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学習会記録(第117回)

日時:2004年5月20日(木)
出席者:17名
内 容:「平成15年度図書館地区別研修(近畿地区)受研報告」
発表者:合田 淳(京都府立総合資料館)

前回の補足:規格(JIS・ISO等)について、国立国会図書館関西館の柴田さんから情報提供があった。


平成16年2月3〜6日にかけて大阪で行なわれた近畿地区図書館研修の内容が報告された。

〔基調講演 : 情報化社会における図書館 (大阪市立大学教授 北克一)〕
〇現代社会=情報化社会
 ユビキタス社会の到来:デジタル情報の増大、情報のネットワーク流通
〇図書館情報基盤
・館内OPACからWebOPACへ
 国立国会図書館総合目録、都道府県単位OPAC、館種を越えた地域ネットワークetc.
・レファレンスデータベースの共同構築
・WARP、Dnaviなどの試み
・センシブル・リンキング(適切な接続)
増えつづける流動的なウェブ上の情報に、うまくたどりつくための工夫が必要。
URN(Uniform Resource Name):情報を「名前」で識別、アドレス変更時リンク先修正不要
DOI(Digital Object Identifier):URNの考え方を電子ジャーナルに対応させたもの
                章・論文・図表・映像などのレベルでの付与が可能
CrossRef:複数の出版社の電子ジャーナルを横断するリンキングシステム(DOIを援用)
     出版社150以上、6400タイトル、論文500万件(2002年10月)
     J-STAGEも正式参加
〇図書館ポータルの構築
図書館が提供できる様々な情報やサービスをワンストップで利用できるシステム
(ワンストップサービス:各種のサービス提供にかかる手間を、オンライン化により軽減する)
図書館ポータルと図書館ホームページとの違いは、学内の研究者や学生に対する支援を目的とし、学内限定利用のコンテンツを中心としているということ。
ワンストップ検索により、館内OPAC・電子化資料・電子ジャーナル・各種データベース・サーチエンジンなどを1度に検索できるようにする。
〇情報化プロジェクトについて
「貴重書電子化活動」は費用に見合う効果があるのか疑問。
ネットワーク化・デジタル化はそれ自体が目的ではなく、資料の収集・組織化・提供という図書館機能の働きを助けるための新しい道具である。
〇図書館の役割
図書館は情報と思想の自由な流れを確保・提供する公共的情報基盤・空間
*IFLA2000年エルサレム大会
「デジタル環境における著作権に関する国際図書館連盟の立場」
著作権の過度な保護は情報と知識へのアクセスを不当に制限し、民主主義の伝統をおびやかしたり、新たな創造性の芽がつみとられたりする悪影響が懸念される。また、情報への対価を支払うことができる者だけが恩恵を享受するという危惧が現実のものとなりかねない。
⇒図書館はあらゆる人のために、情報アクセスの確保に関する重要な役割を果たす。
  何がコアコンピタンス(中核的経営資源)であるかの選択
  設置母体・住民への説明責任

〔講義@「今なぜビジネス支援か」(ビジネス支援図書館推進協議会会長 竹内利明)
 講義A・ワークショップ「図書館におけるビジネス支援」(   〃  竹内利明/
              慶応大学教授 糸賀雅児/国立国会図書館 山崎博樹)〕
*前回の全国図書館大会報告と内容が重なる為、略

〔講義B「図書館における高齢者サービスの広がり」
(北陸学院短期大学教授 高島涼子)〕
〇高齢者サービス:高齢者が使いやすい資料(大活字本・Talking Book等)の提供
生涯学習社会の観点から、年金生活者である高齢者が無料でサービスを受けられる図書館は特に重要な場。
〇図書館界の動き(アメリカ)
「高齢者への図書館の責務」The Library's Responsibility to the Aging(1964)
「高齢者サービス・ガイドライン」Library Service to The Aging(1975)
〇図書館サービスの広がり
「当事者主催」高齢者に図書館で働いてもらうことで、当時者としてのニーズを表現する
「ユニバーサル・デザイン」健常者と障害者が共用できる施設・設備

〔講義C「公共図書館の役割」 (大谷女子大学教授 塩見昇)〕
〇図書館は「知る権利」を守る社会的施設
読む能力の育成は知る権利を守ることにつながる
○「子供の読書活動の推進」のような国家的目標において図書館の役割をアピールする。
社会的に図書館の必要性が認められなければ予算も削減されていく。
〇「ユネスコ公共図書館宣言」(1994)、「公立図書館の任務と目標」(1987)、〔12 ways Libraries are good for the country」(1995.12)などの宣言・綱領は、公共図書館の役割を示し、図書館の活用法・公共性をアピールする宣伝文句である。

〔講義D「図書館サービスと著作権・公貸権」(国立国会図書館 前文化庁著作権課 南亮一)〕
〇図書館における貸出し問題
現在の出版不況の一因に、図書館によるベストセラーの大量購入・大量貸出があるという著作者側からの批判がある。
←図書館側からの反論:出版不況若年層の活字離れ、インターネットの普及など様々な要因があるのでは?
〇作家から提示された対応策
・「公共貸与権」の導入(三田誠広) ・「貸出し猶予期間」設定
・1館あたりの購入部数を制限  ・貸出実績に応じた税額控除措置の導入
〇欧米における公貸権制度は、イギリス型、フランス型、ドイツ型、などでそれぞれ実施方法は異なる。
〇日本では著作権法第38条第5項の対象に「書籍等」も加えるという法改正の動きがあった。
公貸権については、現状では文化庁は導入に消極的であり、権利者側・図書館側双方が検討を重ねることが必要とされている。

★Q&A★ 
 *Q&Aでは参加者間で活発な意見交換が行なわれた(Aには発表者以外の発言もあり)
Q.インパクトのあった講義は?
A.塩見先生の講義(C公共図書館の役割)が、学生時代に学んだことを再認識でき、普段の現場業務においても活かしたいと思った。特に、読む能力の育成についてのくだりに感銘をうけた。

Q.ビジネス支援における企業図書館との関わりについての言及はなかったか?
A.そういった話題がでたことは覚えていない。

Q.URNについてもう少し詳しくききたい。URLがなくなってもよいということか?
A.ネット上において情報を識別する方法が、URL以外にも開発されているということである。

Q.貴重書電子化活動についての話題は、話の流れとして唐突な感を受けた。また貴重書の電子化は保存のためだと思うが?
A.いろいろな話題がでてきたのをまとめたので唐突に見えたかもしれない。貴重書電子化自体が駄目というわけではなく、電子化後の運用についてまでよく考えて計画をすることが大事だということを言っておられた。

Q.図書館貸し出し問題についての作家からの提案では、「貸し出し実績に応じた税額控除措置の導入」という対応策がもっとも図書館へのダメージが少ないかと思うが、これは誰の案か?
A.誰の案かについては言及されなかったように思う。利用に応じたコストという案であるのが現場としてはよいなと思う。ただし実績をどうやって量るかということや、意図的な貸し出し操作に対する懸念などもあるのでは。

Q.文部省が貸与権を認めるという誤報があったが、本当に誤報か。
A.地方紙に5紙ほどでた(京都新聞も)が誤報であった。誤報である事を知らず、誤解している人も一般にはいるかもしれない。



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