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学習会記録(第144回)

日時:2007年3月15日(木)
出席者:9名
内容:「公家の蔵書印のある図書」
発表者:西村 隆(京都府立総合資料館)

公家の蔵書印のある図書−京都府立総合資料館文献課所蔵旧分類図書群中における広橋・日野・東坊城等の旧公家の蔵書印を有する図書についてのちょっとした紹介

0.きっかけ
 明治43年6月17日受入の「広橋蔵書」印のある旧分類図書が多数あることに注目。公家の蔵書印を有する図書を調査することで、旧分類図書の成り立ちを解明できないか。
*旧分類図書…京都府立図書館において昭和25年以前に収集・整理された図書。現在は特別書(稀少図書や高額図書)、和装本(江戸期までの和綴)が資料館所蔵、洋装本が図書館所蔵となっている。

1.ねらい
(1)学会への紹介
 先行研究ではほとんど未調査の資料群。
(2)府立図書館史への一歩
 京都府立図書館設立から100年以上経つのに詳しい館史がない。
(3)MARC化にあたっての予習
 旧分類図書約5万冊中、MARC化されているのはわずか。

2.手法
 旧分類図書の総覧(この手法の場合、ブラウジングできない府立図書館自動化書庫収蔵の旧分類洋図書がネックになる)

3.紹介(資料館紀要35号) 
 資料館所蔵図書に捺されている公家蔵書印の種類
☆日野流 広橋 日野 柳原
☆勧修寺流 勧修寺 坊城 中御門 葉室
☆摂関家 鷹司 二条
☆閑院流 滋野井 今出川 高松 梅園
☆花山院流 大炊御門
☆四条流 山科
☆菅原氏 東坊城 桑原
☆村上源氏 六条 中院
☆宇多源氏 庭田
☆正親町源氏 広幡
☆清原氏 舟橋 伏原
☆大中臣氏 藤波
など
*蔵書印の見方について解説し、各家の代表的な蔵書印を紹介。
*紀要掲載予定の目録は、NCRを基本に、外題(表紙)を重視(日記が多いことから)し、原物の記述を大切にした。

4.終わりに
 今回の調査を手始めに、京都府立図書館初期の資料についてより詳しい研究を進めていきたい。図書原簿の復元や、旧府立図書館図書の移管の流れなどを通して、府立図書館&資料館史の解明を目指したい。
 また、図書館に入る前の所蔵者や、公家間での転写の系譜、他機関所蔵の旧公家蔵書を調べてかつての京都書籍所在状況をバーチャル復元する試みなど、やってみたいことはいろいろある。
 図書館と文書館は保存に対する視点が違い、文書館が1つの資料群をかたまりとして保存するのに対し、図書館は、かたまりで受け入れた図書も現在の視点で分類していったんばらばらにしてしまう。しかし、テーマ別の資料群が新たに形作られるという点では、主題横断での利用の仕方には優れる。
 古典籍は日本文化の集積である。電子化がいくら進もうとも、最古のハイテク素材である紙と墨、そしてそこに記録された漢字かな文化を捨ててはならない。
 現在、司書の「探す人」としての役割にスポットがあたっているが、資料を引き継いでいく、古いものを次の世代へ、という視点に欠けているのではないだろうか。

[Q&A]
Q.古い時代の古書店の売り立て目録は資料館にあるのか?
A.あるかどうかは確認していないが、現物に残る、古書店が介在した痕跡が調査の手がかりになるとは思っている。

Q.京都府の図書館史を作る試みは現実化しないか?
A.府立図書館で80年史を作る試みはあったが、霧散したようだ。
 個人的には、まずは過去の原簿などにあたって、これまでの府立図書館の経過をどの程度探れるかやってみたい。資料館と図書館に関しては、両館で蔵書の移動があったことが、館の歴史をたどることを困難にしている。




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