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学習会記録(第140回)

日時:2006年10月30日(月)
出席者:12名
内容:「ナカバヤシ製本工場見学ツアー」

ナカバヤシの製本工場のうち、兵庫工場(養父市大屋町)と関宮工場を見学し、雑誌製本や古書の補修などの工程を見学した。

工場概要
・兵庫工場:雑誌の製本、和書の補修や額装などをしている。
・関宮工場:雑誌、新聞の製本、洋装本の修理やちつなどの保存箱の作成。
・ピーク時は7千冊/日の生産量だったが、電子化が進んできたことにより生産量は減ってきていてる。

工場見学
兵庫工場:雑誌製本
A:送られてきた本を過去の製本したデータと照合して製本の方法、背のタイトルなどの情報を資料に添付する。
データは背をコピーした帳票(一部は電子化)になっていて各大学ごとに分類されている。
B:各タイトルごとに照合し、添付された帳票の裏に年号や巻号の指示を入れる。
その後いらないページ(広告のページ等)を手作業ではがし、背の糊を研磨機に掛けて落とす。
C:ばらばらになった冊子を綴じて見返しをつける。背の綴じ方は2種類ある。
・オーバーソーイング綴 専用の機械で少しづつ綴じていく。堅牢だが、本の厚みが増す欠点がある。
・ミシン綴 ミシンで数枚ごとに綴じ、圧着式の糊で接着する。直線綴とジグザク綴(糸が背にも回っているので糊が背につけられ、ページが開きやすい)がある。
D:装丁に特殊な文字(手書きや独自のフォント)が使われている場合、文字は製版室においてコンピューターでデザインし、凸版の版を作成する。この時、なるべく一枚の板に多くの文字が入るように配置する。
E:表紙に使うボール紙を本の大きさに合わせて裁断する。
各冊ごとに計測して機械が自動で裁断する。計測は間違って裁断されないように裁断機とは離れた位置で計測されている。
F:背を丸く形を作る。(機械作業)
G:背の厚みを計測してボール紙を選ぶ。更に本体と照合できるように番号を両方に印刷する。
H:花布、寒冷紗をつける。(これも機械で自動で選別して行っている。)
I:表装紙の紙の色を選んでボール紙に膠で貼り付ける。指定の大きさに裁断し、縁を折る。
J:背に箔押しをする。(上下にある横線)このとき共通のもの(大学名とか)も押す。
K:巻、号数、年を入れる。同色で規定どおりの場所に文字を入れる場合は1箇所ずつ押せる機械4台でつくる。(ターンテーブルのように周り、一周すると完成する。)場所が規定外や色が何色もある場合は一度に4箇所とも押せる機械で行う(画面にイメージ画像が出るので確認しながら作業する)。分けているのは効率のため。
L:タイトルを専用の機械で刻印する。機械にはほとんどのタイトルが押せるように活字がそろえられている。
ただし、洋字の書名などは別の機械で活字を組んで刻印したり、デザインして対応する。この場合は手作業で昔ながらの機械を使って刻印される。
M:表紙の背を丸め、熱をかけて本体と接着する。(表紙には膠が付いているので熱で溶けてくっつく。)
最後に検査をして完成。

軸装などの補修・作成見学
古文書の表装
・すべての資料に対して修理の記録をとっている。
・修理製本でも特に破損がひどいものはここで修理されてから雑誌の工程に回る。
・脱酸化もしている。方法は炭酸水素マグネシウム水溶液に一晩程度つける。
・漉き嵌めもここで行っている。下からバキュームで水分を吸い取るやり方なので全体を水につけずに行うこともできる。また裏打ちと違い、両面印刷されたものでも印字が見えなくなることもないので、新聞や洋書の補修もできる。

関宮工場
新聞製本の説明
・大きいので裏返すときなど補助具を使っている。
・新聞の綴じは手作業で製本している、部数が少ないので資料ごとに人がついて作業している。
ちつ、たとうなど保存箱の作成見学
・少しでも狂うと用を成さないため一点一点手作業で作成。
・保存用の箱も手作業。(作図はパソコンでして形は機械が自動で切り取ってくれる)
・ほかにもはとめ付き表紙や堅表紙(一枚モノの整理に使う)もここで作成している。
古い図書の修復
・修復の基本は元々の装丁のイメージを変えない。
・そのため元の表紙を新しく製本した表紙につけることもある。

質疑応答
Q:工場というよりは職人の雰囲気があるが、仕事は何年かごとにローテーションしたりしているのか?
A:ローテーションで回しているが、それぞれ重要な人は固定にしている場合もある。ある程度(何年かごとに)いろんな仕事をしてもらうようにはしている。一日のなかでローテーションしたりはしていない。

Q:正規職員は何人ぐらいいるのか?
A:関宮はパートが3人であとはすべて正職員。アルバイトは普段はいない。(忙しくなると雇うときもある。)兵庫はパートが15名。もちろんパートの人にもスキルアップの研修は行っている。

Q:ジャーナルの合冊製本に関して本の厚さはどの程度が一番よいのか?
A:ミシンでの製本は5cmでは型崩れをおこすので、実際にはバランスを見てからになるが4cm以下の製本がこちらとしてはいいと思う。再度製本するときはオーバーソーイングは全部はずして一からなので多少破損する。ミシン綴は背をはずして壊れた綴じだけ直せるので本には優しい。

Q:製本を頼むと出来上がるまでに一ヶ月程度かかるが、忙しさによって期間は変わるのか?
A:端的に言うとそうです。忙しいと倉庫で待っている時間が長くなるので遅くなってしまう。5,6月と10〜1月は少ないので早くできあがると思う。

Q:先ほどローテーションの事を聞いたが、ひとつの仕事を長くやっているベテランの職員もいると思うが?
A:関宮工場の古い図書の修復を担当している人はすべて一人作業ということもあり、熟達している職員が多い。30年位やっている人もいる。

全体の感想
工場は田舎にあり、空気が綺麗な所であった。働いている人はほとんどが地元の人だということだったが、親切でわれわれが工場に着いた時出迎えてくれたのが印象的だった。雑誌の製本は流れ作業で行っているが、作業工程が多くの部分で手作業であり、またわれわれが質問しても常に親切に楽しそうに答えていたのを見て、そこで働いている人がこの仕事に誇りを持っているのが良くわかった。
又、使われなくなった活字もいつか使うもしれないからといって置いてあったり、再製本は以前の形をなるべく保つように製本したりと昔の技術や姿勢を大切にしているようであった。
こういう環境で製本などが行われているのを見て、ここの人たちは本当に紙に対して愛着を持っているのだと思いました。



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