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学習会記録(第148回)

日時:2007年9月20日(木)
出席者:13名
内容:「京都府立医科大学附属図書館の情報リテラシー教育10年」
発表者:山下 ルミ(京都府立医科大学附属図書館)

京都府立医科大学の利用者教育の歴史とその内容について、発表された。
*詳細は配布資料参照

1.はじめに
京都府立医科大学で、図書館利用法の授業を学生に対して行なうようになったのは平成9年のことである。それから10年がたち、電子化資料が登場し、インターネットは爆発的に普及し、なくてはならないものとなった。また、大学図書館は利用者教育の充実を図るようになってきた。

*ここでの「利用者教育」は図書館員が関わって実施される指導的なサービスや活動をさす。

2.京都府立医科大学の構成員
医学部のみの単科大学で医学科、看護学科があり、附属病院も持つ。構成は教員300人、看護師700人、そのほかの職員400人。学生は学部1,000人、院生が300人である。
図書館のサービス対象者はこれらの構成員のほかに医療従事者、京都府民である。

3.図書館の新館オープンと医療技術短期大学
平成4年、図書館の新館がオープンした。これによりシステムを整備し、ハード面が充実したので次の目標として資料の充実、利用者教育の実施などソフト面の充実に取り組み始めた。

*京都府立医科大学におけるMEDLINE
MEDLINEとは米国国立医学図書館の作成する、ライフサイエンス分野における最も基本的な文献データベースである。京都府立医大では冊子体の創刊号から所蔵している。また、1983年からはオンライン検索できるMEDLARSを導入し、CD-ROM版を経て、現在はインターネット版が使用されている。
なおPubMedはMEDLINEの無料版となっている。

4.京都府立医科大学附属図書館で行なっている利用者教育
<オリエンテーション>
・医学科1年生と看護学科新入生に対して実施。医学科は1年半の間は花園キャンパスで学び、本館にしばらく来ないため花園で実施。
・2004年から研修医制度が変更になって京都府立医科大出身以外の研修医が医大に来るようになったので、研修医にもオリエンテーションを実施している。
・看護学科1年生には、利用案内と館内ツアーを実施。
<図書館利用教育(授業)>
・医学科2年「図書館利用法」1997年より実施
授業が広小路キャンパスに完全に移るため、利用方法を改めて案内。
内容は2005年までは、最初に全員を集めて利用方法説明と施設案内を行い、次は20人ずつに別れ5回(計100人)、OPACで図書資料を探す実習を行なっていた。しかし2005年からは実習の時間はとれず説明と案内のみとなった。
・医学科3年「図書館利用法」2001年より実施
3年生では図書資料だけではなく、雑誌論文の探し方も覚えて欲しいということで、医中誌Web、PubMedの検索方法の説明と実習を行なっている。10人ずつに分けて10回(計100人)実習する。
・看護学科1年生「図書館利用法」2005年より実施
内容は医学科2年生の授業とほぼ同じプログラム
・看護学科2年生「図書館利用法」2005年より実施
看護学科の生徒は国内雑誌の利用が中心のため、医中誌Webの検索方法と実習を中心に雑誌論文の探し方を身につけてもらう。
・看護学科3年「研究方法論」2004年より実施
研究方法論の中の2コマを借りてデータベースの説明を行なう。医中誌Webを中心に、2007年は「雑誌記事索引」を取り上げたが、実際に使用している人は少なかった。
<データベース講習会(図書館員による)>
2000年頃から、図書館によるPubMedの講習会を行なうようになった。その後、医中誌Web、OPACの講習会も定期的に行なうようになった。当初は図書館で行なっていたが、図書館が大学や病院と離れているため、利用者の便がいい大学のコンピュータ室に場所を移したこともある。最近は参加者は少ない。
<データベース講習会(業者による)>
2001年から実施。PubMed等のデータベースの結果を取り込み、引用も投稿する雑誌の書式に合わせて出力してくれるソフトEndnoteの説明会を業者に依頼して年1回程度開催。研究者の間で広く使われているソフトのためかいつも盛況である。
その他、JCR(インパクトファクターが判るデータベース)、Ovid、MEDLINE、Web of Scienceなど、図書館にないデータベースも含めて業者に依頼して説明会を開いている。
<出前講習>
利用者のニーズに合わせて講習会を行なえるように2004年から「出前講習」を開始した。

5.現状と課題
ここ2,3年で図書館側が時間と場所を決めて開催するデータベース講習会への参加者は非常に少なくなった。2000年には大盛況であったPubMed講習会も2004年には1人しか来ない回もあった。理由には医療従事者が忙しい、検索方法をほぼ覚えたと感じている、時間が合わない、広報活動が足りない等が考えられた。そのための対応策としてまずは医療従事者のニーズに合わせていくために、出前講習がスタートしている。

6.今後の展望
今後は次のような対応を通じて、図書館員の持つスキルと、利用者の身につけたいスキルの橋渡しをしていきたい。
・利用者のニーズを知るためのアンケートを実施する。
・データベースの検索マニュアルを図書館の目だつ所に置き、Web上でも公開する。
・出前講習の広報活動を積極的に行なう

Q&A
Q:PubMedとMEDLINEを併用している意味はあるのか?
A:PubMedは無料なので急に提供を中止される可能性もある。そのため何かあったときの保険に併用している。他の大学ではMEDLINEをなくしているところもある。
・京都市立病院ではPubMedができたときにCD-ROM版のMEDLINEはなくした。JDreamUという総合データベースと契約していて、これで医中誌WebやMEDLINEも検索できる。

Q:学外の直接来館者に対しての講習は何かしているのか?
A:OPACの説明などはしている。データベースについては学内のみの利用となっているので学外の人への講習は行なっていない。



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