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学習会記録(第161回)

日時:2009年1月15日(木)
出席者:10名
内容:「京都府図書館総合目録ネットワークについて」
発表者:是住 久美子(京都府立図書館)

○相互貸借の流れと各種機能、現状の課題と今後の展望について報告があった。

1.京都府について
市町村合併が進み、2004年〜2007年までの間に自治体数は44から26(15市・10町・1村)に減り、図書館未設置自治体の合併により設置率は54.5%から76.9%に上昇した。

2.京都府内の相互貸借
・昭和51年に京都府図書館等連絡協議会が発足し、昭和61年に相互貸借の統一ルールを策定。一方、物流を担当する京都府立図書館の連絡協力車は、昭和59年に南部2コース、月1回の連絡協力車の試験運行を開始し、巡回先、運行回数を増やしながら今に至っている。
・平成13年には京都府図書館総合目録ネットワーク(K-Libnet)が運用され、所蔵検索、相互貸借申し込み、搬送管理が一体化した。
・連絡協力車は現在府内5コースを毎週運行している。原則として搬送先は各自治体に一箇所のみで、分館等については各自治体の配送便で送付してもらう。相互貸借資料のほかに文書の送付や月に一回職員が同乗し、情報交換や相談などの話を聞いている。
・物流の小道具
コンテナ、相互貸借専用袋、文書ファイル等を使用し、事務作業の軽減を図っている。
・年間相互貸借冊数
年々増えていて、平成19年度は府立図書館と市町村間は17,191冊、市町村間では21,138冊の利用があった。
一運行あたりの冊数も府立図書館約70冊、市町村間約86冊となっている。

3.K-Libnetについて
以前は集中型総合目録だったが、平成17年の更新により横断検索との併用型になった。府内図書館の参加状況は、府内全市町村(67館)が参加し、うち87%の58館(21市町)がデータを提供している館となり、半分以上の34館が横断検索型となっている。
・平成17年度のシステム更新での変更
集中型総合目録と横断検索の併用、ISBNによる書誌同定、相互貸借依頼順における貸出実績の追加、相互貸借番号の採用

4.図書の検索と借受要求
・K-Libnetの検索結果から借受依頼がかけられる。借受依頼は書誌ごとに依頼されるので、ISBN同定でまとまることは非常に重要。
・相互依頼した日によって優先順位を作成、同一コース内では貸出実績に応じて変更(貸出の多い館は下へ)ただし常に府立図書館は最上位で、京都府立総合資料館は最下位になる。また、臨時休館や蔵書点検時に順位を下げる管理画面がある。
・貸出館が確定するまで
貸出了承されるまでK-Libnetが優先順に所蔵館に要求をかけていく。すべて貸出し不可だった場合は、借受館に貸出し不可であるとメッセージが届く。
・借受要求が来ると、トップページに表示され、受付画面から貸出了承、貸出不可を回答する。貸出了承の場合は相互貸借表が印刷される。相互貸借表には固有の相互貸借番号がバーコード印字され、横断検索館でもバーコードリーダーによる処理が可能になる。集中型は借受要求受付画面に自館の請求記号が表示される。その後は相互貸借詳細画面で現在の状況(発送準備中、借受中等)がわかるようになっている。

・K-Libnetの機能
レファレンス
レファレンス機能は参加館なら誰でも登録でき、また、どの参加館でも回答できる。回答がない場合は府立図書館が必ず回答する。また、図書室からの「○○に関する本を送ってください」という問いかけに複数館から回答と何冊送っても無料であることから、多めに送って利用者に選んでもらおうという使われ方もしている。
リクエスト
市町村が買えない図書を府立図書館にリクエストし、購入すると、依頼した館に最優先で貸し出ししてもらえる。選定理由は高額な図書や相互貸借ができないような新刊などの資料である。
ウォンテッド
K-Libnetでヒットしない図書等に関して、資料を持っていないか呼びかける機能。主にデータ提供していない館に対してだが、最近は提供館が増えてきたので、役割が少なくなった。
メッセージ
メールと同じように特定の館にも送れるし、すべての館にも送ることができる。日常の連絡事項や簡易なアンケートに使用される。

5.K-Libnetの課題
・例1:セットISBNの問題
児童書のセットものなどで、巻ごとのISBNがなく、セットISBNしかない資料の場合、シリーズ名やISBN検索をすると巻数分だけ所蔵館が並ぶ検索結果になる。個々の詳細で見ると違う図書なのは判るが、相互貸借が難しくなる。
・例2:ISBNがない資料
K-LibnetはISBNで同定しているので、ISBNがない資料は書誌がいくつも出てきて、相互貸借も1館ずつしか行なえず不便である。
・例3:文字コードの問題
K-Libnetの文字コードはシフトJISのため、UTF8を採用している館の書誌では旧字体が表示できずに文字化けしてしまう。
・他にも、参加館数やデータ量の増加等につれ、データ処理のレスポンスが悪くなっていた。2008年末にメモリを大幅に増設したので、少しは早くなったと思う。

・今後の課題
総合目録の充実:データ未提供館を解消し、参加26市町村すべての図書館の所蔵がK-Libnetで検索できるようにしたい。
技術的な課題:次回更新時にできる限り解決し、より使いやすいシステムにしたい。
ネットワークの拡大:現在、大学図書館では京都学園大学だけが特例的に入っている状況だが、大学等館種を越えた連携を図っていきたい。

Q&A
Q:資料館では他館から資料を相互貸借する場合は、資料館の資料ともに使用する事というように制限がある。他の館では相互貸借の際に制限はあるのか?
A:例えば、自館蔵書に対する予約が多いので相互貸借の申し込みをする人はいる。そのようなケースでは基本的に断っている館が多いと思う。その他の制限は特に聞かない。

Q:相互貸借で借りた人が返さなかったり、汚損したりという問題があったことはあるのか?
A:府立図書館の蔵書では返却されなかったことがあった。同じ図書で弁償してもらうのが基本。資料が絶版などで入手できない場合は類似図書で弁償してもらう。貸し出した個人に連絡がつかない場合は借受館が弁償することもある。汚損の場合は程度により、相手館と相談して、対応している。

Q:リクエストについて、どの程度依頼があるのか?また、その予算はいくらぐらいなのか。
A:月90冊程度リクエストがある。予算についてはリクエストのみの購入費はなく、資料費の中から200万程度を限度に購入している。



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