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学習会記録(第160回)

日時:2008年12月18日(木)
出席者:7名
内容:「京都府立図書館の事例から〜K-libレファレンスを中心に〜」
発表者:辰巳 裕佳(京都府立図書館)

K-Libnet(京都府図書館総合目録ネットワーク)に登録されたレファレンス事例を題材に、調査の流れと役に立つレファレンスツールを紹介。

1.〜和古書の調べ方〜 ☆事例「万葉集仙覚抄について」
Q.利用者によると「仙覚万葉抄」というタイトルであるが、インターネットで検索したところ
「万葉集仙覚抄」のように思われる図書の著者名と成立年代を調べたい。
[調査の流れ]
@京都府立図書館OPACで調べる
 →「万葉集仙覚抄」で所蔵あり。この本の緒言から「万葉集註釈」の別名が「万葉集抄」や「仙覚抄」
 であることがわかった。
A「万葉集註釈」でOPAC検索
 →『万葉集註釈(京都大学国語国文資料叢書別巻2)』
  解説から、『万葉集註釈』の別名が「仙覚抄」であり、文永6(1269)年成立と確認
B参考図書で調べる
・『国書総目録』で「仙覚抄」または「万葉集仙覚抄」を引くと→「万葉集註釈」を見よ
 →「万葉集註釈」の項で、文永6年成立であることを確認
・『国史大辞典』の「万葉集註釈」の項で、万葉集の研究者「仙覚(1203年〜没年不明)」が著作者で、文永6年4月2日の成立であることを確認

2.〜雑誌記事・判例の調べ方〜 ☆事例「キャンディキャンディの著作権」
Q.キャンディキャンディの小説版には昔は挿絵があったが、なぜ現在は挿絵がなくなってしまったのだろうか。
[調査の流れ]
@現在流通しているキャンディキャンディ小説版の出版情報を調べる
・オンライン書店本やタウン(http://www.honya-town.co.jp/ )
・Books.or.jp(http://www.books.or.jp/)
A新聞情報を調べる
・47NEWS(http://www.47news.jp/ )…47都道府県52新聞社の総合サイト
 →著作権関係のトラブルがあったことが判明
B雑誌記事を調べる
・国立国会図書館国会雑誌記事索引(http://opac.ndl.go.jp/Process )
・CiNii( http://ci.nii.ac.jp/ )…論文の引用情報。一部は本文閲覧可能なものもあり
C判例を調べる
・最高裁判所ホームページ 判例検索システム( http://www.courts.go.jp/ )
・リーガルベース( http://jlic.softhouse-ilu.com/doc/ )
Dその他関連情報について、所蔵資料で調査
・キーワード・・・著作権、裁判、漫画等
 『封印作品の謎2』、『デジタル時代の著作権最新Q&A』…キャンディキャンディの原作者と 漫画家に関する著作権事件の経緯を解説
 *府立図書館所蔵『小説キャンディ・キャンディ』(少年少女講談社文庫 1979)には、挿絵あり。

3.〜教科書の調べ方〜 ☆事例「「お母様」という詩について」
Q.「お母様」という詩の作者を知りたい。昭和30年代に中学あるいは高校の教科書に載っていた。
 詩の内容については詳しく把握している。
[調査の流れ]
@東書文庫( http://www.tosho-bunko.jp/ )…江戸時代からの蔵書約12万点が検索可能。戦後の小中学校国語については、目次作品名、目次著者名での検索もできる(平成12年度使用開始本まで)。
 蔵書検索で該当の教科書が判明。
A京都府立図書館所蔵調査…京都府立図書館では教科書を多く所蔵。現在1万5千冊が利用可。
 ・教科書目録案内( http://www.library.pref.kyoto.jp/text/textindex.html
 →京都府立図書館で該当の教科書の所蔵があったが、詩の作者の記載はなし。
B出版社問い合わせ→生徒作品のため詩の作者の記録もなく、作者名はわからなかった。

4.〜京都に関する調べもの〜 ☆事例「祇園祭の鉾の大きさ」
Q.祇園祭の鉾の大きさを知りたい。
[調査の流れ]
@参考図書
・『京都大事典』の「祇園祭山鉾」の項
A京都府立図書館OPACでキーワード「祇園」「山鉾」検索
 +京都コーナーの分類記号386(祭り)をブラウジング
 →『祇園祭 山鉾実測』、『京都祇園祭手帳』など

5.〜児童書・絵本の調べ方〜 ☆事例「絵本をさがしています」
Q.「おしいれのぼうけん」ではない、押入れが舞台の絵本なのですが……。
Q.25,6年前の絵本でアリクイらしき動物の出てくる絵本を探していますが、タイトルが分かりません。
 薄っぺらい冊子のような本だった。
 …ほか、K-libレファレンスでは児童書に関する問い合わせ多数!
[調査方法]
・国際こども図書館HP( http://www.kodomo.go.jp/
・参考図書 『児童文学全情報』、『日本児童文学大事典』、『世界児童・青少年文学情報大事典』、
 『児童文学者人名事典』日本人編上下・外国人作家編、『新版絵本の住所録 テーマ別絵本リスト』
・人海戦術!総当り!

6.レファレンスをもっと楽しくする
・国立国会図書館 テーマ別調べ方案内( http://www.ndl.go.jp/jp/data/theme.html
・レファ協ほめまくり( http://d.hatena.ne.jp/nachume/
・東京都立図書館ホームページ( http://www.library.metro.tokyo.jp/
・京都府立図書館 調べものに役立つリンク集( http://www.library.pref.kyoto.jp/

Q&A、フリートーク
Q.K-Libnetへの参加条件、費用は?
A.インターネット環境があって、K-Lib netを1日1回以上チェックできる京都府内の図書館であれば参加可。IDとパスワードを交付する。参加費は無料。

Q.カウンターで受けた質問を含め、京都府立図書館で解決できないレファレンスはどうしているのか?
A.京都府立総合資料館や府外の図書館に依頼することもある。わからなかった場合でも質問者には経過を伝える。

Q.K-Libnetのレファレンス事例はいつから登録が始った?
A.平成13年から。今後はK-Libnetから国会図書館のレファレンス協同データベースにアップロードできるしくみをつくりたい。

・K-Libnetに登録されずに埋もれていってしまうレファレンス事例は惜しい。
→様式を送って記入してもらえるよう頼んでみてはどうか。

・一方で軽易な事例でも積極的に登録してくれる館もあるので、事例の種類分けが難しい。
→登録の際に事例の階層づけをしておくと、あとで利用しやすいのではないか。

・最近は京都府立図書館で、紙媒体でのレファレンス事例蓄積だけでなく、アクセスによるデータベース化を模索している。

・インターネットの情報はどんどん消えて行ってしまう。京都府でもインターネット情報を保存するため、国会図書館のWARPのような事業をするべきではないか。



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