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学習会記録(第161回)

日時:2009年2月19日(木)
出席者:9名
内容:「寺子屋講座 そろばん編 江戸の算術〜算木を使おう!〜」
発表者:藤原 直幸(京都府立総合資料館)

和算についての基礎的な解説ののち、実際に算木を使って計算する方法を体験した。
(総合資料館で和算関係資料収蔵品展(2/28〜3/29)にあわせて3/14、26に行われる講座と同内容)
*詳細は配布資料参照

○和算について
・和算とは…日本独自の数学。江戸時代に発達(⇔西洋数学)
・和算の歴史
 飛鳥時代…すでに日本に数学が輸入。
 奈良時代…「大学」で専門的な数学教育が行なわれる(内容は現在の小学5年程度のレベル)。
      この時期に「算木」「九九」が伝来。
 平安時代…学問としての数学は衰え、細々と受け継がれる。
 室町時代…「そろばん」「八算」の伝来。貿易の際に数学的知識が用いられる。
 江戸時代…京都を中心とした「そろばん塾」の興隆。寺子屋の出現(数学教育は加減乗除までくらい)。
      『算用記』『割算書』『塵劫記』などの数学の教科書の刊行。
      商業の発達に伴い、基礎的な数学の知識が広く必要とされるようになった。
       ⇒和算が発達
・『塵劫記』
 吉田光由(京都の角倉家一族)が著者。
 書名は「塵劫来事糸毫も隔てず」(年月を経ても変わらないの意)から。
 簡易な語り口による和算入門書。
 寛永8年に初版刊行、ベストセラーとなる。
 明治初期までに海賊版を含め400種以上の「○○塵劫記」が出版される。
 資料館所蔵の寛永20年『新編塵劫記』は貴重書データベースで公開。(その他、海賊版を8冊所蔵)
・江戸時代の四則計算
 八算…1桁の割り算についての九九
 見一割(けんいつわり)…2桁の割り算についての公式
 その他、金貨銀貨の換算のために必要とされた四十四割・四十三割など
○江戸時代の和算の発展
・「遺題継承」…先に刊行された数学書の中の解答のない問題(遺題)を解いて公表し、さらに次の遺題を提示すること。
・有名な遺題継承本に『算両録』『算元記』『算法闕疑抄』『発微算法』など。
・関孝和・・・寛永17(1640)年生―宝永5(1708)年没
     『発微算法』を発表。東洋初の代数式「傍書法」を考案。
     「関流」と呼ばれる和算の流派の祖。
・和算の教育者の増加や遊歴和算家(旅をしながら和算を教える)の出現により、全国に和算が浸透する。
・「算額奉納」(数学の問題と解答を板に書いて神社に奉納する)の流行。
○明治時代の数学
・明治5年の学制発布により学校教育では西洋数学が教えられるようになる。
・和算家の西洋数学教師への転向。
・父母や社会の要請で、そろばんのみ学校教育として残される。
○和算で遊ぼう
 *和算書に出てくる遊戯的問題が紹介された
・薬師算・・・碁石を使った問題の提示。薬師如来の数とされる「12」を使って計算することからくる名前。
・目付け字・・・二進法を応用して、漢字表で当て物をする遊び。
○算木を使って加減乗除を体験してみよう!(*発表者作成の算木を使って計算方法を実践した)
・算木・・・長さ3cm程度の棒。中国では長いものだったが、日本で改良されて短くなる。
     色は赤(プラスの数)と黒(マイナスの数)
     碁盤の目状の「算盤」の上で計算する
     資料館でも貴重書として算木を所蔵
○小説で楽しむ和算
遠藤寛子『算法少女』(岩波書店 1973)
新田次郎『算士秘伝』(新潮文庫『梅雨将軍信長』1979 収録)
井上ひさし『四千万歩の男』(講談社 1990)
宮部みゆき『霊験お初捕り物控』(新人物往来社 1993、1997)
鳴海風『円周率を計算した男』(新人物往来社 1998)



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