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学習会記録(第141回)

日時:2007年11月16日(木)
出席者:6名
内容:「平成18年度全国図書館大会参加報告」
発表者:辰巳 裕佳(京都府立図書館)

平成18年10月26日〜27日に岡山で開催された全国図書館大会の参加報告と岡山県立図書館の見学について写真を交えて発表された。

第一日目
基調報告
「図書館界この一年の概観」 塩見昇氏
・教育基本法改正案
・自治体合併の影響と課題
 3000から1800程度に減っているので設置率は上がっているが、分館化などで内容は疑問が残る
・管理運営問題
 静岡図書館の事例(図書館雑誌2006年12月号)
・文字・活字文化振興法の理念の具現化
 施策との乖離が見られる。具体化の例、日本図書館協会「豊かな文字、活字文化の享受と環境整備−図書館からの政策提言」
・図書館サービスの組織的連携・協力
 大学図書館を含めた連携の強化を
・「人」をめぐる動き
 図書館界の2007年問題、技能継承の危機。非正職員の増加

記念講演
「物語の日々」 あさのあつこ氏
・1954年美作市生まれ、現在も在住、岡山を舞台とする作品を多数発表。
・作家になったのは一冊の本との出会いがきっかけ。
・物語のもつ力は大きい。どんな小さな町の子供であっても運命の一冊と出会えるような環境にしてほしい。そのために図書館にも頑張って欲しい。

第2日目

第1分科会 公共図書館(文字・活字文化振興法と図書館経営に関して)
基調報告
「文字・活字文化を実効のあるものにするために」 大串夏身氏(昭和女子大教授)
・文字・活字振興法成立後の展開
 OECD調査、NHK生活実態調査での日本における読書の現状は低迷している。
 「文字活字振興法案について」文書 日本図書館協会(2006年7月8日)、「豊かな文字・活字文化の享受と環境整備−図書館からの政策提言」日本図書館協会(2006年10月)
・文字・活字振興法を具現化するために
 資料費の充実が重要、図書館をすべての市町村に、専門職の採用・配置・育成が必要。

「多様化する図書館経営と今後」 西野和夫氏(神奈川県川崎市立中原図書館館長)
・指定管理者制度の現況(2006年4月日図協調査)
 採用(予定含む)自治体86(採用は民間14NPO11公立法人22)導入しない表明をした自治体340 図書館設置自治体数は1567なので1000以上の自治体が態度未表明
 指定管理期間が切れる3〜5年後に大きな動きが予想されるので、それまでに議論を深める必要性がある。
・公共図書館、8年間の推移
 図書館数、貸出し冊数は増加、しかし正規職員数は減り、非正規職員が増加する現状。直営でも大きな問題を含んでの経営となっている。
・川崎市の事例
 指定管理者制度は当面導入せず。職員の60%司書資格あり、40%が50代以上。インターネット予約開始後に予約数が4倍(年間100万件)になったため物流・カウンター業務に委託を導入。
・直営図書館はサービス指標を市民に提示、指定管理者は今はコスト削減が目的だが、新たな視点・サービスの提示、十分な運営費の確保が必要
・図書館団体は早期のガイドラインまとめを

「図書館の危機管理」中沢孝之氏(群馬県草津町立図書館主査)
<4つの前提>
@利用者・職員・資料・施設を守る
A危機を防ぐ
 挨拶や職員意識の向上、館内に暗い所や死角を作らない。
B危機を拡大させない
 見てみぬふりはいけない
Cマニュアルの見直し、作成
<5つのキーワード>
@護身術(防犯ブザーなどをトイレに置いておく)A救急救命法(AEDなど)BCS(顧客満足・サービス)C事例の収集と共有・蓄積、HPの活用(他県でも同じような事例があるかもしれない)D資料保存

第1分散会
事例発表
「くらしに生きる図書館を目指して−兵庫県加東市滝野図書館−」直井勝氏
・1996年3月開館、本屋も家庭文庫もない所で職員6人でスタート。
・「ニコニコ」、「ウロウロ(フロワワークをやっていく)」、「メモを取る」をモットーに。
・魅力ある蔵書構成のために子どもたちにもわかる郷土資料の作成、新着図書案内を全戸に配布(現在は広報)。
・2006年4月に4館合併、新市の図書館像が不明確、館によって温度差、地元からなじみの職員がいなくなった、利用、貸出は横ばい状態。

「岡山県立図書館のめざすもの」 岡長平氏
・平成16年9月新岡山県立図書館開館
・平成17年度利用状況(一日平均)利用者3447人貸出冊数3641冊。開館前の目標数値を大幅に超える。
・主題6部門制(参考、人文、社会、自然科学、児童、郷土)による調査研究機能の充実
 配架、書庫入れはアルバイト。職員はレファレンス、選書を担当。職員数は100人位(うち正職員は40人)
特色あるサービス
・図書館ネットワークサービスの構築
 横断検索システム(情報)+資料運搬システム(物流は宅急便)
・電子図書館機能(岡山デジタル大百科)の充実
・資料の充実(新刊図書の70%を収集)
 児童書はここ2年間で出版された全点を収集し、児童書研究室に配架して研究者、図書館関係者、保育関係者の選書の助けにしている。(一般の閲覧貸出資料は別に選書)
・太陽光発電、免震構造を採用。
・収蔵能力 開架30万冊、書庫200万冊(うち自動化書庫90万冊)、閲覧席400席

以下、県立図書館の見学写真を見ながら説明。
・メディア工房(デジタル資料を収集・加工できる施設)、サークル活動室、多目的ホールは有料で市民に貸し出している。メディア工房で作成された資料はデジタル岡山大百科に登録される。
・貴重書庫は室温24℃、湿度50%で管理
・郷土資料コーナーのそばに、個人・グループ研究室あり。
・各部門ごとのテーマ展示、パスファインダーの資料が豊富
・利用者を考えた配架(時刻表と電話帳、地図を一箇所に置くなど)
・AV資料専用返却ポストあり。

質疑応答

Q:書庫の構造は?
A:入庫にはセキュリティ認証が必要。3階と4階部分に書庫があり、3階が自動化書庫と固定書庫、4層は2層の集密書庫となっている。

Q:免震構造以外に何か地震対策は?
A:安定感のある書架を採用し、書架間隔も広く開けられている。

Q:展示している図書は貸出可能か?
A:貸出しているようです。



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