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学習会記録(第120回)

日時:2003年9月16日(木)
出席者:14名
内容:「住民1人当12冊貸出する図書館の実情から」
発表者:小山 雄一(精華町立図書館館長)

1.S町と町立図書館の概要
〔主要な出来事〕町文庫開設(1973) 移動図書館あおぞら号開始(1974) 町立図書館発足(1978) 広域図書館ネットワークを開始(1999) 新町立図書館業務開始(2001)
・町面積25.66ku 世帯数11,266戸 人口33,802人(H16.4.1現在)
・平成16年度予算 図書館費50,828千円(うち資料費11,485千円=人口1人当たり339.8円)
・図書館施設 床面積2,286u 建築面積1,513u 閲覧室は約1,300uでワンフロアのものとしては府内最大級
・移動図書館あおぞら号(愛称バーバパパ 2500冊積載)24ステーションを1回/2週間各50分停車

2.S町立図書館のサービス(資料1「15年度実績を中心に」)
・登録者状況:全登録者数20,887人で、11歳以下の登録者数は3,168人。全体の年齢別構成を見ても登録者は幅広い年齢層に分散している。(*館内にはヤングアダルトを中心とした「ティーンズコーナー」がある) 有効登録者数は13,325人(うち他町民2,722人)であり、利用者の実数は住民の約1/3となる。
・貸出状況:貸出利用者数は延べ104,219人、貸出総点数は407,824点(個人貸出397,533点、団体貸出10,291点)。貸出総数のうち約8万点は他町民の利用による。

3.市町村立図書館の状況(資料2「京都府域と全国」)
・京都府域の図書館は、資料費は全国平均を下まわるが貸出数は全国水準を満たしている(住民の読書意欲のあらわれ?)。S町の資料費は平成12年度実績では開館準備期のため少ないが、現在は約1000万円となっている(3万人以上町村の平均資料費は1654万円)。

4.評価と課題
@カウンター・サービス
・カウンターには端末は3台あり(貸出2台・返却1台)、相談カウンター(専任)が別にある。とにかく忙しいというのが実感。
A広域個人貸出利用
・広域図書館ネットワーク内では、他町民の利用の割合はS町に対するものが最も大きい。(隣接のK町などでは減少している。ビデオ貸出の可否や駐車場の有無の関係か?)他町民への貸出点数は、年間総数の19.5%にのぼる。広域図書館ネットワークでは、自館利用を原則としながら補完的に互いを利用しあうというスタンスが望ましい。ネットワーク内の図書館サービスがほぼ同質でないとうまくその機能が働かない。
B職員体制(資料3「人口3万人以上町村比較表」)
・業務量のバロメーターとなる貸出冊数と予約件数を職員一人あたりで計算すると、S町は対正職員(3人)・対全職員(12.2人)のいずれでも、同規模の公共図書館と比較して高い数字となる。職員数は不足している。

5.雑感
・統計で見ると住民のうち2/3は図書館を利用していない。利用者要求をくみ取るには、アンケート調査を館内だけではなく町レベルで行ない、図書館を利用していない人の意見を聞くことが必要。
・資料収集については、時間がないため体系的に行い難い。貸出要求があるものが優先され、統計資料などが後回しになっているが改善したいと思っている。リクエストについても一定の線引きが必要。
・府県域で資料がある程度そろうようになってほしい。府立図書館への要求としては、市町村では集められない資料を補えるような資料構成、長期的な視点での収集保存を目指してほしいということがある。
・延滞資料が多い。図書館は規律や秩序を持たないといけない。日本の公共図書館では、いい意味の民主主義ではなく利己主義が育っているのではないか。公共財に対するモラルを利用者に伝える必要がある。
・委託やPFIについては、海外の図書館と日本の図書館では事情も違ってくる。日本の公共図書館の未来に関わってくる問題。

Q&A
Q.広域サービスを最初に発案したのはどこか?
A.S町がリーダーシップをとった。その他に広域行政への流れの影響もある。システム管理は行政の管轄下にあるが、ちょうど更新の時期である。業務上では現在は府内総合目録を使うことの方が多い。住民サイドでどれだけ広域検索システムを利用してるか具体的に把握したい。

Q.リクエストを断るときにトラブルをないか?
A.かえって利用者自身もそうでしょうねと納得してくれる場合もある。

Q.精華町民は他町村図書館へどの程度行っているのか?たとえばY町では?相互の利用数を差し引きしないと仕事量は量れないのではないか
A.Y町民のS町立図書館からの貸出冊数は3196冊、S町民のY町立図書館からの貸出冊数は約1400冊である。またY町としては自町民だけでは利用が少ないので他からの利用も意に介しないという面もあるようだ。

Q.正職員数は昔から3人か?
A.昔からその人数でやってきている。人数不足の感があり、増員を望んでいるがなかなか難しい。

Q.広域サービス内であれば予約はどこの町からもできるのか?
A.できる。だが、リクエスト購入はできない。4町の広域個人貸出開始から暫くしての協定で決めている。
協定では他にも、地元の図書館を必ず利用しているのなどの条件が定められたが変化してきた部分もある。協定館の間でも、AV資料の貸し出しの可否などに相違がある。協定で規定した条件の見直しの時期にあるのではないか。外国では広域協定を結ぶ場合に基金を積み立てるなど相当の準備をするところもあるようだ。

Q.他府県からの相互貸借に要する郵送費等の経費は?どこまで要求にこたえるのか?
A.基本的に取寄せを要求するのは府内図書館まで。(報告後確認すると、これまでに大阪府立図書館での所蔵が確認される場合は、本人は出かけるということで納得されている。もし取り寄せ希望があれば郵送費は負担していただくということにしているが実行経験はない。)
発行後1年以内は他館貸し出し不可というところもあるが、特に利用が多い資料は別にして、そういった規制は取り払ったほうがよい。近くの図書館間で、互いに資料費をより有効に使うほうがよい。



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