技資料・電子ジャーナルについては、関西館を案内した方がよい。
・個人的には、多くの知人(ロールモデル)を得たこと、「カレントアウェアネス」編集に携わることで、著名な先生方と関わりを持てたこと、出張でのガイダンスを担当したことが貴重な経験であった。

5.NDLのWebサービス
「リサーチ・ナビ」(2009.05.11から公開)
 ・テーマ別調べ方案内を中心に、レファレンスツールを統合
 ・「目次DB」、「近代日本軍事関係文献目録」、「日本人名情報索引(人文分野)DB」、「科学技術論文誌・会議録DB」などの新規ツールを追加
 ・NDL職員の“ナレッジ”の公開

6.本日のまとめ
・もっと、国会図書館をハード面、ソフト面ともに使いましょう!
・国会図書館はよりよいサービスを目指して、利用者や他館からの要望に応える意志がある。要望は国会図書館、他館、利用者にとって利益になる。

Q&A
Q.国会図書館で契約している電子ジャーナルを印刷して送付してもらうことはできるか?
A.現在のところ、韓国・中国語系コンテンツについては可能。他の電子ジャーナルも契約上は可能だが、業務量が見えないため、現在、サービス開始の方向で検討中。

Q.電子ジャーナルの契約で、複写や著作権についてはどうなっているか?
A.複写については、前述のとおり。閲覧については、アメリカの一部の公共図書館のように、国会図書館以外の場所からインターネットで閲覧することはできない。

Q.納本制度があるのに、選書業務もしているのか?
A.納本により1部しか提供されない場合には、東京本館の資料になる。関西館には2部以上納められた資料しか来ないため、関西館として必要な資料は、選書して購入している。レファレンスツールも購入。また、納本制度のない洋書や、アジア言語資料も選書購入。

Q.納本される資料には、代金を払っているのか?
A.負担金を払っている。無償も何割かある。
 収集ルートには、官庁納本、民間納本、寄贈(これが無償)、交換(海外図書館との交換により入手)、購入等がある。

Q.電話によるレファレンスには、どの程度対応してもらえるか?
A.依頼館で調べられない内容であれば対応する。時間がかかる内容は電話では対応できない場合もあるので、その際は、通常ルートを案内する。

Q.資料が開架にあるか、書庫にあるかは、インターネットOPACからは分からない?
A.国会図書館内の検索でしか開架か書庫かの特定はできない。

Q.利用ガイダンスの受講者は多いか?
A.受講者が無人で中止になったこともないし、定員オーバーになったこともほとんどない。受講者アンケートによると、館内の掲示を見て参加する人が多い。評判はなかなかよい。

Q.2名体制のカウンターは忙しいのでは?
A.来館者は多くても一日300名程度で、人手が足りない時にはすぐに応援が求められるので、基本的に2名体制で回っている。



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