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学習会記録(第146回)

日時:2007年6月21日(木)
出席者:7名
内容:「国勢調査の歴史−国を挙げての大事業−」
発表者:藤原 直幸(京都府立総合資料館)

京都府立総合資料館での所蔵資料紹介(展示)、「国勢調査の歴史」開催(平成19年 6月14日〜7月10日まで)にあたって、第1回国勢調査の様子を中心に、国勢調査の歴史について紹介する。
*詳細は配布資料参照

国勢調査とは?
・日本国内の人口、世帯、就業者からみた産業構造などの状況を地域別に明らかにする統計を得るために行われる、国の最も基本的な統計調査。
・国勢調査から得られる各種統計は、国や地方公共団体における各種の行政施策を立案するための基礎資料として用いられることはもとより、国民の共有財産として研究・教育活動、経済活動など幅広い分野で利用される。

その歴史
・人口の調査は古くは古代ローマから行われ、日本でも第10代天皇、崇神天皇によって行われている。
・近代までの調査は、すべての人口を調査せず、納税、徴兵等の目的を達成するために必要な人だけを調査していた。

近代人口センサスの要件
・17世紀に入ると、行政の基礎としての周期的な人口調査の必要性が説かれ、近代人口センサスの幕が開いた。
その要件は
(1) 特定の目的のために情報収集するものではないこと
(2) 調査対象のすべてを数え上げること
(3) 特定の時点における調べであること
を備えていること。

日本における近代センサス実施までの流れ
・甲斐国現在人別調(明治12年)
 全国調査の本実施の前に、具体的な実施方法、調査の問題点、調査経費等の大体の目途を知るために行なわれたもの。
・国際統計協会から、世界人口センサスへの参加の働きかけ(明治28年)
・国勢調査ニ関スル建議が可決(明治29年)
・国勢調査ニ関スル法律が、成立、公布(明治35年)
・国勢調査施行ニ関スル建議が可決(大正6年)
・国勢調査の経費が認められる(大正7年)
・第1回国勢調査実施(大正9年)

第1回国勢調査の様子
・講演会の開催
 国勢調査の実施にあたって、国勢調査局が設けられ、その長官以下が班を組織して宣伝講演会を開催。
 さらに、貴族院議員であり統計学社社長でもあった柳沢伯爵が、自社の社員をひきいて、各府県を巡回し、講演会を開いて国勢調査の趣旨を普及。
・各種会合の利用
 小学校教員、青年団員などの援助をえて、宣伝隊を編成し、車上で街頭演説や、航行中の船で海上講話を行った。
 また小・中学校において国勢調査の科目を設け、申告書記入方法を練習させるなど、学生生徒を通じて一般家庭に普及させた。
・宣伝ポスターの掲示
 臨時調査局、各府県ともデザインを凝らしたポスターを作り、各所に掲示した。
・映画等の利用
 映画や演劇、余興等で観衆に興味を引かせ、調査の事項や、その目的や方法の概略について理解させた。やはり目から入るものが一番宣伝効果が強いようだ。
・その他
 記念スタンプ、絵葉書、切手も発行され、宣伝行列・都都逸等の替え歌での宣伝、男女予想人数の懸賞募集、国勢調査資料展覧会の開催なども行なわれた。

第1回国勢調査の調査方法
・10月1日午前0時現在の「居た場所」で記入(住んでいる所ではなかった)。
・調査地域
 当初は「朝鮮、台湾及び樺太を含む帝国の全版図」で行なうと決められていたが、朝鮮は情勢不安のため、実施されずに代わりに臨時戸口調査が同じ期日で行なわれた。法律で決められていなかった他の地域(関東州や南洋諸島)でも同じように戸口調査や島勢調査などが行なわれた。

実施年数
・当初国勢調査は10年ごとに行うことになっていた。しかし、基礎資料として不十分であるとして、大正11年に5年ごとに行うことになった。

最近の国勢調査の問題について
・平成15年に成立した個人情報保護法により、プライバシーの意識が高まったことや共働きや単身世帯等の不在がちな世帯の増加により、平成17年の調査では調査票の回収がかなり困難になり、調査員が訪問しても調査票を提出してもらえない世帯が多かった。
 また、平成17年調査では封筒を配り、封入しての提出も可能となったがこれもいろいろと混乱が見られた。
 総務省の行った有識者懇談会の提案では次回の調査では郵送での回収やインターネットでの申告も認めようという提案もあった。また調査方法と調査項目の見直しも検討されている。

Q&A
Q:京都府立総合資料館(以下、資料館)で展示中の国勢調査関係資料は、手にとって見ることができる?
A:できる。

Q:資料館での所蔵資料紹介は、どのくらいのペースで行われているか?
A:現在のところ、2ヶ月に1回位。昨年度から始めたばかりの事業なので、まだはっきりとは決まっていない。

Q:所蔵資料紹介のために、特別に予算がつくのか?
A:つかない。

Q:資料館で統計書の利用は多い?
A:資料をまとまって所蔵しているので、必要としている人が来館して使っているという印象がある。

 今回の展示で、一般には知られていない書庫資料の紹介をした。

参加者の感想
・今の国勢調査は熱が冷めているようだが、それに比べて第1回国勢調査の際の盛り上がりはすばらしいと感じた。
・現在の国勢調査は調査項目が多様で、回答しにくい項目がある。



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