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学習会記録(第151回)

日時:2007年12月20日(木)
出席者:13名
内容:「平成19年全国公共図書館サービス部門研究集会参加報告」
発表者:辰巳裕佳(京都府立図書館)

「平成19年全国公共図書館サービス部門研究集会」
会期:平成19年11月15日(木)・16日(金)
会場:パレット久茂地市民劇場
参加者:約260名(県外からの参加者は約60名)
内容
<第1日目>
○基調講演「図書館における知の創出」 (青山学院大学文学部教育学科教授 小田光宏氏)
★図書館サービスは利用者の知の創出に貢献しているか?
・アウトカム、品質、根拠への着目
★図書館サービスは知の創出における変容とどのように関係しているか?
・共同、大衆化、いつでもどこでも(ユビキタス)の進展
★図書館サービスは知そのものを創り出しているか?
・図書館における具体的な成果物の例
  …コレクション、目録、ファイル資料(自館作成ツール)、レファレンス記録
・図書館で生産された成果物の独自性
 @図書館の所蔵資料に基づく(→確実性、信頼性、根拠)
 A分類による配架など独自のシステムで構築されている
・図書館で生産された成果物の専門性
 専門的業務の定義…経験によって高められる、専門的知識・技能が必要な業務
☆レファレンス記録は図書館員の専門的な知を活用した成果物
 →専門性を保持する組織作りが必要
・図書館の生き残りにどのように活用していくか
 @創出された知をネットワーク上で発信、共有、活用する
☆レファレンス共同データベースは、レファレンス記録を蓄積した成果共有型ネットワーク
 A利用者の知の創出活動に、成果物が二次的に活用されることを目指す
 ex.ウィキペディアの「じゃがたらお春」の項に、レファレンス共同データベースのレファレンス事例詳細が外部サイトとしてリンクされている
  → 一般的なネットワークで図書館の成果物が活用されてきている例

○事例発表
@「都立中央図書館におけるレファレンス・ツールについて」
★都立中央図書館レファレンスサービスの概要
・所蔵資料は図書約150万冊、雑誌約12,000タイトル、新聞約1,000タイトルで、職員は8係65名(うち司書62名)で主題別閲覧制度をとっている。
・レファレンス件数は年間約10万件で、口頭、電話によるものが多く、内容は所蔵・所在に関するものが4割を占める。
・情報環境の変化によりレファレンスをめぐる状況は大きく変化している。インターネット上の情報源やオンラインデータベースも有効に取り入れていくほか、都立ではレファレンスツールの自館作成にも力を入れている。

A「こんなときどうするの?〜図書館の危機管理〜」(草津市立図書館主査中沢孝之氏)
 図書館における危機は、対人的なトラブルと、災害による危険とに大きく分類される。
 突発的に起こる危機に対応するためには、日頃から職員の心構えと、事例の収集・共有、対応マニュアル作成が重要である。またマニュアル類を作成しても、絶対的な答えはなく、その場での適切な判断が最終的に必要とされる。
★守るもの
図書館の危機管理:利用者+職員+資料を守ること
★危機を回避する、拡大させない
危機の発生を未然に防ぐ ← トラブル発生を想定し、予防策を講じる
危機が発生した場合は最小限に食い止める ← 二次被害を防ぐ

B「夢を育てる図書館サービス〜公共図書館として地域・学校等をどう支援するか〜」
(読谷村立図書館 館長 福地江美子氏  豊見城市立中央図書館 館長 當間美智子氏)
・ともに地域や学校との連携を積極的に行っている事例についての報告があった。
(両図書館とも子どもの読書活動優秀実践図書館・団体として表彰されている)
[読谷村立図書館]小学生対象の図書館見学や1日図書館員、中学生対象の職場体験学習、ボランティア活動支援のための読み聞かせ実践教室などが特徴的な活動
[豊見城市立中央図書館]「ブックトークで出前講座」という取り組みで、職員が小学校へ出かけてブックトークを行なっている。

<第2日目>
○情勢報告(日本図書館協会 事務局長 松岡要氏)
1教育基本法の改定
・文面のまま受け止めるのではなく、教育条理に沿った解釈をすべき
・第12条(社会教育)は、あいまいに解釈される可能性がある
2図書館法の検討
・他の法律改正の影響を受けてではなく、単独での検討は初めてのケース
・制度問題小委員会における検討状況について(平成19年9月12日)
3図書館法見直しにあたっての意見
 日本図書館協会2007年10月2日(http://www.jla.or.jp/kenkai/20071002.pdf)
4指定管理者制度
・導入の実態(日本図書館協会調査 2007年4月)http://www.jla.or.jp/sitei-kaitei.pdf
・「公立図書館の指定管理者制度について」(日本図書館協会 2005年8月)
   http://www.jla.or.jp/kenkai/siteikanrisya.pdf
・「指定管理者制度を検討する視点(施行版)」『図書館雑誌』2007年3月号
★次年度のサービス部門研究集会開催は奈良県(平成21年1月15〜16日予定)

Q&A
Q.今回の参加者で多かったという学校図書館職員の内訳は?
A.事務職と司書教諭の割合はわからないが、特に高校からの参加が多かった。

Q.沖縄県内の図書館間の流通はどのようになっているのか?
A.どのような協力体制にあるのか今回は聞けなかったが、以前に沖縄県立図書館で聞いた話によると、台風の際に離島間の図書運送が遅れるなど地理的な問題で困難が生じることもあるようだ。
   *参加者からの情報:本島では図書館間の連絡便があるときいている。

Q.情勢報告での図書館法の見直しについての意見にあった、相互貸借における整備とは具体的にはどうするのか?
A.具体的な策は提示されなかったが、国が総合的・合理的な流通ができるような制度を整備していくことが望ましいという意見が報告された。



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