Home

学習会記録(第135回)

日時:2006年3月16日(木)
出席者:12名
内容:「市町村合併と図書館−京都府の場合−」
発表者:是住 久美子(京都府立図書館)

京都府内の市町村合併した自治体について合併後にどのように変わったかを統計を基に解説していく。

平成の大合併とは
・地方分権の推進のため、行財政能力の向上、効率性の向上等が目的。合併特例法により期限内(2005年3月末まで)に合併を進める自治体には財政上の支援処置を与える。
・京都府は2005年3月までに協議会を立ち上げて2006年3月末までに合併すれば財政上の支援処置が受けられる。
自治体数の変化
・平成16年では自治体数は44で図書館設置率は54.5%だったが、18年3月には自治体数28となり、設置率は78.6%と大幅にアップした。しかし実態はどうなのでしょうか。

Case1:京丹後市の場合
平成16年4月峰山町、大宮町、弥栄町、網野町、丹後町、久美浜町が合併。図書館があるのは峰山町と網野町のみ(ほかの四町には読書施設がある)
合併後の状況
峰山、網野が中央館となり、読書施設だった図書室が図書館の分館となった。開館時間の延長により職員は増員(非正規)された。
今後の課題
・図書館システムの未統合(平成19年度統合予定)のため、利用者は最大6館分の貸出しカードを持つ。また市内の相互貸借は京都府総合目録(K-Libnet)によりおこなっている。府の連絡協力車は1自治体に1箇所しか配送しない(合併後1年間は旧市町村へ巡回する延長措置あり)ため、資料は一度中央館(峰山)に送って次の日に市内文書便により分館へ配送している。
・図書館独自の配送手段が未整備のため行政の市内文書便を利用している。しかし冊数に制限があり、大量に配送できない。また土日の配送が出来ないという問題がある。
結論:図書館システムの統合と独自の配送手段整備が課題。

Case2:京都市の場合
平成17年4月京北町が京都市へ編入合併。京都市は図書館18館(+2館)京北町は図書館未設置(読書施設のみ)。
合併後の状況
・京都市の移動図書館車が京北合同庁舎まで巡回するようになった。しかし旧京北町の読書施設は京都市の図書館と管理・運営が別のため、相互貸借はメールで希望図書を移動図書館担当へ依頼して週一のメール便で送られている。平成17年度は京北町の図書室の資料費はゼロ(嘱託職員一名の人件費のみ)になった。
結論:旧京北町住民への今後の図書館サービスが課題

Case3:京丹波町
平成17年10月丹波町、瑞穂町、和知町が合併。三町いずれも図書館未設置(読書施設のみ)。
合併後の状況
・図書館は未設置でしかも正職員はいない。更に旧瑞穂町にある4つの図書室は未電算化のままでほかの町の図書室もシステムは未統合となっている。町内での相互貸借はほとんどないようだ。
結論:合併を契機に図書館が新設されることもなく、京丹波町の住民への図書館サービスが不十分なままである。今後の図書館活動に期待。

Case4:南丹市
平成18年1月園部町、八木町、日吉町、美山町の四町が合併。園部町と美山町は図書館設置。ほかの二町は図書館未設置(読書施設のみ)。ただし日吉町は新設の図書館があり、貸出しも多い。
合併後の状況
・図書館システムが未統合(平成18年度統合予定)。利用者は最大4枚の貸出しカードを持つ。市内の相互貸借はK-Libnetによりおこなっている。図書館独自の配送手段が未整備なので、府立の連絡協力車が一年間の暫定で旧町への運行を継続している。
結論:図書館システムの統合と独自の配送手段整備が課題。

Case5:福知山市
平成18年1月三和町、夜久野町、大江町が福知山市に編入合併。福知山市と大江町は図書館設置。三和町と夜久野町は図書館未設置(読書施設のみ)。夜久野町の図書室は平成16年に設置され、設備は床暖房など非常にいい。
合併後の状況
・中央1館に4分館の構成となり、読書施設だった図書室と大江町の図書館が分館となった。
・新市長は新中央図書館、市内配送車の整備を公約としている。そのため新館建設と市内配送車への予算がついたが、システム統合は先送り。分館への予算配分が少ない。
・連絡協力車は現在のところ大江町以外は回ることになっている。

Case6:与謝野町
平成18年3月岩滝町、野田川町、加悦町が合併。岩滝町は図書館設置、ほかの二町は図書館未設置(読書施設のみ)
合併後の状況
・読書施設だった図書室が図書館の分室になった。また合併と同時にシステム統合できたため、3館共通のカードとなり、どこで借りても返してもよく、インターネット予約も始めている。
・図書館間の物流は市内文書便を利用している。

まとめ
・公民館図書室などの読書施設が条例により図書館に格上げになった。(図書館としての条件整備はないまま)
・未設置自治体同士の合併では未設置が解消されなかった。
合併による改善例
・新館の建築計画:福知山市
・移動図書館(BM)の運行拡張:福知山市 BMの廃止:京丹後市立峰山図書館、大宮図書室
・正規職員の増員:福知山市
・非常勤職員の増員:京丹後市、福知山市
合併に際しての図書館の問題
@合併協議会への働きかけに関して
・行政と図書館側の温度差:合併協議会では社会教育の分野の中で図書館について協議されていくが、市町村合併の目的自体が行政の効率化であるため、図書館側の意見は通りにくい。
・情報が入手しづらい:図書館は役所から離れていることが多いので、合併に関する情報が入ってこない。職員が臨時職員しかいない施設ではなおさら。
・合併前に図書館員同士の打ち合わせが困難:距離が離れていて集まれないこともあるが、行政から集まるなと言われたケースも
Aサービスの統一に関して
・システム統合の困難さ:予算が付かない、各図書館で使用しているメーカーが違う。
・運営方針の違い:各館では、これまで力を入れてきたサービスを継続したいという思いがお互いに強い。
・職員の雇用の問題:今まで臨時職員として長く勤めていても合併を機に雇用形態の変更もある。
最後に合併後も粘り強く働きかけていくことが必要である。

質問
Q:京北町は今後どうなるのか。
A:このままではいけないとは思っているだろうがどうなるのかはまだ情報もなく分からない。学校図書館での読書活動が活発であると新聞で読んだが、旧京北町の図書室は、資料費もつかず、サロン化していると聞いている。

Q:公民館図書室などを図書館に格上げした例があるが、図書館としての条件整備がないままということだが、それでも名称を図書館と言ってもよいのか?
A:地方公共団体が条例によって図書館であると名言してあれば図書館として存在する。設置および運営上の望ましい基準等があるが、罰則規定もなく、いろんなレベルの図書館が存在している。

Q:合併した場合の財政について、図書館の予算はどのように決められるのか?
A:新市で図書館全体の予算を決め、それを各分館に配分しているようだ。分館への配分を決めるのも大変なようだ。



Copyright © 京都図書館情報学学習会. All Rights Reserved.

inserted by FC2 system