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学習会記録(第136回)

日時:2006年4月20日(木)
出席者:9名
内容:「平成17年度日本古典籍講習会参加報告」
発表者:辰巳 裕佳(京都府立図書館)

平成18年1月18日〜20日に国文学研究資料館、国立国会図書館であった研修についての報告をされた。

趣旨:日本古典籍の整理・目録化を促進し、書誌学の専門知識や整理方法の技術修得を目的とした研修をおこなう。
講義内容:
〔1日目〕
国文学研究資料館蔵和古書目録作成の現状
○「国文学研究資料館」
・大学共同利用機関法人人間文化研究機構(平成16年4月に組織改組)の一機関
・図書館部門として、図書資料の収集・整理・保存ならびに資料及び目録情報の提供をおこなう。
・「古典籍総合目録データベース」(http://base1.nijl.ac.jp/~koten/)
○和古書とは?
・国文学研究資料館の「和古書(日本古典籍)」の範囲:慶応4(1868)年以前に著作が成立した日本の書物
・国文学研究資料館展示:「和書のさまざま」 http://www.nijl.ac.jp/~koen/wa-1.htm
 和書の装丁や大きさ、題の種類など和書の基礎知識が紹介されている。
○国文学研究資料館見学
国文学研究資料館
・北館史料館書庫:こちらの方が古い。主に錦絵、写真、民具(モノ資料・約5千点)、特に貴重な古典籍等を収めている。
・東館書庫・マイクロ庫
資料の管理について
・資料保存の観点から、出入りの際には必ず履物を履き替え、室温・湿度も記録する
・書庫では冷暖房を用いず除湿器を設置。そのため夏には3Fなどで温度が38度ぐらいまで上がることも。
・書庫、閲覧室ともに紫外線防止仕様の窓ガラス・蛍光灯を使用
・図書ラベルは和紙製を使用し、複写の際のしおりも柔らかい和紙を指定

〔2日目〕
国立国会図書館の古典籍資料の管理について 
@古典籍書庫
・所蔵資料は約30万冊
・温度22℃±2℃ 湿度55%±5%
貴重書庫(Aランク書庫) 貴重書、準貴重書、別置本
 特別本書庫(Bランク書庫) 特殊なコレクションや洋書の準貴重書
 この二つには人が出入りするたびに作動する、特殊な空調設備がある。
普通本書庫(Cランク書庫) 一般和古書
マイクロ庫
資料の管理について
・書庫の出入りの際にスリッパを履き替える
・窓ガラス・蛍光灯は紫外線カットのものを使用している。
A閲覧室及び整理要領、及び修復の現場
・閲覧席は29席
・貴重書・準貴重書の利用は事前の申請が必要。複写は原則としてマイクロ撮影
・整理は、NCR1987年版改訂2版に準拠して独自のマニュアルを作成している。和古書書誌データベースは2003年1月より統合書誌データベースに移行されている。
・和装本の修理・製本業務(職員3人が専任)
おもに虫喰いの修復、地図(洋紙含む)の裏打ち、錦絵の台紙張替え(中性紙に)など。
○古典籍資料の電子化について
 *貴重資料を公開しているウェブサイトの例
   国立国会図書館 貴重書画像データベース 
                 http://rarebook.ndl.go.jp/
   独立行政法人国立美術館所蔵作品総合目録検索システム(試行版) 
                 http://search.artmuseums.go.jp/
   日本文学原本画像検索データベース
                 http://www2.juce.jp/Literature/UsrSrch.html

〔3日目〕
和古書目録の作成について
○和古書目録の作成
・参考資料
『国書総目録 補訂版』(岩波書店 1989)
『古典籍総合目録』(国文学研究資料館編 岩波書店 1990)
『日本古典籍書誌学辞典』(井上宗雄〔ほか〕編 岩波書店 1999)
『日本古典文学大辞典』(日本古典文学大辞典編集委員会編 岩波書店 1985)
『国書人名辞典』(市古貞次〔ほか〕編 岩波書店 1998)
「古典籍総合目録データベース」:『古典籍総合目録』の内容にその後の追加分を合わせ、冊子体未収録の詳細情報を検索できる。(『国書総目録』未収録の所蔵本中心)http://base4.nijl.ac.jp/~koten/
○各書誌項目について
書名:「統一書名」を採る。(『国書総目録』『古典籍総目録』を参考にして同定)
   書名を採用する箇所:外題(題簽、直書き、袋題)、内題(巻首、見返し、扉、目録、序跋、巻尾、柱)
   内題のほうが著者の意思を反映しているので採用する際には内題を重視する。
   異題は注記する。
巻数:書名に続けて書く(*内容の巻数であり、形態の冊数とは別)
著者:著者名は、巻首(内題下)、巻末、奥付などによる。
   書名と同様に統一著者名を同定する。
序文でわかるときは採用する。
出版事項:表示されている出版地・出版者をそのまま記載する。
原則として刊記から採るがその他、見返し、広告等の出版に関する記述を見て総合的に判断する。
 出版者・・記載されているすべての出版者を記入する。
 出版(刷)年・・その本が出版された年とする。(再刻、後刷の場合は再刻等された年を刊年とする。ただし後刷かどうかは難しく、経験が必要。)
形態事項:
 大きさ:表紙の右端の天地を測る(単位はセンチメートル)。
     特大本、大本、中本、半紙本などの書型に該当する場合は記入する。
 頁数:冊数、または丁数を記入する。
その他注記すべき事項:
 ・再刻等の場合の以前の出版者・出版年等
 ・綴・秩等の装丁については必要に応じて注記
 ・虫損・水濡れ・補修等の資料の保存状態
 ・資料が完本でない場合、残欠に関する事項
 ・刊(印刷)写(書写)の別
 ・蔵版者(版木の持ち主)、蔵書印、書き入れ、箱書き、極め札(鑑定書のようなもの)
○和本の装備
・バーコードは貼らない(資料と一緒に管理)。
・蔵書印も押さないのが望ましく、ラベル紙・糊も本体に影響のないものを使用する。
・長期的な保存計画を立てておく。
・切れた糸も資料になる。綴じなおした後も古い糸を保存しておく。
・メモ書き、きわめ札(鑑定書)、糸などの付属物の管理も必要(紛失を防ぐ形で)。
*和古書を扱うときの注意点
・手を洗い清潔にする。
・時計、装飾品ははずす。
・筆記用具は鉛筆。シャープペンならば太めの芯を使う。
!資料の扱いには、利用者以上に職員が気を使うこと

Q&A
Q:国文学研究資料館で3F書庫の温度が38度になるようだが、資料は大丈夫なのか?また燻蒸をやめたのはなぜなのか?
A:燻蒸をやめたのは環境に配慮したためときいている。その代わりに定期的な虫干しや、通常業務で塵などを持ち込まないように、より配慮するようになった。除湿機は全館に配置しているが、紙資料は3Fには置いていないようだ。

Q:国文学研究資料館の書庫の民具などは一般の人は見ることができるのか?
A:民具は企画展などに貸し出しているようだが、一般の閲覧はできないと思う。

Q:国会には修理、製本の専門員がいるようだが、その人は一般の職員として採用された後、移動で来ているのか?それとも大学等で専門性を身に付けた人を採用しているのか?
A:専門の人を採用がしたかどうかは聞いていない。若い人もいたが慣れた手つきだった。国会図書では一括で採用され、異動しながら専門性を養成するのが一般的らしい。



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