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学習会記録(第159回)

日時:2008年11月20日(木)
出席者:9名
内容:「DAISY図書のつくりかた−音訳ボランティア活動報告」
発表者:祖父江 長良(京都府立総合資料館)

○京都ライトハウスにおける音訳ボランティアについて、デイジー図書の作成過程を中心に報告がされた。

1.視覚障害について
・視覚障害で障害者手帳交付を受けている人数…平成18年の統計によると全国315,000人(『障害者白書』)、京都府10,849人(『京都府統計書』)
 実際には全盲〜弱視まで人によってさまざま。(ex.明るさは感じる、大きい字ならば見える)

2.視覚障害者の図書館利用
・ランガナタンの五原則、図書館の自由宣言
 →障害者サービスは特別な「サービス」ではない。
・著作権法第37条(点字による複製等)3 平成18年一部改正
 点字図書館その他の視覚障害者の福祉の増進を目的とする施設(*公共図書館はその範囲ではない)において、視覚障害者の利用を目的とした録音、自動公衆送信(*改正により追加、ホームページでの読み上げや携帯電話へのダウンロードが可能に)をおこなうことができる。
・著作権法第38条(営利を目的としない上演等)
 朗読者には報酬が発生しないことが条件となる。
・指定する施設から、または施設宛ての特定点字郵便物、特定録音郵便物の送料は無料  点字録音図書貸出・返却の発送にもボランティアがかかわっている。
・日本図書館協会障害者サービス委員会のガイドライン(http://www.jla.or.jp/lsh/guideline0504.html)

3.京都ライトハウス
・利用資格…障害者手帳の所持(持っていない人も、見えにくい場合は相談で可能なことも)
・2007年度総貸出数…40000タイトルを超える
・利用者数…2462人(手帳保持数の20%)
・貸出タイトル数…デイジーがテープの2倍以上
・デイジー機器を利用できる方…利用者全体の3割程度
・点字と録音の利用…点字:録音=1:8(2004年度) → 1:16(2008年3月)
・点字は学習が難しいが、習熟した人は話すのと同じスピードで読み書きできる。
 デイジーとカセットテープでは、カセットのほうが使い慣れているという人が多い。
 日本点字図書館は2011年にテープサービスを停止予定、日本ライトハウスでも製作については2009年からデイジーのみとなるが、京都ライトハウスではテープ最後の利用者まで貸出サービスを継続するとしている。

4.音訳図書
・ないーぶネット(https://www.naiiv.gr.jp/)…日本最大の点字総合目録
 書誌は、点字の場合はページ数、録音資料の場合は時間数が記述されるほか、巻数・完成年月・校正レベルなど。
・デイジー図書のつくりかた
@選書
 月1回、ライトハウス職員と視覚障害者の会議で選書。デイジー15、6冊、テープ5冊程度。原本も購入する。
 ないーぶねっとを確認しながら、なるべく他館が作っていないものを選ぶ。コミックスはなし、楽譜は点字ではあり。利用者からのリクエストは基本受けず、プライベート音訳にまわす。
A調査
 下読みをしながら、漢字の読み、共通語アクセントなどを確認する。図表は文章化する(ex.「図の説明 〜 図終わり」)。わからないことは情報ステーションのレファレンス資料(バザーの収益金で購入)や、インターネット、公共図書館で調べる。著者や出版社には問い合わせない。下調べ表には、後の校正のために典拠も記入しておく。
B録音
 ライトハウスのスタジオで録音。2時間単位で予約する。
 デイジー図書であっても、最初はカセットテープで製作する。
 頭は10秒あけて、タイトル・製作館名・原本奥付・録音図書凡例・原本凡例・目次・まえがき・本文・製作完了年月日・音訳者名・校正者名・編集者名を吹き込む。
C校正 第1校
 校正表に巻・ページ・行・原文・音訳者の読み・校正者の読み典拠を記入。
D録音(修正)
 音質を同じにするため、録音はずっと同一の機器を使って行なう。テープ修正には技術がいり、修正部分が長い場合は大幅に録音しなおさなければならない。30分の録音でもだいたい3時間はかかる(発表者の場合)。
E校正 第2校
 第1校の校正者とは別の人がする。
F最終録音
Gデイジー編集
 テープからパソコンに流しこむ。音質を優先する。目次に沿って章ごと、項目ごとに階層をわける。一番小さな文のかたまりをフレーズというが、編集で間を入れ直してフレーズを調整する。デイジー再生ボタンで、次の項目や次のページにも跳べるようにレベルを設定できる。ページ、目次見出しも入力する。索引がある場合も活用できる。
H装丁・目録
 ラベル・点字シールなどで装丁。書誌情報の目録を入力し、ないーぶネットに登録する。
I貸出

5.音訳ボランティアあれこれ
・ボランティア養成講座
 月1回、経験年数にあわせたグループで集まり、発声練習や読み方の共通認識などを学ぶ。ボランティア認定試験に合格すると、蔵書の校正や音訳などできることが決められ、認定証が発行される。
・雑誌・新聞音訳など
 その日の新聞の録音。ライトハウスのロビーで聴ける。
・プライベート録音
 個人依頼の録音。原本、テープ、CD代は実費。
・対面朗読
 持込資料の朗読。2時間程度。事前申し込み。
・読み書き
 何でも読み書きするサービス。今までの例では、履歴書、電話料金、市長への手紙、リクエストはがき、ゴミ分別のお知らせ、旅行行程表、TV欄の録音などさまざま。情報ステーションにボランティア2名が駐在(月〜土 10時〜16時)。申し込み不要。

6.その他
・日本障害者リハビリテーション協会 情報センターHP(http://www.dinf.ne.jp/doc/daisy/)・・・デイジーについての解説
 視覚障害者だけでなく、本を持って読むことができない肢体不自由の方にも有効。
・自動読み上げソフトやヨメールは便利だが、音訳者にも判断力や思考力というメリットがある(ex.「百合文書」などの特殊な読み方への対応など)
・携帯配信…2008年11月1日の朝日新聞に記事


Q&A
Q.漢字の音などの読みがどうしてもわからないときはどうするのか?
A.冒頭に「録音図書凡例」として、この録音ではこのように読んだ等の説明を入れている。読みだけでなく、何か特別なことをしたときはこの凡例に入れる。

Q.ジャンルによっては読み方に感情を込めることもあるのか?
A.すべて淡々と読むのが基本。あまり感情を入れると聴くほうが疲れてしまうし、好みもあるから。

Q.ボランティアの仕事が多いように思うが、職員はどのような仕事をしているのか?
A.現場というより、講座の手配など、もっと大きな枠で動いているように見える。多くのボランティアの対応をするのも、ある種の気遣いが必要でたいへんだと思う。

Q.携帯配信はどのように使えるのだろうか?デイジーと同じで階層ごとに再生できるのか?
A.登録するとダウンロードが可能になる。階層での再生も同じソフトを使えばおそらくできると思う。



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