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学習会記録(第150回)

日時:2007年11月15日(木)
出席者:6名
内容:「全国図書館大会参加報告」
発表者:藤原 直幸(京都府立総合資料館)

第93回全国図書館大会に参加した報告があった。
詳細は配布資料を参照
大会概要
日 時:10月29日〜30日
場所:1日目 日比谷公会堂、2日目 国立オリンピック記念青少年総合センター
テーマ:つなげよう未来へ、開こう現在を 図書館は力 文化が集まる、情報が集まる、人が集まる

第1日目:全体会
基調報告 塩見昇(日本図書館協会理事長)
図書館設置基盤、母体の変容
・自治体の大合併で3232団体から1821団体になり、設置率は上昇している。しかし合併後に人口に比べて図書館数が多い場合、削減されることも考えられる。
・学校においても短大の縮小や大学の再編が起こっているが、ただ複数の館をまとめるだけでは内容が低下してしまう。
管理運営、職員構成の多様化
・図書館への指定管理者の摘用は公の施設としては格段に少ない。来年度までに計109団体が適用する。(全国の自治体の約1割)
・各人口別貸出上位割合10%にあげられた団体の中では指定管理者適用の団体はこのうち6団体のみである。

記念講演 「文化の力 図書館の力」 井上ひさし(作家)
遅筆堂文庫
・山形県川西町にあり、劇場、町立図書館との複合施設。収容可能冊数16万冊、職員2名(別に町立図書館担当2名)
本との出会い
・父は小説家デビューするが若くして亡くなる。その関係で家に本はたくさんあった。
・大学は上智大学へ進学したが、大学になじめず、辞めようかと思って地元へ帰った。
・地元の図書館で和本(黄表紙)の移動と配架のバイトをして、その黄表紙を読んで、笑って、くよくよしてるのが馬鹿らしくなった。
・本を介して江戸時代の人たちの気持ちに近づいた。どうしたらいいかわからない混沌としている時は物語を見つけて整理するとよい。
遅筆堂文庫の成り立ち
・大量の本を処分することになり、地元にあげる事を決める。
・人が集まるようにしたかったので、劇場を併設した図書館を作った。
図書館の力
・最近の統計学では間に6人の人を介すると世界の60%の人と知り合いになれるという法則がある。
・図書館では時間を遡ってこの法則が行なわれている。

第2日目
第13分科会、資料保存委員会に出席した。テーマは「地域で資料をどう残すか」だった。
事例報告 「地域資料に関する全国アンケート調査報告」 小松芳郎(松本市文書館)
調査概要
・国会図書館委託調査としてH18.10〜19.3に実施。ここでの地域資料とは地域レベルで過去、現在に発生しているあらゆる形態の資料を指す。
・地域における公立図書館の役割を再度見直すため、議論の材料の提供が目的
・調査方法:公立図書館、文書館、行政情報センター、博物館に対して質問紙調査と秋田、沖縄、滋賀県への実地調査
調査結果
・回答率は公立図書館76.9%、文書館等71.4%
・地域資料のコレクションの名称としては、地域資料9.4%、郷土資料73%であった。都道府県では13.7%が地域資料としている。
・検索システムについては地域資料をデータ化していないのは都道府県が1館、市町村が8館あった。
・データ化している資料は雑誌75%、地図57%、新聞20%、切り抜き資料は13%となっている。
・地域資料が貸出可能である図書館は53%、都道府県では22館ですべての資料が貸し出し可能であった。
・図書館における地域資料:都道府県立などはさまざまな取り組み、市町村立は保存に手一杯
・文書館における地域資料:公文書館の機能と歴史資料保存機関としての機能を持っているが、施設や人員が多いとはいえない状況
・行政情報センターにおける地域資料:行政情報の提供機能が中途半端であり、他機関との関係が十分ではない
今後の課題
・現状把握やノウハウの継承が必要であり、今後はビジネス支援などに積極的に活用すべき。
・利用が多くなるのに比例して資料劣化してしまうので保存についても考慮しないといけない。

ワークショップ 「補修の基本的な考え方と技術や簡単な保存手当て−実演と解説―」真野節雄(東京都立中央図書館)
・図書館の「修復」は実は「修理」である。
・直さない方が良い時もある。利用に耐えうる最小限の修復を心がける。
・和紙、でんぷん糊を使用し、糊の使用は薄く(濃さ)、薄く(厚さ)。
修復について:紙の目(繊維の方向)に気をつける
・縦目:繊維の流れる方向。折りやすく、水をつけると波打ちにくい
・横目:繊維の流れる方向に垂直な向き、開きにくく、水をつけると波打ちやすい。
資料の保存方法
・中性紙で作った箱に入れる。これは酸性紙の劣化抑制にも効果がある。
・背が弱くへたってしまう資料はボードをつけて、保護する。
・ホッチキス綴じはホッチキスが酸化して紙を痛めるので針を取って糸で綴じ直す。

3日目:施設見学
豊島区立中央図書館見学
概要
・2007年7月16日に移転開館。蔵書は現在22万冊(うち6〜7万冊は移転に際し新規購入)。
新図書館の特色
・IT化図書館としてICタグを採用し、自動貸出機を設置し、貸出を自動化している。(返却はカウンター対応)また、PC付き席10席、PC対応席16席設置
・地域の文化情報発信の場としてトキワ荘関連、横山光輝氏の著作コーナーがある。また、落語関係資料、演劇関係資料も収集している。
・ビジネス支援として、土地取引関係、法律関係図書、ビジネス雑誌などをまとめて配置。データベースやCD-ROMを使用できるパソコンも配置
・開館時間を平日夜10時まで延長し、休館日は月2日としている。
移転開館後の状況
・入館者数:一日当たり約3,500人の入館者(以前の図書館は一日当たり800人前後)
・新規登録者数:最初の頃は400人/日あって、現在は80人/日(以前は一日当たり10人いかない程度)
・自動貸出機の利用は、平日は45〜50%、土日は50%以上。利用率が60%を越えるとカウンター業務の軽減に
職員体制
・カウンター業務のほとんどは委託(貸借、配架、予約処理、登録作業、バックヤードの単純作業)。レファレンス、児童カウンターは正規の職員が担当
・非常勤職員は48人(16日、8h、司書もしくは図書館経験者)
・正規職員は10年前には100人いたが、だんだん減ってきていて来年度には30人に
館内見学の感想
・CDにもICタグが貼り付けてあり、本と一緒に貸出できる。自動貸出機は5秒程度で手続きが終了する。
・YA(ヤングアダルト)は担当を置いて一つのコーナーとして設置している。

図書館流通センター(TRC)見学
新刊MARCの作成手順
・新刊書が一日に2便送られて来る。近刊情報ですでにある程度入力されているものもあるのでまずは情報のあるものと無いものを分けてから表紙の撮影、データの作成に入る ・分類、件名班が分類と件名を付与
・目録班がMARC作成。簡単なエラーチェック(カナ形や数値形の忘れなど)は機械側で自動チェック
・印刷したデータリストと本体とで別の人が再チェック
・他にもヨミだけや全集の価格がそろっているかなど9回チェックしてデータは完成
・その後、目録カード形式での校正、「週間新刊全点案内」形式による校正を経てTooliに登録
目次
・目次の作成は専門書と児童書のノンフィクションのみ。目次をスキャナーで取り込みテキスト化したものを現物と確認しながら修正する。
内容細目
・内容細目は499タイトルまでしか入力できない(それ以上は「ほか○編」)
・内容細目の著者の典拠を確定させるのが難しい
・典拠については典拠班があり、インターネットや書籍を使って調査して確認
その他の部署
・特注班:各図書館、大学の注文に応じたオリジナルのMARCを作成。このMARCは累積データには登録していない
・遡及班:ここは特注とは違い現行のTRCの規則どおりに作成する。依頼される資料は地図、図録、地域資料など

Q&A
Q:TRCの職員は図書館経験者はいるか。
A:それについては解らないがそのような人が多いのではないか。

Q:典拠作成についての苦労話や裏話的なものは
A:韓国人や中国人は日本語読みもあるので典拠を作るのが難しいといっていた。

Q:TRCの図書館業務委託について、この中のどの部署が担当しているか?
A:それについては解らない。
(進藤)
別の部署で担当しているのではないか?TRCは人海戦術で業務をこなしているので弊害としてパートで働いている人が多いと聞いた。

Q:ICタグについて、蔵書点検はどうしているのか?
A:接触させなくてもデータを読み取れるので棚の前で機械を動かすだけで蔵書点検が終了する。そのため特に蔵書点検のために休館しなくてもよくなる。

Q:ICタグの値段は?
A:本に繰り返しつけられるICタグについては一枚4円だと聞いた。バーコードの費用よりはかなり高いようだ。
(小山)
ある市立図書館ではバーコードとICタグを多数の本で併用しているようだが、特に問題はないようだ。



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