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学習会記録(第137回)

日時:2006年6月15日(木)
出席者:8名
内容:「国立国会図書館の医学文献所蔵」
発表者:山下 ユミ(国立国会図書館関西館)

前回の補足:国立国会図書館の採用について、資料修復を手がけている職員は専門職として採用され、通常の人事異動の対象とはならない。採用状況の詳細については、http://www.ndl.go.jp/jp/information/employ_statistcs.html を参照。

今回の発表内容は7月に医学情報サービス研究大会で正式に報告される。

〔研究のきっかけ〕
 国立国会図書館は科学技術関係資料の収集に力を入れており(平成18年度当初予算は約10億円)、中でも洋雑誌(電子資料含む)は資料費に大きな割合を占めている(約7億円)。しかし、国会図書館の洋雑誌所蔵の多さはあまり知られていない。ILLの遅さ、NDL-OPACの使いにくさがその原因として考えられるが、国立国会図書館が所蔵する資料の有効性を広く訴え、活用を促そうと今回の研究に取り組んだ。

〔目的〕
@NDLの医学分野の洋雑誌の所蔵状況を明らかにする。
  (臨床分野が弱いという噂は本当か?)
ANDLの所蔵資料は医学図書館にとってどれだけ役立つか。
B医学図書館以外(一般開業医など)への提供は有効か。

〔方法〕
@NDL-OPACのダウンロード機能(職員仕様)を用いて所蔵タイトルを抽出する。
 ・NDLCでZS(医学・薬学)の分類がつけられた雑誌を取り出す。
A医学分野内の主題別所蔵数の分布状況を調べる。
B国内の大学図書館所蔵と比較する。

〔結果〕
○分類にZSが含まれる継続刊行中資料・・1666タイトル

○医学雑誌の主題別分布
 ZS 〜9まで基礎分野
 ZS 16〜から臨床分野
 特に所蔵数が多いのは、ZS21内科(172)、ZS8解剖学・生理学・生化学(126)、ZS9病理学その他(170)など。
 →基礎分野、臨床分野での偏りは見られないように思える。

○Ulrich's Periodical Directoryによる分類
Ulrich's Serials Analysis Systemによって分析(分析対象は収録タイトル1411誌)。
 Medical Sciences(医学)に分類される828の内訳
 →特に多いのは臨床医学(199)、精神科学(107)

○PubMed収載誌との比較
 Ulrich's Periodical Directory掲載タイトルにおける割合
  PubMed収載誌の割合・・27%
  NDL所蔵タイトルの割合・・5%

○内科分野の雑誌の所蔵
 内科学に分類されるNDL所蔵雑誌172タイトルについて、大学所蔵との比較サンプルとしてWebcatでのヒット数を調べた。
 →Webcatあり・・157タイトル なし・・15タイトル
 →ヒットした157タイトルのうち、17タイトルは所蔵館が10館以下
  (継続受入中が1館・・7タイトル)
 →ヒットしなかったタイトルは15/172
  NDL所蔵の医学雑誌1666タイトル中では、約145誌についてはNDLのみの所蔵であるとの推測がされる。

〔現段階での結論〕
・NDL所蔵の医学雑誌には、基礎分野に偏っている様子はなかった。
・他機関未所蔵タイトルは約150誌ほどあると思われ、これを維持することにより他機関を補完する役割をある程度果たしている。

〔今後の調査〕
・全医学分野でのWebcat所蔵との比較。
・PubMed収録誌、JCR収録誌との比較。

 *今後『薬学図書館』に研究をまとめたものを掲載予定

Q&A
Q.科学技術資料費というのは通常予算と別につくものか?
A.通常予算とは別(国立国会図書館HP財政のページ参照http://www.ndl.go.jp/jp/aboutus/outline_03finances.html)。また別に科学技術関係資料費がつくこともある。

Q.電子ジャーナル購入の内訳は?
A.詳細は未確認だが、web上で電子ジャーナルリストで購入しているものの一覧を見られる(約2万タイトル)。

Q. 国立国会図書館での電子ジャーナルの利用のしかたは?
A. 本文は来館しないと見られない。手続きはやや煩雑で、出力はプリントアウトのみ。データ保存は不可。

Q. Webcatでの電子ジャーナル所蔵状況は?
A. 電子ジャーナルについては確認していない。

Q. 内科学を比較対象のサンプルとして選んだのは?
A. もっとも一般的で所蔵数も多い分野だったので。



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