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学習会記録(第142回)

日時:2007年1月18日(木)
出席者:9名
内容:「これからの病院図書館〜求められる医療情報とサービス」
発表者:藤原 純子(洛和会音羽病院図書室)

内容:発表者が勤務している病院図書館の現状や課題を発表した。

洛和会音羽病院の紹介
・急性期医療を中心に早期回復を目指す地域の中核病院:「洛和会ヘルスケアシステム」の医療部門(音羽病院・丸太町病院・外来のクリニック4つ)、病院以外にも看護専門学校、医学教育センター、保育園、介護事業など幅広く活動している。また2004年から始まった医師の臨床研修の指定病院にもなっている。

洛和会音羽病院図書室の紹介
・1996年看護学校内に設立、2004年に現在の場所に移転。
・面積132.99u、座席数24席、利用者用PC1台。担当者は司書が1人。
・蔵書数:単行書は10928冊(内8896冊は医学、看護図書)、雑誌は288タイトル
・分類:医学・看護はNLMC(米国国立医学図書館分類法)、一般図書はNDC9で分類している。
・利用者層:医師・研修医、看護師、患者、地域医療関係者、一般利用者(お見舞い、近隣在住など)
・主な業務:貸出・返却、ILL業務、図書・雑誌の受入など

患者へのサービス
・貸出サービス開始前に行った、入院患者アンケート(2006/4〜9)より貸出と巡回サービスの希望が多かった。またアンケートで読みたい本のジャンルも聞いたが小説や旅行に関する本など、気分転換になる本の要望が多かった
・そのため2006年6月より、患者への貸出を開始(それ以前は閲覧利用に制限。)
・利用状況:利用登録者58名、貸出総冊数222冊(2007.1.10現在)
・レファレンスは一日一件あるかないか。内容は検査の数値の意味や退院後についてのレファレンスが多い。

地域医療支援
・地域医療支援病院に向けて、山科医師会に所属する開業医を対象に貸出サービスを開始予定
・事前アンケートでの反応:101件中61件からサービス希望があった

病院図書室:設置の目的と役割
・平成9年に医療法が改正されるまでは「総合病院は図書室を設置すること」が定められていた。今は地域医療支援病院に関しては必須の施設と定められている。
・役割:職員の研究支援、福利厚生のため、患者への情報支援

病院図書室:近年の変化
・「病院機能評価」:医療の基盤や機能を第3者である「日本医療機能評価機構」が評価をおこなう。医療機関の希望制で評価してもらう(有料)。この評価の中に図書室の機能についての項目がある。
・医師臨床研修制度:2004年に施行された。研修医受け入れ施設となる「臨床研修病院」の指定基準に図書室と司書の配置が定められた。
・患者への情報支援:医療情報の開示やインフォームドコンセントが重要になってきたので図書室が必要となった。

京都市内の病院図書室の現状
・市内には近畿病院図書室協議会加盟の病院図書室は13室ある。ただ他にも存在する可能性はある。
・開かれた図書館はまだ少ない:府内では京都南病院が1970年に日本で最初に患者図書サービスを開始。

病院図書室のこれからの課題
・めまぐるしく変わる医療現場への対応:制度の変化で施設ができたり、雇用状況が大きく変化。
厳しい司書の雇用状況:病院図書室の職員はほとんどが嘱託や派遣。またひとり職場なので、継続して図書室を発展させることが難しい場合もある。研修に行ったり発表したりして図書室が有効であることを常に示さないといけない。

病院図書室、今後の可能性
・変化する利用形態への対応:雑誌のオンライン化による医師離れがあるが、うまく対応していければ発展する可能性もある。また医療情報の提供という点ではEBM(Evidence Based Medicine:根拠に基づいた治療)実践のための情報検索指導者としての役割も期待されている。

Q&A
Q:図書委員会の開催の頻度はどのくらいか?
A:去年は利用者貸出開始のため月一回程度だったが、今は図書の購入や重要事項の決定の時に開催して検討している。委員は昔は院長などが参加していたが、今は教育者がメインとなっている。

Q:レファレンスで医療関係のものが中心だと思うが、どのように回答するのか?
A:患者からは「わかりやすいもの」という声が多い。当室では専門書が多いので対応できず、公共図書館を紹介することもある。

Q:ひとりの職場と聞いたが整理とカウンター業務の配分はどうしているのか?
A:どの業務も満遍なくしている。利用者が少なく、カウンターに来る人も少ないので受け入れと整理にも時間を割いている。文献検索もオンラインで閲覧できる雑誌やデータベースが増えたため昔よりは少なくなって、一週間のうち依頼のない日もあるようになった。

Q:患者向けに図書を購入予定とあるが、闘病記は購入するのか?
A:闘病記までは手が回っていない状況である。寄贈された本の中にあったものぐらいしかない。

Q:寄贈の受け入れについて、装備はどうしているのか?
A:全部自分で整理・作成している。装備は移転した時から抗菌対策にブッカーをつけている。

Q:月にどのくらい寄贈があるのか
A:寄贈は月によって変動するが単行本は月に10冊ぐらい。雑誌の受け入れがほとんどである。

Q:購入の選考はどうしているのか?
A:予算が多くないのでスタッフからの依頼、提案を元に購入している。見計らい等はしていない。司書が選書することもなく、あっても専門家の意見を聞いている。

Q:広くないので図書の廃棄はあると思うが、どうしているのか?
A:規定で単行書は20年で廃棄、雑誌は5年で廃棄となっている。移転時に雑誌は発行してから5年たった分は廃棄した。移転後はまだ廃棄していないので7年分ぐらいは所蔵している。科によっては古いほうがいいときもあるのでその辺りは考えないといけない。廃棄前に譲渡はしようと思っている。

Q:利用者の多い地域はどこか?
A:通院は市内や大津の辺りまでが多い。貸出登録の際には住所がわからないようになっているので良くわからない。丸太町病院との患者の行き来は可能だが、実際にはない。



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