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学習会記録(第131回)

日時:2005年10月20日(木)
出席者:12名
内容:「製本の基礎−図書修理のために」
発表者:辰巳 裕佳(京都府立図書館)

○京都府立図書館の主催により、年に1度、図書館・読書施設等職員研修が行われている。今年度に実施された上記研修「製本の基礎」に参加し、学んだ技術のなかから基本的なものをいくつか紹介した。
 今回の学習会では特に「かがりとじ」の作業をを参加者と共に行なった。

1 かがりとじ
・折丁(通常1折りは8枚16p)を重ね合わせ、背の部分を糸でとじ合わせる方法。
今回の学習会では、1折りをとじる方法と、複数の折り同士を繋ぎ合わせる方法を実習した。
・ページが外れてしまった本の修理の際には、かがりとじによってまとめた折りの背の部分に糊(大和糊とビニール糊を1:1で混ぜたもの ※以下同じ)を付け、本体と接着する。

2 無線とじ本の修理
 無線とじによる製本は近年多くなっているが、背の部分をボンドで接着しているだけなのでページが抜け落ちやすい。(職員研修の際にも、無線綴じの資料に対する悩みが各市町村から報告されていた)
 こういった資料を修理する方法のひとつとして、以下のような手法がある。
 @一度見返しを外し、本体と表紙を離す。
 A本体を押機(万力のようなもの)で固定し、背に糸のこぎりで1.5cm間隔・深さ3mmの溝をつくる。
 B背に糊を塗り、溝に背幅よりやや長く切った麻糸を埋め込み、補強する。
 C寒冷紗を本体の背に貼る。はみ出た麻糸は切る。
 D見返しを新しく作り、本体と表紙を貼り合わせる。

3 丸背洋装本の基本的な修理法
・要修理本の現物をいくつか例示しながら、修理方法を説明した。
 (ex.背表紙がはずれたもの、見返しが浮いてきているもの)
・個々の資料の傷み具合によって、修理法は1冊ごとに異なってくる。適切な修理を行うためには、本のつくりを十分に理解しておくことが重要である。

*作業工程については以下の参考文献も参照。
〔参考文献〕
・平成17年(京都府立図書館主催)図書館・読書施設等職員研修テキスト(講師:藤原孝氏)
・「防ぐ技術・直す技術−紙資料保存マニュアル」編集ワーキング・グループ編.
『防ぐ技術・直す技術』日本図書館協会,2005
・小原由美子.『図書館員のための図書補修マニュアル』教育史料出版会,2000

Q&A
Q職員研修講師の藤原氏は、他にも講習などを行なっておられるのか?
A恒常的に製本教室を開いているわけではないが、多くの場所で積極的に講師を引き受けておられるようだ。京都府立図書館でも数年前に製本の講師として招いたことがある。藤原氏は大学で司書補の講義も担当しておられ、関西でも製本の技術で有名な方である。

Q材料はどんな店で売っている?
A規文堂では、製本用の道具や材料などを多く扱っている。

Q表紙と背を付ける際に接着するのは見返し部分のみか?見返しだけでは弱いのではないか?
A丸背の本では表紙と背の間に筒状の紙を貼って補強している。角背の場合は背の部分でも直接貼り合わせる。



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